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猫が好きすぎて素直に可愛がれない!? 男子禁制!ネコ歓迎! 女と猫のゆる大奥

猫奥(1)
(著:山村 東)
2020.11.25
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大奥といえば、きらびやかではあるものの、女たちの情念と陰謀が渦巻く、おどろおどろしい閉ざされた場所というイメージがあります。
ところが『猫奥』に出て来る大奥は、彼女たちの日常生活を垣間見ることができるたおやかな場所。話もいたってシンプル。
猫嫌いだと思われている御年寄(おとしより)の滝山が実は猫好きで、それを言えずにいる、ただそれだけです。
それなのに、それだけのことなのに、とにかく可笑しい!! とんでもなく可笑しい!! 何度読み返しても、沸々と笑いが込み上げて来るのです!!

江戸時代後期、13代将軍・徳川家慶(いえよし)の時代の大奥には7人ほどの御年寄がいて、猫を飼っていないのは滝山だけでした。
そのため滝山は、“猫嫌い”だと思われているのですが、時々部屋に遊びに来る吉野ちゃんという猫を密かに溺愛していました。

吉野ちゃんは大奥で1番偉い御年寄・姉小路(あねがこうじ)の飼い猫。
毎朝、将軍へご挨拶をする「総触れ(そうぶれ)」の席では、羨ましさのあまりついつい姉小路をガン見してしまいます。





滝山は、子供の頃から自己研鑽にいそしむ真面目な性格で、怒っていないのにいつも険しい顔をしている堅物(かたぶつ)。

顔で損をしている!!という時点で、もう笑うしかないです。
本人はその気がないのに、猫の飼い主に対する滝山の表情は、常に嫉妬と情念が滲み出ているのですから。さすが大奥!!

だから滝山に仕える部屋の娘だけでなく、将軍などの身の回りの世話をする中臈(ちゅうろう)たちも、常に滝山の顔色を伺いピリピリしています。
それ故、姉小路からこんなことまで言われます。



自分の心の内を素直に表現できない不器用な滝山。

もうここまで来ると、滝山が可哀想で可哀想で(笑)。だんだん滝山が愛おしく思えてきます。
特に子供の頃の話は、いかに滝山が自分を律して生きてきたのかがわかり、同情すら覚えます。

そんな律儀な滝山は吉野ちゃん一筋なので、同僚の可愛い猫が遊びに来てもグッと我慢します。
しかし、吉野ちゃんへの愛は一方通行だと気づいた滝山は、ついに自分も猫を飼おうと思い始めます。






    
何をやっても、とことん裏目に出る滝山(笑)。

次期将軍・徳川家祥(いえさち・後の家定)の許嫁・有姫(ゆうひめ)に「なぜ猫嫌いなのか」と聞かれたときもそうです。



周りのイメージに自分を合わせようとする滝山が、なんともいじらしくて可愛い!! “猫嫌いのプロ”の称号を与えたいくらいです(笑)。

1話1話は短いのに『猫奥』は、見どころが一杯です。
猫好きな作者が描く、リアルで可愛い猫はもちろん、大奥の様子も素晴らしい。特に年齢や立場によって違う着物の柄、帯の締め方、髪の結い方まで、とても細かく描かれています。
だから、大奥という知らない世界にすんなりと入り込むことができ、何度読んでも飽きないのだと思います。

滝山贔屓の私としては、滝山に幸あれ! と言いたいところですが、不器用で不機嫌な滝山の顔をいつまでも見て笑っていたいので、どうか滝山のもとに猫はやって来ませんように、と願っています!!

  • 電子あり
『猫奥(1)』書影
著:山村 東

江戸時代。大奥に仕える女性たちの多くは、生涯独身であった。
そんな彼女たちが、持てあました時間と愛情を注いだ対象、それは――にゃんと、猫だった!?

ここは女の嫉妬うずまかない大奥!
猫嫌いキャラが定着し、猫が好きだと言い出せない滝山が、密かに上司の飼い猫・吉野ちゃんを愛でたり愛でれなかったり!

大奥に暮らす女と猫の日常を描くゆるモフショートコメディ、開幕!

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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