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ネッシーからニホンカワウソまで。スマホで動画もクイズも楽しめる!動く図鑑「MOVE」
(編:講談社 監修:今泉 忠明)
「可能性を考える」って、なんてたのしいのだろう
小学生の頃、ある日の理科の授業で「幽霊はいる?」という議論がなぜか勃発した。激論だった。自分がどっち派だったのかは思い出せないのだけど、ひとしきりみんなが話したあとの先生による締めの言葉は今も忘れられない。
「幽霊は、科学的には今は見つかっていません。でも、昔は実在しないと思われていたものが、科学技術が発展すると発見されたりするんです。だから、将来的には何か見つかるかもしれませんね」
幽霊はともかくとして、心にめちゃくちゃ響いた。それまでぼんやりとしたイメージだった「科学の進歩」に輪郭が与えられた気がした。それに、頭ごなしに「いませんよ」と言われるより、うんと世界の歯応えが増して広々と感じられる。
『講談社の動く図鑑 EX MOVE まぼろしの生きもの』の「第3章 未確認生物の科学」で、ひさびさにネッシーやツチノコに再会した。彼らがただの与太話じゃなく科学的に可能性を考える土俵に上がっていて、私はとてもうれしかった。
本書のネッシーやツチノコやイエティは、たんに「いませんよ」や「いる? いない?」といってその可能性を0 と1で終わらせないのだ。可能性を考えるのだ。たとえば「ネッシーは首長竜なのか?」という問いに対して、この図鑑ではこんな解説が読める。
首長竜は、中生代にさかえていた海のは虫類のなかまです。長い首をもち、水中でくらしていたことから、ネッシーの正体ではないかという説もあります。しかし、種として存続するには、すくなくとも50頭はいなければ、だんだんと数を減らして絶滅してしまいます。また、首長竜は呼吸のために水面上にでてこなければなりません。ネス湖に50頭以上の首長竜がいたら、まちがいなくもっと多くのネッシーが目撃され、とっくに発見されているでしょう。そう考えると、ネッシー=首長竜説の可能性は低いといわざるをえません。
納得! じゃあ、首長竜じゃないなら、ネッシーって魚なの? ……という問いに対しても、科学的な説明がなされている。「なんでなんで?」とどこまでも興味が拡がる。さらに本書の監修を務めた動物学者で日本動物科学研究所所長の今泉忠明先生によるネッシーの大仮説も展開される。わくわくする。
この図鑑の各章で登場する生きものたちは、みな幻とよばれた生きものだ。絶滅したとされている生きもの、存在がはっきりしていなかったけれど実際に発見された生きもの、そして未確認生物。なんでそんなたのしいことになっているかというと、この図鑑には次のようなねらいがあるからだ。
幻とよばれるからには、なにか「もとになったもの」がいたはずだ、というわけです。
ここで大切なのは、それを科学的に考えることです。幻の生きもののすがたや、なにをどのくらい食べて、どんな暮らしをしていると想像されるのか? といったことを、現在知られている生きものの生態や行動などから、客観的に推定するのです。
いい。歯応え抜群だ。世界がぐんと広がる。科学的に可能性を考えると、「第1章 絶滅していない!? 幻の生きもの」に登場するニホンカワウソも急に「まさかの存在」じゃなくなるのだ。
「絶滅したとされるニホンカワウソが、もし今も生き残っているなら、どこにいる?」という考察が、とても鮮やかで具体的な景色として紹介される。
真ん中下の写真を見てください。カニの食痕(しょくこん)で「このカニを食べたのは何者?」と考えるのか。推理ゲームみたい。年表もいい。カワウソめっちゃ目撃されてる!
こんなふうに、イラストと写真と具体的な解説がめいっぱい並ぶ。幻の生きものにたいして「そんなまさか」で終わらずにその正体を科学的に追い求める、とても挑戦的な図鑑なのだ。
お気に入りの「まぼろしの生きもの」が見つかる
『講談社の動く図鑑 EX MOVE まぼろしの生きもの』をじっくり読んで、子どもの頃に図鑑をどんなふうに読んでいたかを思い出した。お気に入りのページを見つけて、しつこくしつこく解説と絵を眺めていた。で、今回もやっぱり「お気に入りのページ」はできた。
こちらです。「第2章 ほんとうにいた! 幻だった生きもの」の、「最近見つかった新種の生きもの」の項目。
みんな知らない生きものだった。とくにページ右上にいるブパティ・インドハナガエルの姿と生態に心を鷲掴みにされた。一生のほとんどを地中ですごすカエルなのだという。君、よく見つかったね……。今泉先生によるイントロダクションも楽しい。そう、これから大人になる人たちだって、新種の生きものを見つける可能性はあるのだ。
なお、この図鑑は「動く」図鑑だ。NHKエンタープライズが制作した関連映像が収められたDVDが付属している。ぜひ見て欲しい。映像テロップの漢字にふりがながついているので小学生にもわかりやすい。
図鑑のあちこちに「DVDに関連映像がありますよ」とお知らせがでている。私はこのDVDで、ページ右上にいるツバメケイのファンになった(とくにひな! 感動するから見て!)。
ニホンオオカミ、ニホンカワウソ、タスマニアタイガーなど、絶滅したといわれながらも、いまだに目撃例の絶えない幻の生きものや、人間との出会いによって、あっという間に絶滅してしまったドードーやステラーカイギュウのような悲劇的な生きもの、毛皮だけが見つかっているけれど、生きたすがたが見られていないアンデスオオカミのような幻の生きものなどの、生存の可能性や絶滅の原因を科学的に解説。また、ツチノコやネッシー、雪男などの伝説的な生きものの正体も科学的に検証する画期的な図鑑! 監修は、『ざんねんないきもの事典』でおなじみの今泉忠明先生!
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。
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