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1分の1を作り上げるという究極のクリエイティブで豪快でしかもシンプルな生活

まんが 新白河原人 ウーパ!
(著:守村大)
2015.11.10
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自分メモ
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始まりは9年前のこと……。

「都市暮らしの机上でちまちまと漫画を書き続けることにホトホト倦んだ」もりむらさんは一念発起して山奥で自給自足生活をすることを決意します。
「モノカネにふりまわされて、食い散らかし、太り、満足せず、その上疲れてしまうんじゃ、そんなせいかつイミねーじゃん」
と日本中を探し歩き、見つけた場所は福島県白河市郊外の山中。いざ始めようとしますがそんな生活、家人の賛成があったわけではないようです。

「さすがに漫画屋ね だてに30年近く 机の上でくらしてないわ」
「ムダにいろんなこと知ってるし 発想が突飛で都合よく役立たずでユニーク」
という妻ミキちゃんの褒め&批判言葉を背に受けて、愛犬ヒメと山奥生活を始めることになったのでした。

自然の中で暮らすと言えば聞こえはいいですが、それは文字通り自然との格闘です。
「目前にはだかる困難に遭遇してはジタバタともがき、惑い、考え、攻略法を発見して前進する日々」の連続でした。

根株の掘り起こしの時に感じた樹木の生命力、「ものすごーくうしろめたい」と思いながらも作業を止めるわけにはいけません。そこに人が「自然の中で生きる」ということの大きな意味があるからです。
困難を極める掘り起こし……掘り起こした後にできた大きな穴……。
もしかしたらそれは樹木の生命がどのように大きなものであったのかをあらわしているのかもしれません。

すべてがひとつひとつ手探りで学ぶ日々でした。少しずつ整地が進み次の目標ができました。
家の建築です!
「漫画屋がお山に1/ 1の絵を描きます」
家人の懸念、心配にもめげずその夢に向かって進むことを決心します。
「家を自給することが非常識で限度を超えてるとしたら わお! それは凡夫の冒険ですね」
建てるのは丸太小屋。使う道具は整地でも大活躍した「鉄人と名づけたユンボとトンカチ、ノコギリ等の大工道具」そして「愛用のチェーンソー、ログスライバー、水準器、ノミにベルトサンダーと数える程度」です。本当に大丈夫なんでしょうか……と気になりますが、もりむらさんはこう言います。
「自分で考え、ありあわせの道具と体力で成し遂げる努力がおもしろい。いちばんの力と道具は自分自身です」と……。

時に縄文時代の人々の暮らしを想像し、家の基礎作りが始まりました。
棟上げにはバイク仲間の力を借りながらもついに完成!
漫画屋時代とは打って変わった両手のひら、そして体型も大変貌「体重80kg 体脂肪30%のメタボは入植してからの奮闘で58kg 8%になって」いたのです。

なんとか家は立ったものの難問がまだありました。家人のOKがまだとれないのです。
家人はこう宣言します。
「フツーの暮らし」「どんなに疲れてもヒトはヒトやモノにもまれて暮らしてヒトらしく生きられるのよ! たとえ汚れていても社会そのものが真実よ!」
その家人を説得するべくもりむらさんの奮闘は続きます……。

「こころとからだを目一杯試して シアワセを自給するんだ!」

もりむらさんの願いは、少しずつ、確実にかなえられていくようです……。

エッセイで出版されていた守村さんの記録ですが、〝まんが〟になることでいっそうその開墾生活の厳しさ、都会を離れる先になにが待っているのかをじっくりと感じとれます。
入山したての桎梏の闇と夜の森の音、同じような林が続く中で位置を見失うこともありました。
自然の中で生きるというのはどういうことなのか、その中で必要なことはなんなのか……。

「なんとかする」「なんとかなる」という目標へ向けて、あえて言えば〝楽観的〟な気持ちを忘れずに生きている守村さんには賛嘆と驚きを覚えてしまいます。そのようなことを感じること自体が〝都会病=悲観的〟なのかもしれません。蛮が付くような勇気というもの、1分の1を作るという〝クリエイティブ〟な姿はそうあるものではないと思います。