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【異色テニス漫画】事故で夢を絶たれた天才ジュニアテニス選手と加害者の娘

神様はラケットを振らない(1)
(原作:志田 ゆうすけ 漫画:丸山 りん)
2020.08.29
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カラフルな装丁とテンポのいい明るい滑り出しに、すっかり青春学園スポーツ・ラブコメだと思いこんで読んでいたら、途中で思い出しました。そうだった、これは殺人事件の被害者と加害者の話だった、と。
こうした話の陰と陽で、人間の心の裏表が表現されている気がして、これは単純な話ではないぞ! と期待が膨らみました。

久我りょうは、最年少で全日本ジュニアの王座に輝き、将来を期待されたテニスプレイヤーでした。
ところが、自分の不注意から両親を交通事故で亡くし、右腕の機能も失ったため、テニスを辞めていました。
それから3年後、高校に入学したりょうの前に、ファンを名乗る雨嶺(あまね)めいが現れます。

翌日、りょうの所にやって来ためいは、「やってみませんか もう一度左手で!!」と、再びテニスを始めるよう促します。

かなり強引であざといやり方ですが、めいのおかげでテニスが大好きだったことを思い出したりょうは、親友の天道のぞみ、めいと共にテニス部へ。

王道の少女漫画だったら恋の三角関係が始まりそうな感じですが、3人に共通しているのは、自分のせいで大切な家族を不幸にしてしまったということ。

少しずつ距離を縮める3人ですが、天道によって、りょうの両親を殺したトラックの運転手が、めいの父親だということがわかってしまいます。

自分のためにテニスを勧めてくれたわけではないと知った時のりょうの失望感は、いかばかりか。天道のように初めからめいに不信感を抱いていたなら、まだ傷も浅かったのではないかと思えてなりません。

それなのに何故か交流試合では、めいとダブルスを組むと決めたりょう。
いくらテニスが好きだとしても、私だったら加害者の娘とは一切関わり合いたくありません。だから、敢えてめいと組んだのには、何か訳があるのでは……と、つい勘ぐりたくなります。

なぜなら、ここに出て来る誰もが、人前で見せる“表の顔”と本心を表す“裏の顔”が、大きく違うからです。
誰もが皆、一生懸命に取り繕って生きているように見えるのです。

いつもとぼけている陽気なりょうの祖父は、蓋をしていた加害者に対する憎しみが、突如爆発します。
加害者家族ということで世間からバッシングを受け続けているめいも、りょうがトラックの前に飛び出しさえしなければという思いを心の底に抑え込んでいました。
そして、明るく振る舞っていたりょうも、ついに封印していた言葉を言い放ってしまいます。

誰もが“2つの顔”を見せるので、どちらが本心なのかと疑いながら読むようになってしまいました。
でも、そこが面白い!! 読み進めていくうちに、もっとわからなくなってしまったからです。裏の裏には、また裏があるのではないかと。

事件の被害者家族、加害者家族という深刻になりがちな題材ですが、ひねりの効いた洒落たセリフは読んでいて楽しく、そうかと思うと核心をついたセリフがどーんと出てきてハッとします。
ここに世間の目やバッシングも加わり、さらに面白くなりそうです。

そして何より、めいが健気でとっても可愛いのです!!
だから、りょうもめいも誰も傷つかないでほしいと思いながらも、りょうがダブルスの相手をめいにした本当の理由は何なのか?が気になって仕方ありません。
先が読めない分、より一層この続きが楽しみです!

  • 電子あり
『神様はラケットを振らない(1)』書影
原作:志田 ゆうすけ 漫画:丸山 りん

主人公・りょうは将来有望視されたテニスプレーヤーであるがトラック事故にあい両親を失い、利き腕の右手の機能もほぼ失って夢を諦めた。
だが、ファンを名乗る少女の応援によって左手でテニスを再開することに決めた。
しかし、その少女は実はトラック事故の加害者の娘だった。
衝撃の真実を知った主人公のまさかの決断とは――!?

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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