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【講談社学術文庫40周年】1976〜2002年の名著20点を「特別復刊!」

「学術をポケットに入れる」というモットーで1976年6月30日に発刊した講談社学術文庫は、2016年で40周年を迎えました。現在の刊行点数は2400点を超え、古典全訳注シリーズや日本文化論、辞典・事典といった定番シリーズから、最新の学問まで幅広くカバーする、充実のラインナップが好評のレーベルです。
この40周年の節目を記念して、読者から復刊のリクエストが多かった書目を中心に、20点の名著を復刊しました。いずれも読者の方々に長く愛読されたものばかりですが、現在入手しづらくなっている良著です。
今回、特別カバーをかけた贅沢な装丁で復刊いたしますので、ぜひ各書店でお求めください。

»講談社学術文庫 Webページ

2016.12.02
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1976~1980年に発行された復刊作品

講談社学術文庫(以下、学術文庫)は1976年(昭和51年)に誕生した文庫型の学術書シリーズです。「学術をポケットに入れる」ことをモットーとして、多岐にわたるジャンルの本が出版されています。

学術文庫が生まれた1976年は、かのロッキード事件が明るみに出た年で、国会中継で繰り広げられる証人喚問にお茶の間が釘付けになりました。また、芸能界ではピンク・レディーがデビューした年でした。

『第二芸術』書影
著:桑原武夫

通巻番号 18|1976年6月発行

戦後間もない時期に提起された日本文化批判の古典。俳句を「第二芸術」と断じた表題作はじめ、伝統文化の保守性、閉鎖性、退嬰姓を鋭く衝いて、今なおみずみずしい説得力を失っていない。

『勘の研究』書影
著:黒田亮

通巻番号 512|1980年9月発行

東洋における禅の悟りや剣法の極意、芸能の名人芸などにみられる「勘」に普遍性はあるのか。前人未踏の研究領域での唯一の心理学的研究であり、日本人の精神の働きと構造を立体的に解剖した古典的名著。

1981~1985年に発行された復刊作品

1980年代はテレビ番組とそれに伴う文化が盛り上がりを見せていった時代かもしれません。'81年には「オレたちひょうきん族」、'82年には「笑っていいとも!」、'83年にはNHK朝の連続テレビ小説で「おしん」がスタートし、いずれも国民的人気番組となりました。「Dr.スランプ アラレちゃん」('81年)、「キン肉マン」('83年)など人気コミックのアニメ化もこの時代です。

'84年にはロサンゼルスオリンピックが開催されました。洋楽を聴き始めた人はそのオリジナルサウンドトラックに心奪われたのでは? また'85年には日本航空123便墜落事故によって乗客乗員520人が死亡し、日本国内の単体の飛行機事故では史上最悪の惨事となりました。

『続・勘の研究』書影
著:黒田亮

通巻番号 537|1981年5月発行

勘の研究』で展開された独自の「覚心理学」がさらなる理論的展開をみせる。“那一点” “直指”などの用語ひとつとってみても著者の発想は非常にユニークである。日本人の精神とその働きを知るうえで必読の書。

『日本の神話と十大昔話』書影
著:楠山正雄

通巻番号 600|1983年5月発行

記紀神話から「夜見の国」「大國主命と素戔嗚尊」「海幸山幸」など、十大昔話から「桃太郎」「花咲じじい」「分福茶釜」などを分かりやすく再話する。日本人の心にインストールされた物語を読む。

『新訂 女官通解』書影
著:浅井虎夫

通巻番号 670|1985年2月発行

平安時代の歴史・文学理解に欠かせない「女官」について網羅した画期的な解説書。宮廷などで活躍した全女官について、法制史の知識のうえ漢文・古文を博引傍証しながら、沿革と実態を明確に論述した。

1986~1990年に発行された復刊作品

1980年代後半から1991年まで、いわゆるバブル経済が続きます。'87年には日経平均株価が終値ではじめて2万円を突破、さらに翌年の'89年には3万円を突破、その年の12月29日の大納会では史上最高値の38915円87銭を記録したといいますから、想像を絶する好景気といえるでしょう。

'87年は、国鉄が分割・民営化されJRグループが誕生した年でもあります。'88年には未公開株の贈収賄事件として大きく騒がれ政・官・マスコミを揺るがせたリクルート事件が起きています。

また、'89年には昭和天皇が崩御し、64年にわたる激動の昭和は終わりを告げたのでした。

『国是三論』書影
著:横井小楠 全訳注:花立三郎

通巻番号 758|1986年10月発行

坂本龍馬らに影響を与え、明治維新の礎となった幕末の思想家の、学問と思想の全てを投入、総括した代表作。経世済民、殖産興業、通商交易等による民富論的富国策を謳(うた)った、小楠の人と思想を知るうえに必読の書。井上毅、元田永孚との対話等も収録。

『哲学以前』書影
著:出隆

通巻番号 824|1988年4月発行

何が人生にとって大切であるか? 改めて自覚させる拠点を与えてくれる、哲学への巧みな入門書。デカルトやカントに西田幾多郎を並べ、戦前戦後の日本の知的青年に希望を与えてくれた名著。

『朝日の中の黒い鳥』書影
著:ポール・クロ-デル 訳:内藤髙

通巻番号 850|1988年11月発行

1920年代、外交官として勤めながら、旅行、美術、演劇、そして人びとの出会いから日本の風土と文化への理解を深めたフランス人の詩人が、大正時代の日本をやさしく語る。素朴な驚きに満ちた珠玉のエッセイ。

『櫻史』書影
著:山田孝雄

通巻番号 916|1990年3月発行

上古より現代まで、春爛漫の櫻は日本人に格別の意味をもつ。櫻と日本人のかかわりの歴史を、逸話・詩歌・人物のあらゆる事柄についてまとめた、国文学研究の第一人者による比類なき“櫻”賛歌。

1991~1995年に発行された復刊作品

1991年はバブルが崩壊し、「失われた20年」が始まる年でもありました。しかし、まだこのときは楽観的な観測が大多数を占めていたといいます。

大規模な自然災害や事件があったのも記憶に新しいところです。'91年は雲仙普賢岳の噴火があり、'93年は北海道南西沖地震により奥尻島が壊滅的な被害を受けました。また、'95年には阪神・淡路大震災が発生し、M7.3の直下型大地震により6400人を越える死者を出しました。

同じく'95年には地下鉄サリン事件が発生、オウム真理教による一連の陰惨な事件が次々と明るみに出ました。

『マルクス主義の地平』書影
著:廣松渉

通巻番号 956|1991年1月発行

一世を風靡した名著・復活! 冷戦崩壊後25年を経て、資本主義の限界が全世界的にあらわになった今、マルクス主義が見直されている。「歴史に先駆けすぎた」と著者が言うマルクスに立ち返るべき時が来た。

『昭和金融恐慌史』書影
著:高橋亀吉/森垣淑

通巻番号 1066|1993年3月発行

昭和2年、日本全国の銀行で取り付け騒ぎが起こり、異例の支払猶予令が断行された! はるかのちのバブル崩壊、リーマン・ショックなどを想起させる日本を襲った未曾有の危機の原因とは何だったのか?

『アウグスチヌス「告白」講義』書影
著:矢内原忠雄

通巻番号 1091|1993年9月発行

軍国主義を批判して東大を追われた著者は、内村鑑三に師事したキリスト者として、アウグスチヌスと真摯に向き合った。内面の葛藤と母子の物語を生々しく描いた傑作『告白』を読み解く、著者渾身の講義!

『リヴァイアサン』書影
著:長尾龍一

通巻番号 1140|1994年9月発行

日本政治が混迷を深める中で新たに脚光を浴びる学術文庫オリジナル作品。ホッブズ、ケルゼン、カール・シュミットという3人の思想家の国家論を軸にして、主権とは何か、国家とは何かを根源から問う!

『国民経済 その歴史的考察』書影
著:大塚久雄

通巻番号 1145|1994年10月発行

今日、危機を叫ばれる資本主義と民主主義の関係とは? イギリスとアメリカの歴史を分析することで、経済と政治の本質を同時に射程に収める「大塚史学」の精髄をコンパクトにまとめた不滅の名著!

1996~1999年に発行された復刊作品

1996年に三菱銀行と東京銀行が合併して「東京三菱銀行」が発足したり、'97年には北海道拓殖銀行と山一證券が破綻するなど、これまでには考えられないような金融機関の統廃合が起こったのがこの年代でした。'97年といえば消費税が5%に引き上げられた年でもあります。

神戸連続児童殺傷事件('97年)、池袋通り魔殺人事件('99年)、桶川ストーカー殺人事件('99年)などの凶悪な事件が数多く報道された時代です。’99年は世紀末ということもあり、現実的なところでは2000年問題が取りざたされていましたが、現実逃避したところでは終末思想のようなものをうっすらと期待していた、という人も少なくないのでは? どこか、失われた時代を取り戻すための再生を願うような、そんな雰囲気があったかもしれません。

『近代化の理論 近代化における西洋と東洋』書影
著:富永健一

通巻番号 1212|1996年1月発行

「近代」とは何か? 今も問われ続けているその問いに挑む。資本主義と民主主義の形成、家父長制から核家族への移行など、西洋と非西洋の対比に切り込む、今こそ必読の書!

『神々の精神史』書影
著:小松和彦

通巻番号 1279|1997年5月発行

妖怪研究の第一人者の処女論文集。お地蔵さんを生み出した民衆の思想とはなにか? 折口信夫を継承する民俗学者・筑土鈴寛の可能性とは? 日本の歴史のなかの物言わぬ死者を蘇らせる「小松民俗学」の原点。

『パリ風俗史』書影
著:アンドレ・ヴァルノ 訳:北澤真木

通巻番号 1405|1999年11月発行

ローマ時代に起源を持つ不滅の都・パリ。教養あふれる知識と感性で、この魅惑の都市の2000年史を描く。貴重な図版も多数収録して、あたかも時間旅行をするかのように、この街に息づく人間の営みを描く。

2000年代に発行された復刊作品

舞浜駅前にイクスピアリができたり('00年)、大阪にユニバーサル・スタジオ・ジャパンができたり('01年)、六本木ヒルズがオープンしたり('03年)と、次々と新しいスポットが誕生しました。また平成の大合併と呼ばれる市町村の廃置分合が行われるなど、再生にも通じるようなトレンドが続いた年代といえるでしょう。

一方で'00年の世田谷一家殺害事件、'01年の附属池田小事件、'02年の九州監禁殺人事件といった、胸の悪くなるような凶悪事件が起きたり、雪印集団食中毒事件('00年)や、中国産の餃子による中毒('08年)、不二家に端を発する食品の偽装、毒物混入などで沸いた年でもありました。

『肖像のなかの権力』書影
著:柏木博

通巻番号 1414|2000年1月発行

図像には人びとの志向や欲望を支配する力がある。雑誌や絵葉書などの日常目にするグラフィックにひそむ時代や社会の支配的論理を解き明かす意欲的著作。そして我々は近代から真に自由になりえたのだろうか?

『世界宗教事典』書影
著:村上重良

通巻番号 1436|2000年7月発行

イスラム教徒とユダヤ教徒、スンニ派とシーア派、原理主義など宗教紛争の根にあるものとはなにか? 国際社会理解に不可欠な主要な宗派、教典、事件や運動などを地域別、系統別に整理した「読む事典」。

『言霊と他界』書影
著:川村湊

通巻番号 1575|2002年12月発行

言葉はなぜ人を泣かせたり、笑わせたりもするのか。魂というものがあるとすれば、それは終局的にはどこへ帰着してゆくものなのか。真淵、宣長から柳田、折口まで、多彩な分析で日本人の隠された精神史を探った意欲的論考。

講談社学術文庫 公式Webサイト

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