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【激奨!クリスマス本】クリスマスツリーになりたかったもみの木の物語
(作・絵:佐野 洋子)
クリスマスプレゼントにピッタリな絵本
ハロウィンが過ぎると街はあっという間にクリスマスムードに様変わりしますね。書店を覗くと児童書コーナーには、クリスマスにまつわる絵本の特集もされています。『100万回生きたねこ』で有名な佐野洋子さんもクリスマス絵本を出版されていることはご存知ですか? お子さんやお孫さん、お友だちへのクリスマスプレゼントに絵本をあげようかなと思ってる方にオススメしたい作品です。
1990年に初版が刊行された本作は、佐野洋子さんの原画により忠実な色みとなった『新版 わたし クリスマスツリー』として2023年10月26日に発売されました。
クリスマスツリーになりたいもみの木の物語
山のふもとに立っている「もみの木」の将来の夢は、きれいな町でクリスマスツリーになること。今年こそ町の人が私を見つけ、列車に乗せて町まで連れてってくれると信じています。ところが今年も「もみの木」は乗れずに列車は町へ向かってしまいます。待って──!!と追い掛け、走り出す「もみの木」。果たして「もみの木」はクリスマスツリーになれるのでしょうか……?
子どもの喜ぶリフレイン効果
本作は同じ台詞や行動が何度も出てくるリフレインが効果的に使われています。例えば列車が通るたびに積み荷は何かな?と「もみの木」はソワソワしています。列車を追い掛ける「もみの木」は何度も何度も「わたしは クリスマスツリーに なるの。」とつぶやきます。きっと子どもたちは「もみの木」に感情移入しながら一緒にソワソワしたり、頑張れ!と応援しながら読むことでしょう。ぜひとも感情豊かに読み聞かせをして欲しい作品です。
顔のない「もみの木」の表情が豊か
本作の主人公である「もみの木」には目や口は描かれておらず顔がありません。にもかかわらず、読むと見えてくるのは表情豊かな「もみの木」の姿。夢を語る「もみの木」は堂々と、列車を待つ「もみの木」は期待に溢れ、追い掛ける「もみの木」には半べそをかきながらも必死な様子が目に浮かびます。
物語は思わぬ展開となり、結局「もみの木」は町のクリスマスツリーにはなれず山のふもとに帰ってきます。そこで迎えてくれた山の木々や動物たちが「もみの木」を飾り付けクリスマスツリーにしてくれるのですが、そのラストの「もみの木」は何だか哀愁が漂っているように感じて胸が締めつけられました。
大人に染みる深い物語
絵本というのは読み手によって様々な解釈ができるのがおもしろさの一つでもあります。特に本作は、町に憧れたけれど戻ってきた=夢破れるとも解釈でき、大人が読むと自分の人生と重ね合わせほろ苦さを感じるのではないでしょうか。
私自身、上述したようにラストの「もみの木」に哀愁を感じて胸が苦しくなったのはこうした解釈をしたからかもしれません。
終盤、年とった木が言う「しっかり 土に 根を いれるんだ。」と言う台詞も解釈の分かれる深いひと言ではないでしょうか。今いる場所でしっかり踏ん張れば見える景色も変わってくる、そんなメッセージを私は受け取り、残り少なくなった2023年を愚直にまっすぐ頑張っていこうとパワーをもらった気がします。
みなさんはこの物語からどんなメッセージを受けとりますか? 『100万回生きたねこ』にも通ずる、切なさや憂いの中にある温かさが魅力の佐野洋子さんの絵本の世界を堪能してください。
©︎JIROCHO, Inc.
- 電子あり
『100万回生きたねこ』『おじさんのかさ』の佐野洋子が描く、「もみの木」の物語。
衝撃のクリスマスの物語が、大人の絵本にふさわしい、新しい装いになりました。
きれいな町に行って、クリスマスツリーになりたいと夢みる「もみの木」。
町の人がむかえに来てくれると信じていたのに、季節は過ぎていきます。
やがて、ほかのもみの木をのせた貨物列車が走っていったと知らされた「もみの木」は走り出して……。
一途に願った夢がやぶれた「もみの木」を迎えてくれたのは、森の仲間たちでした。
猛然と走り出す「もみの木」に小さい子どもたちは大よろこび。
大人たちは、心あたたまるラストにほっとしながらも、ほろ苦さをかみしめる、そんなどこにもないクリスマスの絵本です。
*本書は、1990年初版刊行『わたし クリスマスツリー』、2006年初版刊行『新装版 わたし クリスマスツリー』の仕様、デザインをかえたものです。佐野洋子の原画に、より忠実な色みになっています。
既刊・関連作品
レビュアー
ライター。フリーランスで働く1児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!
Twitter:@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier
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