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【人間関係のアラート】自分が思う長所が、客観的にはネガに変わるとき
1.「楽天的でおだやか」「協調性がある」
2.「謙虚で慎み深い」「気配りができる」
3.「責任感が強い」「几帳面」
4.「忍耐力がある」「着実」
どれも長所に思える要素です。けれどこれが人間関係に齟齬(そご)をもたらす要因にもなるのです。実はこれら8つの要素は次のような4つの問題タイプとなることがあるのです。
一見、長所に思えることも、1歩ずれると人間関係に大きな影を落としかねません。それはどのようにしてでしょうか……。
1.「いい人を演じてしまう」タイプ:批判されることを避け他人の意見の自分を合わせようとする⇒最初のうちは、人から信頼される⇒人間関係において矛盾した態度をとってしまう⇒他人からの信頼を失い、批判にさらされる。
2.「決められない」タイプ:自分から意見を言わず、他人の決定を尊重する⇒意見の対立もないので、他者と有効な関係をつくることができる⇒決断しないことに不満を覚える人が出てくる⇒献身がまわりの人には押しつけに感じられ、結果として疎んじられる。
3.「がんばりすぎる」タイプ:周囲からの信頼を失わないために、自分の限界を考えずに努力する⇒ミスをするようになる。あるいは体調を崩す⇒「ほら、見たことか」と陰口をたたかれる。
4.「隠れる」タイプ:自分の仕事は、人並みに以上にきちんとこなす⇒まわりの人との人間関係を構築しようという努力はするが、自己アピールはほとんどしない⇒まわりから「積極性がない」「社交的ではない」などと言われる⇒ますます自己アピールがなくなる⇒存在感がなくなり、孤立する。
これらの4つのタイプには2つの共通点があることに気づかされます。
1.かつては、それぞれのやり方で、それなりに人間関係がうまくいっていた時期がある。
2.すべて、他人の視点から自分を判断している。それぞれ「ビクビク感」「ドウシヨウ感」「ネバナラナイ感」「アキラメ感」が背景にある。
なぜ長所とも思えることが人間関係のつまずきのもとになるのでしょうか。それは「考え方や行動がパターン化」された結果から生じるのです。パターン化は「人間関係がうまくいっていた」という体験から生まれてきます。この体験から「これまでうまくいってきたのだから、これからもうまくいくだろう」という考えにとらわれてしまうのです。
問題は、身についたパターンが必ずしもうまくいかないときです。
──だれでも最初は戸惑いを覚えます。なぜ自分の対応がうまくいかなかったのか理解できないからです。そのため、その後も何度も同じパターンを繰り返し、同じ失敗を招いてしまいます。このように、過去に失敗した行為を繰り返すことを「反復強迫」といいます。──
なぜうまくいかないのか?と原因を捜しても思い当たらないとき、こう考えてしまいます……。
──「これはなにかの間違いだろう」と結論づけます。その結果、「今度はきっとうまくいくだろう」という思いで、同じパターンを続け、同じ失敗を繰り返すことになります。──
マイナスの連鎖です。かつてはうまくいっていた(と思っていた)パターンが裏返ってしまったのです。こうなると「またダメなんじゃないか」というあせり、「どうしよう」「でもまたダメなんじゃないか……」というスパイラルに陥ってしまいます。著者が「自動思考」と呼んでいる心理プロセスです。
自動思考という心の動きには「先行きを悲観」「自己否定」「自責の念」「あきらめ」「どうせダメだし」「完璧主義」「否定的結論の先取り」「恐怖の先取り」「思考停止」「被害者的思考」「後悔」などがあります。どれも「ポジティブな感情を否定するような方向」を生み出します。
この自動思考を変えていく方法は5段階に渡ってこの本で詳述されています。ぜひ読んでください。
さらに、自分が陥っている「パターン」を変えるために重要なことがあげられています。それは自分の持っている「感情」に気づくことです。
そしてこの隠れた感情に気づかされる大きなきっかけが「違和感」というものです。
──違和感も感情ですから、必ず身体の反応を伴います。つまり、身体反応に注意を向ければ、違和感をつかまえることができます。(略)身体の反応に注意をむけることで、無意識の中に隠れている感情を見つけ出すことができるのです。──
たとえばつぎのようにすればいいそうです。
まず、「しっくりいかない」「ちょっとひっかかる」「なにもやもやする」といった違和感のサインに気づいたら「呼吸を落ち着け」て「マインドフルネス」の状態を作りましょう。そうすれば自分の身体の状態に気づくことができます。
これだけにとどまらず「違和感」から「感情を知るためのエクササイズ」が、実に分かりやすく説明されています。なにより自動思考に陥って抑圧してしまった感情に気づくことが重要なのです。
「自分自身に対するネガティブな信念(思い込み)」を変え、「歪んでない自分」をつかむこと。そして、それを生かすことでネガティブな自分を回復することができます。迷いや矛盾のない自分があらわれてきます。そしてそれが人間関係をプラスにする出発点になります。
──自分の感覚・感情・考え・行動に何も矛盾のない状態を「自己一致」と言います。空気に流されず、自分の意思を尊重して考え行動できる人を「自己一致している」と言います。自己一致した人間関係を持てたとき、その人は、自分の行きすぎた人間関係のパターンから抜け出しているのです。──
生きづらさ、悩みに苦しめらている人には必読です。きっと光が見いだせます。人間関係の悩みについてこれだけ分かりやすく、またじっくりと書かれたものはそうありません。ぜひ読んでください。
- 電子あり
著者の向後氏は「はじめに」で書いています。
「私は、都内のカウンセリングオフィスでカウンセリングをしていますが、ここ数年、人間関係の悩みでいらっしゃる方が増えています。彼らの多くは、自分では普通にふるまっていると思っているのに、職場の上司や同僚との関係が、なんとなくどうもうまくいかないと感じています。そのために精神的に落ち込んでしまったり、不安になったりします」
このようにカウンセラーに相談するほどでなくても、「人間関係がなんとなくどうもうまくいかない」と感じている人は、多いのではないでしょうか。
本書は、サラリーマン経験を経てカウンセラーになった著者が、ほんとうの自分の感情や自分らしさを見つけることで、新しい人間関係をつくっていく方法を、やさしく、わかりやすく語ります。
人間関係のなかで大きなダメージとなるモラルハラスメントについても、即使える対処法をアドバイスします。
レビュアー
編集者とデザイナーによる書籍レビュー・ユニット。日々喫茶店で珈琲啜りながら、読んだ本の話をしています。政治経済・社会科学から芸能・サブカルチャー、そして勿論小説・マンガまで『何でも見てやろう』(小田実)ならぬ「何でも読んでやろう」の二人です。
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