ちょっぴり切ないお話なのに、「こんなことがあったらいいなぁ」という女の子が夢見るシーンがいっぱい出てくる作品です。
だって、隣に住む幼なじみが、小顔で背が高いイケメンのモデル兼俳優で、一緒に登校したり、家や部屋にも自由に出入りできるなんて、想像しただけでもニヤけてしまうと思いませんか!!
天野千明(あまのちあき)と柊木昴(ひいらぎすばる)は、小さい頃から一番の仲良し。
目覚ましを5つかけても起きない昴を毎日のように起こし、何かと面倒を見ている千明は、幼なじみというだけでなく、まるで保護者のような存在になっていました。
高校でも昴は、わざわざ千明のところに教科書を借りに来るほど親しいのに噂すら立たず、陰ではこんなことまで言われています。
「つき合ってると思う?」「ないっしょ、つり合ってないもん」
これはキツい!! 何なのあの子! いつも昴くんのそばに居て!! と罵(ののし)られた方がよっぽどマシです。なぜなら千明は、昴のことが好きだから!!
しかし、昴との差はどんどん開いていくばかり。
街を歩けば、どデカい“スバル”のポスターがあり、初出演のドラマでも人気沸騰中。
学校はもちろん、街中でもスーパーでも、“スバル”の周りには人が集まって来ます。
だから千明は、昴をあきらめるために彼氏を作ろうと合コンに出かけたのですが、合コン相手の大学生に絡(から)まれたとき、カッコよく助けてくれたのは昴でした。
全然あきらめらんないじゃん!!
遠い存在になりつつある昴をあきらめようとするたびに、ちょっぴり思わせぶりな態度や言葉で引き戻される千明。
こういうときは距離を置くのが一番ですが、なにせ隣に住んでいるので、離れようとしても向こうからやってくるんです!!
こんな笑顔を見せられたら、誰だって引き戻されてしまいますよね。
しかも昴は甘え上手。わざとやっているのか、天然なのか。
まぁ、千明が幼なじみだから、遠慮なく甘えられるのでしょうが、こんな状況だったら私も絶対同じことをしてしまうでしょう。
このシーンもそうです。スバルのSNS用の写真を撮るために防波堤に行ったとき、人の気配を感じたら、やはり千明と同じように隠れるでしょう。
切ないなぁ……。
しかもスバルが、ドラマの共演者で“くそかわいい”篠原葉月(しのはらはづき)と並んだ姿がつり合っていたら、嫉妬どころか戦う以前の敗北感で惨(みじ)めな気持ちになると思うのです。
実は仕事柄、多くの芸能人と接して来ましたが、もう元から違うよね、と言わざるを得ません(笑)。
そこに、ヘアメイクが何時間もかけて綺麗にし、スタイリストが選んだ流行りの高い服を着て照明を当てたら、どんどん垢抜けて綺麗になるので、やはり芸能人は違うよね、なのです。
だからこの先、篠原葉月がスバルとどう絡んで来るのか気になります。
それにしても、こんな思わせぶりな奴なのに、昴に対して悪い感情が生まれないのはなぜでしょう。
それはたぶん、芸能人としてのスバルはクールで美しいのに、素顔の昴は純粋で何も変わっていないからだと思うのです。
餡蜜(あんみつ)先生が描く、健気で切ない千明も可愛いいのですが、昴とスバルのギャップもカッコいいので、ぜひそのあたりも楽しんで欲しい作品だと思いました。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp