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少子高齢化は、自分にどんな影響があるのか?『未来の年表』で100歳まで考えた。
(著:河合 雅司)
前作『未来の年表』が発売になって1年。現在48万部(電子書籍含む)も売れ続けている新書で、その販売部数はまだ伸びているという。
『未来の年表』が時間軸の大きな流れを描いた未来予想年表だとしたら、今回の『未来の年表2』は実際にやってくる身近な暮らしの実例予想を紹介しています。2冊を組み合わせて読むと、これから日本で始まる人口減少・超高齢化社会がより深くイメージしやすくなります。
統計を使っての予想なので、すべてが必ずそうなるとは言えません。でも、この数字から紐解くとこんな未来が来るかもしれないよねという、ひとつの仮説としては知っておいて損はないでしょう。
■ 想像しやすいところから読んでいく
私は現在30代後半で横浜に夫婦ふたりで住んでいます。育児や介護がまだなく、都会の風景の中に暮らしているので、本の中で描かれる「少子化・超高齢化・人口減少」がどれくらい身近なコトになってきているのか、なかなか実感が湧かずにいます。統計やニュースを見れば、人口が減少することも、少子化がもっと進むことも、日本中が高齢化するのも、現実なのだと知識として理解はできるのですが、「見えている風景」と「知っている知識」を一致させるのはなかなか難しいなぁと思いました。
今回の『未来の年表2』は前作より挿絵が増えています。より身近な話題が増えるので、挿絵とグラフを組み合わせて、想像しやすい本の作りにしたのかなぁと感じました。前作と同じく、前半は現状の統計から紐解ける予想、後半は著者が考える対策案になります。
「住まいで起きること」「家族に起きること」「仕事で起きること」「暮らしに起きること」「女性に起きること」と本の前半は5つのグループに分けて、未来予想図を紹介しています。
全部を深く読み込もうとすると、自分の環境とはズレていて少し想像しにくい箇所もあるので、この中から自分にとって想像しやすい箇所を掘り下げていく読み方が良さそうだなと思いました。
■ 安心できるはずの家が孤独な密室を作る
私の場合、家で働いているぶん家で過ごす時間が長いのと、子どもの頃は祖父母と同居をしていたのとで、「住まいで起きること」はとても読みやすかったです。この章は高齢化することで起きる家の中の危険の話です。
高齢になると、片づけができなくなる人が増えると言われています。たしかに私の祖母も部屋の中にモノがあふれており、片づけるのは苦手そうでした。戦争を経験していて、物がなく苦労した時代があったので、モノがたくさんないと不安になると祖母から聞いたことがあります。
モノが多い状態で、足腰が少しずつ弱ってきた祖母を見ていると、ハラハラすることがありました。「躓(つまづ)いて物にぶつからないかな……」「下のモノを取ろうとして上からモノが降ってこないかな……」。布団なども昔ながらの重たいモノが多く、押し入れから崩れて落ちてこないかと心配したこともあります。
祖父母とは一緒に住んでいたので、人が年を重ねていくことを近くで見続けることができました。家族で同居していると、なんとなくお互いにプライバシーはありつつ、暮らしを感じることはできます。その状態でも、心配する部分はたくさんありました。もし誰も支える人がいないひとりきりの家だとしたら、どうかなぁと想像しました。
内閣府の「高齢社会白書」(2017年度版)が、65歳以上の事故発生場所の分析を紹介しているが、「住宅」が77.1%と突出しているのである。
家という安心できる場所が、他者とつながりがなくなると、孤独な密室になってしまう。高齢者の事故の発生が、80%近くも家の中で起きるのだと知ると、家にいる時間の長さと、そこをいかに安全な場所にするかはとても重要になってくると感じました。
■ 今からできることを無理なくやって、続けてみる
とくに「お風呂」は「密室のなかの密室」になり、浴槽での事故の件数はこの10年で1.7倍に増えているのだそうです。
祖母を見ていて、ただモノを減らせば不安を与えてしまうかもしれないし、モノを残せば事故の原因を増やすことになる。誰かが片づければいいと簡単に言い切れない心の問題がそこにはあるように思います。
祖母に今から価値観や感じ方を変えてほしいと頼むのは難しいので、今の祖母が怪我をせずに暮らせるようにお願いができる話し方、伝え方を学ばないといけないのだろうなと思います。私たち若い世代は、高齢者になってから価値観を変えるのは難しいので、今のうちからモノに縛られない暮らしの練習をするのも、ときには必要なのかもしれないなと思いました。
自分が高齢者になっても、家の中が安心で安全な場所になるように、若いうちから片づけを訓練していくという小さな小さな努力は、きっと将来役に立つだろうと思います。未来を想像して対策するというのは、難しいことや特別なことをするのではなく「こうなるかもしれない」という小さな危機感と想定を持ち、今できることを長く無理なく続けることが大切なのかもしれません。
お金の用意や家の用意だけでなく、考え方の用意・柔軟に他の人の意見や環境を受け入れられる価値観も老後には同じくらい必要なのだと感じました。高齢になるとどれだけ訓練しても、価値観が固まったり変えるのが難しくなるようにできているのだとは思います。でも、「難しいからしない」では何も解決できません。諦めずに地道に柔らかい心で生き抜くのが大切になってくるのでしょう。
■ 「100年生きる」と想像しながら暮らす
日本の平均寿命がどんどん延び、100歳まで生きることも珍しくはなくなりました。60代で定年退職をして、年金を開始し、そこから30年近く生きる人もかなりいるということになります。
暮らし方が変化して、2015年の平均初婚年齢は男性31.1歳・女性29.4歳。晩婚化すると、第1子の出産年齢も30代まで上がったことになります。
少子化を加速させている大きな要因に晩婚・晩産がある。内閣府の「少子化社会対策白書」によれば、2015年の平均初婚年齢は夫が31.1歳、妻が29.4歳だ。1975年 は27.0歳と24.7歳だから、40年間で夫は4.1歳、妻は4.7歳も遅くなっている。
結婚が遅くなれば、第1子をもうける年齢も高くなる。1975年の第1子出生時の母親の平均年齢は25.7歳だが、2015年は30.7歳である。同年の第2子出産時の母親の平均年齢は32.5歳、第3子となると33.5歳だ。
ライフスタイルが自由に選べるようになってきました。そこに長寿という特性が組み合わさりました。わずか数十年で、生き方にも寿命にも個人差が大きくなり、一定のルールですべての人が幸せになるのは難しくなりました。
100年分のライフプランを、自分の特性に合わせて自分なりにいくつかのバージョンに分けて組み立て、孤独になりすぎないゆるやかな他者とのつながりを持ち続ける必要性が出てきました。
結婚が他者と家族になる一辺倒の方法ではなく、変化させながらそのときの空気を読み取って、自分らしく心地よくつながっていく仕組みを作りながら生きていくのがとても大事だと感じます。結婚という家族もあるし、結婚ではない家族もある。そんな幅の広い家族の形がこれからは必要になってくるでしょう。
ゆるやかに人や街とつながりつつ、小さな商いや小さな仕事を組み合わせて収入を増やし、自分らしい幸せなサイズの暮らしを設計する。100年を生き抜くために、私たちは現状の数字から未来を読み解いて、ヒントを探さなければならないし、どこかにある時代に置き去りにされた正論より、自分なりの正解を見つけることが大切になりました。その正解の見つけ方のヒントがこの本にはたくさんあります。
これからやってくる少子高齢化と人口減少。問題はきっと多い。それでも諦めたり絶望したりせず、今日できることを丁寧に続けていくことで、いつか未来の暮らしにつながっていくのだろうと、未来の風景が見えています。
- 電子あり
本書は、『未来の年表』の続編である。
少子高齢化という巨大なモンスターの全貌をとらえるため本作は全く違うアプローチでそれに迫る。
少子高齢化や人口減少が人々の暮らしにどのような形で降りかかってくるかを、あなたの生活に即しながら明らかにする。言うなれば、これからあなたに起きることを、お中元やお歳暮のギフトカタログのように一覧してみようというのだ。
前著『未来の年表』が年代順というタテ軸を用いて俯瞰(ふかん)したのに対し、本書は起きる出来事を「ヨコ軸」、すなわち面としての広がりをもって眺める。
少子高齢化や人口減少で起きることを、家庭、職場、地域社会といったトピックスに分けてカタログ化すれば、さまざまなシーンを「あなた自身の問題」として具体的に置き換えることができる。そしてそれは、10年後、20年後の日本でうまく立ち回っていくための指針となる。
既刊・関連作品
レビュアー
AYANO USAMURA Illustrator / Art Director 1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始、17歳でフリーランスになる。万年筆で絵を描くのが得意。本が好き。
https://twitter.com/to2kaku
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