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絶海の孤島、襲い来る異形。 “神隠し”から始まるパニックホラーアクション!!

かみながしじま ~輪廻の巫女~(1)
(漫画:蒼月 たかし 原作:かみながしじま製作委員会)
2023.10.25
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「神隠し」――。こつ然と人が消えてしまう、そんな現象を表すこのフレーズには、恐ろしさと同時に、どこかミステリアスで不思議な引力があります。『かみながしじま ~輪廻の巫女~』は、そんな「神隠し」によって、“人ならざる者”が跋扈(ばっこ)する世界へ飛ばされてしまった主人公たちが、サバイブしていく様を描いた作品です。

本作を引っ張っていくのは、ふたりの女子高生。

夜の学校を舞台に物語は始まります。コンビニに行きたい、という萌の提案に「コンビニに行くのは大変」「見つかったらどうなるか」と答える先生や、ボロボロに描かれた校舎の様子から、すでにただならぬ雰囲気が……。

話し合いの結果、車でコンビニへと急ぐ3人。そんな彼女たちの前に現れたのは、人間のようで人間ではない化け物たち。次々と出現する「それ」(この時点ではまだゾンビやウォーカーといった具体的名称はありません)に対し、みこはアサルトライフル、萌はショットガンで応戦。

ド派手で物々しいオープニングから一転、物語は2週間前、事件の発端となる日にさかのぼります。

人口千人未満の小さな島で神社を営む天音みこ一家は、その日、いつもと同じ日常を送っていました。ただひとつ、違いがあるとするならば、父のこの発言。

いまひとつ父の真意が掴めないまま、運命の一日が始まります。高校最後の文化祭の準備を終え、学校を後にするみこ。


こう見えて彼女は、剣道強豪校の主将です。父の言いつけに従い、本土への移動のため早めに帰宅しますが、何やら不穏な気配が。

本土へ移動すべく、父とみこ、そして弟・拓(たく)の3人は車で港へと急ぎます。朝からいつもと違っていた父に、みこが「隠し事でもあるの?」と問いますが、明らかに父の様子がヘン。



不気味な表情を浮かべる父、のような何か。次の瞬間、車は木に衝突。みこはしばらく気を失ってしまいます。目が覚めると、車内には父も、拓もいなくなっていました。車外へ出ると、そこに広がっていたのはボロボロの建物や、人気もなく荒れ果てた景色。

スマホも圏外。誰もいないのか……とあたりを探し回っていると、ついに第一村人発見! しかし残念ながらそれは村人ではなく“人ならざる者”でした。慌てて車内へと逃げ込みますが、しつこい「それ」はみこをロックオン。




みこ、絶体絶命の大ピンチ……そのとき!





ヒロインが命のあぶない! そんな展開になるとこれまでは、ヒーローや恋人・友人・家族が命の危険を顧みず助けに来るものですが、このシーンでは自らの力で危機を脱出します。剣道強豪校主将の本領発揮。しっかりと物語序盤での竹刀の伏線をさらりと回収。令和のヒロインは強い!

とはいえ、まだまだ10代。不安でないはずがありません。知った顔がいないどころか、化け物に襲われるという絶望的状況のなかで、村の駐在さん登場。みこもホッと一息。

さらに、駐在さんと一緒に逃げ込んだ家には、クラスメイトの萌もいました。



冒頭でのふたりのバディぶりと比べると、ここではみこが「楠美さん?」と苗字で呼んでいることから、この時点ではまだそこまで親しくなかったことがうかがえます。2週間のサバイバル生活でシスターフッド感が醸成されている様子。

さて、みこを安心させてくれた駐在のおじさんですが、隠れ家が化物たちに囲まれてしまった状況で、自ら堂々とフラグを立てます。

そして2ページ先でこうなります。

さよなら、おじさん――!

おじさんが化け物に襲われている今こそチャンス! 萌に「早く逃げよう!」と促すみこですが、萌は力強くこう言い放ちます。



おじさんの上半身は化け物に食われ、残された下半身に装備されていた武器を漁る萌。さらに彼女は、上半身だけでは飽き足らず、みこたちを襲おうとする化け物たちに向かって、おじさんの下半身を投げつけます。



令和のヒロインは、たくましいのです。

やがて、週刊誌記者だという網野光なる人物が現れ、本作で初めて“人ならざる者”に名前が与えられました。その名も「人形(ヒトガタ)」。

網野は、かつて起こった大規模失踪事件を追うなかで、ひとつの仮説にたどり着きます。それは、「人形が跋扈する異世界に自分たちも神隠しにあった」というもの。

車内から消えてしまった(豹変した)父、そして弟の拓はどこへ行ってしまったのか。果たして今みこたちがいる場所、いや、世界はどこなのか。元の世界へと戻る術はあるのか。

みこと萌のバディモノな要素も垣間見られるサバイバルホラーアクション。息つく暇もない、ノンストップな怒涛の展開にドキドキさせられる作品です!

  • 電子あり
『かみながしじま ~輪廻の巫女~(1)』書影
漫画:蒼月 たかし 原作:かみながしじま製作委員会

生き残れ、少女たち――!! 女子高校生・天音みこは地元でも有名な美人巫女。ある日、不審な交通事故に遭い目を覚ますと、そこは異形の怪物が徘徊する世界に一変していた……!! 襲い来る怪物たちの恐怖!! しかし世界の謎を解き明かすため、みこは絶望の世界に歩み出す。生存する他の少女たちと協力し、絶海の孤島からの脱出を目指すパニックホラーアクション!!

日本海に浮かぶ小さな島で、巫女として暮らす女子高生・天音みこ。文化祭の前日、本土に向かう途中で不審な自動車事故に遭い、目を覚ますと車内にいた筈の父と弟の姿は消えていた。そこでみこが出くわしたのは、人の形をした怪物たち! 逃げ込んだ先で出会った美少女・楠美萌と共に、みこは避難先の学校へと向かうが……。怪物たちが襲い来る世界で、少女たちは無事生き延びることができるのか――!?

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レビュアー

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ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。
twitter:@hoshino2009

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