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伝説の飲み屋26店に、泣ける簡単つまみ教えてもらいました!【ダンツマ手帖】
(編:日刊ゲンダイ)
飲み屋やバーに行って、おつまみのメニューを眺めながら「あ! ここは! また来る!」と思うことは時々ある。今日ぜんぶは注文できないから、次は絶対これを頼むぞと飲む前から先の予定を考えたりする。「おつまみのセンスがいいんだよ」と言われると、なにはともあれついて行きたくなる。
本書『ダンツマ手帖』は、そんな「また来たい」名店の、名物おつまみの作り方を惜しみなく披露してくれる。
「ダンツマ」とは「男性のツマミ」の略で、男性がちょっと包丁を握って、ちゃちゃっと作れるツマミを指す造語だ。でも、ただ簡単なだけではない。こういうおつまみのことだ。
ふらりと入った居酒屋で、一味違うツマミに出合うとうれしくなる。何も高級な食材を使っているわけではない。(中略)それがちょっとした工夫を施され、しみじみとうまい。酒がクイクイと進む。至福の時間である。そんな幸運に巡りあえたとき、ついつい聞きたくなるものだ。
「大将! これ、どうやって作るの?」
こんな会話が隣で始まったら確実に耳ダンボだ。ふらりと入ったお店で「大将!」と呼びかけるコミュニケーションスキルは、私にはない。
そんな最高なダンツマたちの「どうやって作るの?」が52品も続く。それぞれのダンツマと相性のいいお酒もちゃんと記載されているので心して読んでほしい。
実際に数点作ってみた。まだ残暑が厳しいこともあり、お酒はビールとスパークリングワインをチョイス。スーパーでの買い物すらウキウキしてしまう。ああ家飲みの醍醐味。
1品め:油って必要
すごく美味しいが、油っこくハイカロリーな食べものを評する時に「これは悪い! 悪いな~」と言いたくなることがある。美味しい油は心も体も幸せにしてくれる。本書のトップバッターも潔いくらい「油!」な1品だ。
「ちゃちゃっと作れるツマミ」の手本のようなレシピだ。まずはこれを用意してカンパイしてから次に取り掛かることに。
即刻できる。(ちょっときゅうりが長かったな)食べてみるとラー油のこってり感とポン酢の酸味がちょうどよく、鼻にぬける黒胡椒の香りで余計お酒が欲しくなる。このレシピを教えてくれる「ロックフィッシュ」の間口さんはこうおっしゃる。
つまみの原点の一つは油っぽさではないかと言う。酒で舌を洗いたくなる味覚が酒を誘う。
よし、今夜は油の量にひるまず、悪く行くぞ。
2品め:「今まで食べた厚揚げの中で一番おいしい」
次は「厚揚げのカリカリ焼きネギじゃこソース」に取り掛かる。こちらと相性が良いと記されているのはスパークリングワイン。たまに飲みたくなるのよね。
レシピはこちら。
あー絶対好き。実際作ってわかったのだが、「全面においしそうな焼き色」をつけるのにはなかなか時間がかかる。これについて本レシピの作者「ローゼンタール」の島田さんは最高にかっこいいアドバイスをくれる。
私にとって、料理を作ること自体が酒のつまみのようなもの。作るのも楽しみの一つなので、手早く作る必然性を感じません。せっかく自分で作るのだから、ふしだらに飲みながら、作る過程から楽しんで作ればよいのでは。
そうします! ということで、台所でビール片手に厚揚げを焼き、ネギを刻み、その次のレシピの下準備をした。おつまみ作りってこんなに楽しいのか!
晴れて出来上がったのがこちら。
すべての面が金色に焼けたカリカリの厚揚げとカリカリのじゃことネギ……美しい。外はカリカリで中はもっちりした厚揚げのあとに、キリッと冷えたスパークリングワインのシュワシュワ感。一口食べて、友人から「今まで食べた厚揚げの中で一番おいしい」という感想をもらった。誰かに料理を作って一番幸せな瞬間は「おいしい」と言ってもらえることだが、厚揚げ部門すら制してしまったのだ。島田さんありがとう!
3品め:ソースをフライングで食べられる
3品目は肉か魚を……と考えてスーパーを歩いていたらちょうどサンマが安かったので「さんまの梅じそ焼き」に挑戦した。
サンマを「三枚におろす」の成功率が私はちょっと微妙なので、万全を期したい今回は先にお店で捌(さば)いてもらった。3品目ともなると、お酒がそこそこ入った状態だったので、結果としてこれは最善手だったと思う。
梅のソースは「厚揚げのカリカリ焼きネギじゃこソース」の厚揚げを焼いている間に準備したのだが、ここで思わぬアクシデントが。ソースだけ小鉢に盛ってテーブルに置いていたら「この梅おいしいね!」という感想が聞こえてきたのだ。慌(あわ)てて奪還した。しかしソースの段階で美味しいんだもんなあ、いいわ。
そして出来上がったのがこちら。
少しクリスピーな食感のサンマと梅の酸味が合う。日本酒や焼酎が合いますよと書かれてあったがやっぱりビールを飲んでしまった。
締め:オリーブオイルとごま油で食べるそうめん
3品食べて(かなり飲んで)もうだいぶお腹がいっぱいだったのだが、最後に締めが欲しい。そこでこちらを作ることに。
そうめんは茹で時間が2分。ささみも1本ならすぐに小鍋で茹で上がる。間髪入れず作れる締めの良おつまみだ。
こちらのレシピは「かこい亭」の栫山さんによるもの。
もともとそうめんには塩と油が練り込んであるから、酒に合わないわけがないんです。
栫山さんの説明をウンチクとして語りながらペロリと完食。
ということで、1品ずつ作って出しながらゆっくりお酒を楽しむことができた。「簡単かつ美味しい」のヒントで溢れ、お酒片手に作れる。しかも「いつもと違う」おつまみたちなのだ。
どのダンツマを作ろうかしらと読みながら「このお店いつか行こう……」と予定を考えるのも楽しい。私が時々行くお店もあり、見つけるとニヤッとなった。行って、メニューとにらめっこがしたい。こうやってグルグルとお酒とツマミと美味しい店が回り続けるのかあ。やめられないな。
- 電子あり
日刊ゲンダイに連載中の「伝説の達人に聞く 男が泣いて喜ぶツマミ」の書籍化。酒のみに愛され、簡単で、でもクセになる名物つまみをとその作り方を紹介。
星付きで接待に使うような店ではなく、自分の懐からお金をだし、気の置けない仲間と飲める、長く愛される店が作り出してきた「つまみ」の本。
素人には真似のできない料理ではなく、客あしらいをしながら、酒を出しながら、手際よくつくる、その店ならではの「つまみ」集。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。
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