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フェルメールの食卓──17世紀オランダ料理のレシピ&名画解説
■キュレーター林綾野さんが語る! フェルメールの素顔とその芸術
「フェルメールは何を食べていたのかな?」「フェルメールはどんな性格だったのかな?」。そんな素朴な疑問から、画家の素顔に迫る研究を続けている方がいます。『フェルメールの食卓 暮らしとレシピ』や『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール 絵本でよむ画家のおはなし』などの著書のあるキュレターの林綾野さんです。今回は、林さん主宰の「フェルメール 画家の魅力と食を楽しむ夕べ」にお邪魔して、フェルメールの魅力についてお伺いしてきました。
食べ物を手づかみ!? フェルメールの賑やかな食卓
林さんは長年、「画家と食」をメインテーマとして研究を続けています。その理由を「それまで絵画に興味のなかった方も、〈食〉が絡むと、美術の世界に一歩入り込んできてくださる確率がぐっと上がるんです」と話す林さん。もちろん、林さんご自身もちょっと「食いしん坊」であることも理由のひとつのようです。そうは言っても、フェルメールの場合、作品の中には、パンや牛乳、ワインや果物が描かれているのみ。そこで林さんは、17世紀オランダで出版された料理指南書などを元にしながらレシピを調べたり、当時の生活習慣も出来る限りリサーチしました。すると、浮かんできたのは、黄金時代らしく異国のエッセンスたっぷりのスパイシーな食事を、当時の習慣にならって手づかみで口にする、フェルメールの姿。「フェルメールの絵には静謐な空間が広がりますが、14人もの子に恵まれた彼の実生活は、静謐とはかけ離れていたかもしれません。食卓もきっと賑やかだったはずですよね」。林さんのお話に、想像が広がります。
▲「フェルメール 画家の魅力と食を楽しむ夕べ」で供されたメニューのひとつ、「ひき肉のロースト、レモンソース」。『フェルメールの食卓』では、17世紀のオランダで出版された料理指南書『賢い料理人』に忠実に、ハート形のレシピが紹介されています。
こだわりと遊び心の人、フェルメール
「生身の人間」としてのフェルメールに触れたいという思いから、林さんはフェルメールの故郷デルフトやデン・ハーグの古文書館を訪ね、実際にフェルメールの古文書を目にしてきたことがあります。その中にあったのが、フェルメール直筆のサイン。「このサインを見たとき、フェルメールの人となりを感じられたように思いました」林さんがこう話すフェルメールの筆跡は、安定した筆圧で、しっかりと美しいもの。サインの後ろには竜巻き形のカリグラフィーも添えられています。こうしたことから、林さんはフェルメールを「自分のこだわりをしっかりと持ち、遊び心もある人だったのかもしれない」と想像したのです。丹念なリサーチと実感に基づく林さんのお話には説得力があります。
フェルメールは「宇宙人」じゃない!
「今から350年以上も前に生まれたオランダの画家フェルメールは、日本人にとってほとんど〈宇宙人〉。どこの誰、という実感がわかない。私自身にとってもそんな存在でした」。フェルメールのリサーチに取り組み始めた当初の思いを、林さんはこう振り返ります。それだからこそ、林さんはフェルメールを、「生きて、食べて、飲んで、笑って、泣いて、そして死んでいった私たちと同じ生身の人間」として捉え直したいと思ったのだそうです。「なぜなら、同じひとりの人間が作ったものだ、という目線で見てみると、フェルメールの努力みたいなものも感じられ、その絵のすごさを何倍も実感できるんです」。まずは、「宇宙人」のような遠い存在ではなく、私たちと同じ人間としての画家の姿に思いを馳せることからはじめてみると、絵画鑑賞もより一層、自分のものとして体験できるに違いありません。
▲「自画像がないこともフェルメールを遠い存在にしている要因かもしれません」と話す林さん
「フェルメール 画家の魅力と食を楽しむ夕べ」
文京区関口の「野菜倶楽部 oto no ha Café(オトノハカフェ)」で開催された「フェルメール 画家の魅力と食を楽しむ夕べ」。林さんの講演会に続いて、フェルメールが食べたかもしれないハンバーグやマスタードスープ、パンプディングなど、『フェルメールの食卓』で紹介されているスペシャルメニューの食事会も大好評でした!
東京、上野の森美術館で開催中の「フェルメール展」。全フェルメール作品35点のうち、9点もが展示されるとあって、大きな話題を呼んでいます。すでに展覧会をご覧になった方も、これからという方も、ぜひ『フェルメールの食卓 暮らしとレシピ』、そして『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール 絵本でよむ画家のおはなし』を手にとってみてください。きっと、フェルメールをより身近な存在として感じられるはずです。
『フェルメールの食卓 暮らしとレシピ』
著者:林 綾野
フェルメールの名画の解説に加え、当時のオランダの食や暮らしの情報が満載の1冊。フェルメールが食べたかもしれない17世紀オランダのレシピや、昔ながらの料理法を受け継ぐ現代オランダ料理のレシピ合計16点も掲載。
『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール 絵本でよむ画家のおはなし』
作:林 綾野 絵:たんふるたん
古文書に残された史実をもとに、フェルメールの暮らした家、街、家族への思いを探り、人生をたどる物語絵本。全作品35点を収録。
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大人も子供もビールを飲んでいた!?食から読み解くフェルメールの魅力
キュレーター、アートキッチン代表。 美術館での展覧会企画、美術書の企画、執筆を手がける。新しい美術作品との出会いを提案するために画家の芸術性と合わせてその人柄や生活環境、食への趣向などを研究。著書に『フェルメールの食卓』 『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール』(講談社)などがある。
•『フェルメールの食卓 暮らしとレシピ』(講談社)
•『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール 絵本でよむ画家のおはなし』(講談社)
フェルメール展【大阪会場】
会期/2019年2月16日(土)~5月12日(日)
会場/大阪市立美術館
https://www.vermeer.jp/
『フェルメールの食卓』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。
画家も手づかみで食べていた!? 「17世紀黄金のオランダ」を訪ねてフェルメール所蔵 全美術館紹介
<17世紀のレシピ5品>
サラダ/ホワイトアスパラ/牡蠣のシチュー/ひき肉のローストレモンソース添え/パンプディング
<現代オランダのレシピ11品>
ヘーリングの燻製プレート/マスタードスープ/エルデンスープ/野菜と肉のジャガイモマッシュ/豚肉のソテー オランダ風/ほうれん草とゆで卵 ジャガイモ添え/チコリのグラタン/ダッチシチュー/セモリナプディングほか
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