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遺産相続、繰り上げ返済、持ち家か賃貸か?……あなたの身にも起こるお金の大問題を徹底解説!

2024.08.01
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切れ者FPと金難体質の会社員、二人のドルヲタとともにお金について学ぶ一冊

2024年からスタートした新NISAや、同年上半期の稀に見る株高を背景に、今の日本は10数年に1度レベルの投資ブームが訪れていると言える。このタイミングで出た「お金の話が漫画でわかる」この書籍、かなり「投資」や「資産運用」に重きを置いたストーリーになっているのでは、と想像していたが、少し毛色が違っていた。言うなれば、投資以上に「より日常に密着した、身近なお金の悩み」を取り上げた一冊と言える。

本作の漫画パートにおける主人公は、お菓子メーカー勤務の会社員であり「重度の金難体質」だという金飛常雄(38歳)。彼が税務署からの通知を受けて、相続税に関する相談のためにとあるFP事務所を訪れたところからスタートする。

相談を受けるFP事務所の社長は現代真音子(26歳)、通称「マネ子さん」。税理士の資格も持つ、一見、クールなメガネっ娘。その風貌は、まさに切れ者のキャリアウーマンだ。
相談者の金飛もはじめは冷徹にすら見える彼女の態度に気圧されるが、あるきっかけで二人が揃って同じ地下アイドルを推していることが発覚。そこから彼女の態度は急変し、“同担ヲタの古参で大先輩”である金飛と一気に打ち解ける。以降、お金に関する相談があれば、金飛は彼女を頼りにするようになる。




金飛は自身、および周囲の人たちのお金にまつわるさまざまな相談事を、マネ子さんのもとに持ち込んでいく。マネ子さんはその過程で金飛の心優しい人間性に触れ、少しずつ惹かれていく……というサブエピソードもありながら、もちろんメインは各話で展開される「お金に関する相談事」だ。

本作のエピソードは、WEB媒体「現代ビジネス」で配信されている複数のお金に関する記事をもとに漫画に描き起こされたものだ。全6話構成で、各エピソードの後には人気のFP(ファイナンシャル・プランナー)、風呂内亜矢氏による解説インタビューも掲載されている。

“漠然とした不安”は具体化することで初めて解決への糸口が見えてくる

扱われているテーマは、第1話が「相続税」。相続税の対象となる人間(基礎控除額を超えている人)の条件をわかりやすく解説し、実際にその対象者が全体の1割にも満たないという事実も描かれている。

第2話は「別荘としての不動産購入」。滞りなく相続税の申告を終えた金飛が、最近知り合った不動産屋に別荘の購入を進められたことをマネ子さんに相談。マネ子さんは現在の別荘を取り巻く現状を説明し、維持費や税負担、管理費などの"落とし穴"の存在を伝える。

第3話は「賃貸と持ち家、どちらがおすすめか」。金飛の後輩であり、11人の兄弟姉妹を抱えるOL、節屋空香と金飛との雑談の中で出てきたこのテーマに、マネ子さんが答えている。結論としては「各々のライフプランによって異なる」というものだが、住むエリアや物件の諸条件、転勤の有無、老後のリスクなど、個々でどのような要件をもとに考えるべきなのかを教えてくれる。

第4話は「副業と所得税や住民税」のお話。オリジナルキャラをモチーフにした小物をメルカリで販売している節屋さんのために、金飛がその副収入に対する税制についてマネ子さんに電話で相談。記事ページでは各々のライフプランにおける貯蓄に対する考え方が語られている。

第5話のテーマは「教育費」。節屋さんの妹・陸香はアイドルを目指し、高額な学費がかかる私立高校への進学を希望していた。しかし11人兄弟という事情もあり、その額費をねん出するのは難しいという話を聞き、金飛はマネ子さんに相談。記事ページでは「情報で家計をカバーする」という考え方のもと、子育てに関する自治体の補助金の話などが語られていた。

最後の第6話は「住宅ローンの繰り上げ返済がライフプランを破綻させる」という話。マイホームローンを頑張って繰り上げ返済している金飛の同僚、原井杉太が、今後のライフプランにおける資金繰りについてマネ子さんに相談。マネ子さんより衝撃の事実を突きつけられる。

もちろん各話のエピソードに対する解決策は対症療法的な部分もあり、ある程度の普遍性はありつつも万能なものではない。しかしこの手の本を読むことによるもっとも大切な効能は、“漠然とした不安”に形と名前を与え、具体化してくれることだと思う。

多くの人にとって、お金に関する悩みのほとんどは“漠然とした不安”という形で体にまとわりついてくる、厄介な代物だろう。"漠然とした不安"は具体化されることで、初めて解決に向けて動き出すべき"問題"が見えてくる。本書はそのための一冊だと言えるだろう。

  • 電子あり
『お金の相談はFPマネ子さんにおまかせください』書影
著:まつい

遺産相続でトラブルに……!?

じつはあまりに身近なお金の大問題を、お金のスペシャリスト・ファイナンシャルプランナーのマネ子さんが徹底解説します!

少し前に父親を亡くし、遺産を相続した38歳独身会社員の金飛常雄。ある日、彼のもとに税務署から「相続税についてのお知らせ」という書類が届く。「もしかして、脱税で逮捕……!?」と慌てた金飛は、急いで「現代FP事務所」に相談に行くが――。

第1話 5200万円を相続した家族が青ざめた……税務署からの突然の“お知らせ” の内容とは――。

第2話 38歳会社員が絶句した……2500万の「軽井沢の別荘」を買ったら「思わぬ出費」で大後悔してしまったワケ。

第3話 マイホームは「持ち家」か? 「賃貸」か? ついにわかった、その「答え」……!

第4話 メルカリで、利益がほとんどでない「300円出品」をする人の「思いがけない理由」とは?

第5話 じつは知らない「メルカリ」で売れる「こんなもの」を大紹介!

第6話 3500万の住宅ローン組んだ「年収700万夫婦」が、繰り上げ返済をして「地獄を見た」ワケ。

レビュアー

奥津圭介 イメージ
奥津圭介

編集者/ライター。1975年生まれ。一橋大学法学部卒。某損害保険会社勤務を経て、フリーランス・ライターとして独立。ビジネス書、実用書から野球関連の単行本、マンガ・映画の公式ガイドなどを中心に編集・執筆。著書に『中間管理録トネガワの悪魔的人生相談』、『マンガでわかるビジネス統計超入門』(講談社刊)。

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