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謎の木箱に引きこもる箱入令嬢と王子様のじれじれ恋愛ファンタジー

引きこもり箱入令嬢の結婚(1)
(漫画:原口 真成 原作:北乃 ゆうひ キャラクター原案:間明田)
2022.03.25
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ヒロインは引きこもり。どこに? 箱(物理)に!

「箱入り娘」とは「お嬢様の一類型で、極力他人に接触させずに(家の中などで)育てられた娘。または深窓の令嬢」のこと。大事に育てられ、世間ずれしていないお嬢様のことですね。一方、本作『引きこもり箱入令嬢の結婚』のヒロインは「箱(物理)の中の部屋」に引きこもる、いわば箱入ガチ勢。そんな箱入令嬢と、好奇心旺盛な王子様が出会ったら……?

17歳を迎える貴族たちが集まる成人会。華やかなパーティ会場に置かれた、場と不釣り合いな謎の木箱。誰もが見て見ぬフリ状態のその箱に、王国の第2王子・サイフォンは興味津々。揺さぶってみると、箱の中から人の声が!

人が入っているなんて想定外……! 聞けば、箱の中の人も新成人。対人恐怖症のため、箱の姿でこのパーティに出席していると言います。相手が箱(!)でも、すぐに非礼を詫びることのできるサイフォン王子が素敵です。紳士だなあ。

気を取り直して、中の人に食事を勧めるサイフォン王子。しかし、中の人は箱から出てきません。



箱の上に料理の皿を置くだけで、中の人は食事ができるようなのです。さらに、パーティに仕掛けられたある罠を箱の中にいながら見抜いてみせます。どうなってんだ、この箱……! 好奇心旺盛なサイフォン王子は、もう社交そっちのけで箱に夢中。



中の人は、ドリップス宰相の娘・モカ。彼女は「これまで一度も公の場に出てこない箱入り娘」として噂の存在でした。そして、モカは箱の中から、外で起きていることが見られるようです。自分の話している相手がサイフォン王子であることも。

実は、この世界に生きるものはそれぞれに不思議な力を持っていて、モカにとってはこの「箱」そのものが魔法。
モカは、あれこれ知りたがる王子を、箱の中に招きます。



箱の中は、その外観からは想像できない広さで快適そう!モカもきちんとドレスを着ています。ただし首から上は……。



よりによって「馬」! 他にもっとあるでしょ、と私だけじゃなくサイフォン王子も思ったはず。でも、本当に恥ずかしそうな様子のモカに「気にするな」と言うサイフォン王子がカッコいい!! イケてる顔面に乗じて好奇心を爆発させ、グイグイいくのかな……と思いきや、距離感を大事にしてくれる。対人恐怖症だというモカに安易に「顔を見せろ」なんて言わない。これは好きになるわ……。

「ありがとう、楽しかった」
王子が帰った後、何度もその言葉を反芻してキュンキュンするモカ。モカの箱は、起きた出来事をあとから再生する機能をはじめ、わりと何でもできるのです。サイフォン王子が知ったら、もっと長居したかもしれません。それにしても、箱→馬からの恋する乙女の顔がかわいい! 早くまた、王子に会えるといいね!

箱入令嬢、「箱」を獲得する

モカは子どもの頃から大人びた賢い子でした。しかし、他人はちょっと苦手。そんな彼女に両親は、1冊の本を与えます。



箱の中の世界への憧れを募らせる彼女に転機が訪れます。7歳を迎えた子供が魔法を授かる「魔性式」です。魔性式にしぶしぶ出席したモカは、ある理由から平民と勘違いされ、嫌がらせを受けてしまいます。



知らない人から受けるひどい仕打ち。モカの人嫌いが加速します。そのせいか、彼女が目覚めさせた魔法の特性は



なんと、箱!
「箱」って……。聞いたこともない属性で頭がいっぱいのモカに、またしてもあの子が絡んできます。



「自分の授かった魔法の属性を気軽に人に話してはいけない」。その教えを守り口を閉ざすモカを、彼女はさらに攻撃します。
そこに助けに来てくれたのは、サイフォン王子!




モカが「箱」の属性を得た転機の日。この日はサイフォン王子との最初の出会いの日でもあるのでした。

最初のページに戻りたくなる!



王子と箱のボーイミーツガール。それだけでも十分興味をそそります。でも、こんなに好奇心の強い陽キャのサイフォン王子と、人嫌いで引っ込み思案のモカが恋に落ちたりするんだろうか。少し不安にもなります。
しかし読み進めればわかります。モカはただ受け身な引きこもりじゃないのです……! 1巻ラストまで読んだ私は、思わず最初のページに戻って読み直し「そうか、確かに……」とうなりました。この静かな急展開は、是非コミックスで!

  • 電子あり
『引きこもり箱入令嬢の結婚(1)』書影
漫画:原口 真成 原作:北乃 ゆうひ キャラクター原案:間明田

パーティ会場の片隅に置かれた、場と不釣り合いな謎の木箱。
会場の誰もが疑問に思いながらも見ないフリ状態のこの箱に王国の第2王子・サイフォン王子は興味津々。
好奇心たっぷりに箱へと近づいた王子がその表面を叩いた時、 箱の中から可憐な声が聞こえ……?
「あ、あの……なにかご用でしょうか?」
コミュ障の(物理的)箱入令嬢と王子様の、衝撃的恋愛ファンタジー、開幕!

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019

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