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自称猫のイケメンが全裸で現れた! 猫の余計な恩返し【マタタビ系劇薬ギャグ】
(著:関口 かんこ)
しょうがないよ、猫なんだもの
茶トラ、白黒、サバトラの3匹の猫たちと生活を共にして20年。保護した野良の子猫も、ふらりと家に入ってきてそのまま居着いた猫も、飼い主の曇った目のフィルターを差し引いても「美猫」でした。というか、だいたいの猫は美猫なんですよ。目、鼻、口、耳、そしてヒゲの完璧な比率。この生き物を作ったとき、神様はかなり気合が入っていたんじゃないですかね。野良生活を送っているすすけた猫だって、保護されて環境と栄養が改善されれば、あっという間に毛艶が良くなって魅惑の変身! 逆に猫好きにしてみれば、多少顔のバランスが崩れた猫を見つけると「まぁ、なんてブサイクなの!」って希少性が上がる始末で……、まったく猫ってやつはどんな猫もかわいいにゃーん!
『くさっても猫なので』は、人間になった猫が恩返しにやってくる漫画なんですが、この猫が無駄に美形(というか圧が強いくらい美形)。なぜ美形か? 「そりゃ、くさっても猫なので、美形なんですよ!」と説明されなくても、猫好きは首をブンブン縦に振っちゃうわけですよ。それから、いきなりの「恩返しに来たよ」ってセリフが、「それどういう立ち位置から言ってるの?」って感じじゃないですか。それ、猫の物言いですよ。鶴はそういう言い方しないです(知らんけど)。
はい! 「なんか恩返しするよ」ってふんわりしたセリフを言ってる時点で、絶対に恩返しはされないというフラグが立ちました! そうして猫のフジマル(適当に名前を付けられた)に振り回される、コワモテ作家リクローの生活がスタートします。
そもそも、“くさっても猫”でも“しょせん猫”ですから、あんまり、かしこくないです。
この「猫にもわかるように言って」ってセリフが、私のお気に入り。「察してくれよ」とか、「空気読め」とか、面倒くさい状況で言ってみたい!
猫の出てこない猫漫画
コワモテ作家と、美形男子(猫)の二人暮らしは誤解を生み、まわりの人が散々な目に遭います。たとえば、あやしげな商売をしているチンピラ二人組。警戒感などまるでない人間1年生のフジマルは、このチンピラの「おいしい話があるよ」というマルチ商法の勧誘に、「おいしい」の意味を取り違えて引っかかってしまいます。50万を払えと迫られたフジマルは……
やくざ、ねずみ、抗争、殺して埋めた……、と勘違いが暴走し話は転々。ちなみに第1巻には、このチンピラ二人組が出てくるもう1エピソードがあり、そちらでは殺人の罪を着せられる恐怖を味わうことに!
それから、別の角度からリクローとフジマルの二人暮らしを見守っているのが、BL作家コンビの玉城姉妹。
“くさっても猫”がいるお隣さんに、興味津々の腐女子姉妹。なんだか、いろいろくさってる……。そんな彼女たちが、渋オジと超絶美青年の魅惑の生活に迫るべく、手土産を持って来訪するのですが
だめー! ぶどう(腎機能障害の原因になるよ。レーズンもダメだよ)も、たまねぎ(赤血球にダメージを与えるよ。ネギやニンニクもダメだよ)も猫に与えちゃだめー! 猫を飼ってる人なら「あとチョコレートや生卵、牛乳も~!」と言いたくなるエピソード。それを独占欲だと勘違いする玉城姉妹。いい感じの男二人がいれば、なんでもかんでもそっち側に妄想をふくらませるのが腐女子の性(さが)なのでしょうか。でも、そちらの方向でこの漫画をドラマにするなら……と妄想すると、「リクローに豊川悦司? いや『極主夫道』の元ヤクザ役がハマっていた玉木宏にお願いしたい」「フジマルには板垣李光人? いや大西流星かな?」って、考え始めたら止まらないんですけど!
もうひとつ共感度が高かったのがココ!
たしかに風邪をひいたとき、猫からの好かれ具合はハンパないです! 我が家の3匹は、布団の上に中に大集合。こちとら熱で気持ちが弱っていますから、「こんな私に寄り添って……」なんて思いがちですが、猫には抗えない快適な湿度(汗で)と温度(発熱で)で集まっているだけ(まぁ、それでも心地よいのでギブアンドテイクですけど)。ただ我が家の猫はメス3匹で、人間ならハーレムでしたが、フジマルはオスですからこういう絵になるわけで、このページを見てしまったら、もうオス猫は飼えないです。
この『くさっても猫なので』は、猫漫画ではあるのだけど、極端に猫が出てこない漫画で、だからといって猫濃度が薄いかというと、猫あるあるがいっぱいの「めっちゃ、わかるぅ~」なネタだらけ。この本のフジマルはまだ若いですが、ずっと続いてイケオジ、イケ爺になった話も読みたいなぁ。
- 電子あり
ひとり暮らしの中年男子・陸郎の家に、イケメン×全裸×自称猫の超絶不審者が現れた!
最近人間の姿になれたから猫時代の恩返しをしたいと語るけど空回りばかり!
……でも仕方ありません。
だって彼は生まれつき猫なので。
レビュアー
![嶋津善之 イメージ](content/images/writer profile/simazu.jpg)
関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。
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