今日のおすすめ
『幸福な食卓』『そして、バトンは渡された』に連なる心洗われる傑作
おや、今回は初のSF小説かな、と原稿を読み始めた瞬間に思いました。
人の心がエスパーのように読める大学生の梨木くんは、だれもが抱える何がしかのつらさにそっと寄り添ってくれるすごくいいやつです。
終盤、唯一心を閉ざしたままのバイト仲間、常盤さんの謎──重い秘密が明かされます。
今作も、読み口はライトながら、笑って読んでいるうちに遠く深くに連れていかれる瀬尾節炸裂で、心の汚れきったすれっからし編集者(私)もゲラを読むたびに泣いてしまいました。
瀬尾さんは不思議な人で、どんなに嫌な人を書こうとしてもいい人になってしまうそう。
今作では、いい味を出している「大竹さん」に注目です。
「初回限定」で同封する冊子「アフターデイ」は、その大竹さんの語りで登場人物の後日譚を綴って頂きました。
これも超絶面白く、ここに登場する新メンバーをまた書いてみたいとのことなので、文庫化の時に期待しています。
──小説現代編集チーム 奥村実穂
- 電子あり
私は、ぼくは、どうして生まれてきたんだろう?
大学生の梨木匠は平凡なことがずっと悩みだったが、中学3年のときに、エスパーのように人の心を読めるという特殊な能力に気づいた。
ところが、バイト先で出会った常盤さんは、匠に心を開いてくれない。
常盤さんは辛い秘密を抱えていたのだった。だれもが涙せずにはいられない、切なく暖かい物語。
レビュアー
関連記事
-
2021.11.08 インタビュー
【感動必至の傑作】いま最注目の作家、一穂ミチの『パラソルでパラシュート』インタビュー
『パラソルでパラシュート』著:一穂 ミチ
-
2021.11.12 レビュー
笑って泣ける最強の離婚劇。傑作短編『魔王の帰還』がマンガになった!
『魔王の帰還』原作:一穂 ミチ 漫画:嵐山 のり
-
2022.07.13 インタビュー
量子力学テロリスト、キメラ……「そんなネタ、大丈夫?」と言われるような作品に挑む、直木賞作家・佐藤究インタビュー
『爆発物処理班の遭遇したスピン』著:佐藤 究
-
2022.07.21 レビュー
「写真の少女」のその後の人生──ベトナム戦争から50年
『「ナパーム弾の少女」五〇年の物語』著:藤 えりか
-
2022.01.21 レビュー
心癒やされる葉っぱ切り絵のメッセージカード。離れていても伝えたい思い。
『葉っぱ切り絵メッセージカードBOOK 離れていても伝えたい』著:リト@葉っぱ切り絵
人気記事
-
2024.09.05 レビュー
【緊急出版】石破茂、もうこの男しかいない。今こそ保守リベラルの原点に立ち返れ。
『保守政治家 わが政策、わが天命』著:石破 茂 編:倉重 篤郎
-
2024.08.21 レビュー
【自民党と裏金】安倍派幹部はなぜ逃げ延びたのか。その答えがここにある
『自民党と裏金 捜査秘話』著:村山 治
-
2024.08.23 レビュー
橋下徹の画期的提言! 自民党がどうであろうと野党が腹を括って決断すれば「政権変容」できる
『政権変容論』著:橋下 徹
-
2024.09.23 レビュー
【介護保険】申請しないと始まらない! しくみと使い方がわかる入門書
『最新 図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本』監修:牛越 博文
-
2024.09.19 レビュー
大マジメなのに何かがズレている……! 本気なのに「ざんねん」な乗り物たち
『ざんねんなのりもの事典』編:講談社ビーシー