2012年に日本高校野球連盟によって制定された「連合チーム」は、部員不足の学校同士でチームを組み、公式大会に出場できる制度。
しかし、その相手が野球嫌いの不良たちだったら……。
いかにして彼らを「連合チーム」に引き入れ、野球をさせるのか、この難題に真正面から立ち向かった野球バカがいました。
彼の名前は、日々野塁斗(ひびのるいと)。
塁斗が通う名門・私立常星(じょうせい)高校は、甲子園出場回数春夏通算9回、うち優勝は3回、春夏連覇を成し遂げたこともある名門中の名門。
ところが今は、難関大合格者数全国トップ10入りするエリート校で、野球部員はわずか4名。しかも1名は幽霊部員で、監督は不在。
塁斗の夢である甲子園出場は、夢のまた夢と思っていたとき、「連合チーム」に名乗りを上げたのが、関東随一の不良校、私立盟俠(めいきょう)高校でした。
彼らが問題を起こせば、即退学させることができると考えた教頭の陰謀が見え隠れします。
実は塁斗は、以前「盟俠最大派閥トップ5」である彼らに絡まれたことがありました。その時、“最凶”と言われる海原錦(うなばらにしき)から塁斗を助けてくれたのが……、
火狩将太郎(かがりしょうたろう)は、2年連続全中制覇を成し遂げ、“100年に1人の天才”と言われた人物。
しかし、暴力事件をきっかけに野球を辞め、誰ともつるまないアウトローを貫いています。
主役級のキーマン登場に、これで役者は揃ったぞ! と、ほくそ笑んでしまいます。
さてさて、これから塁斗はどんな方法で彼らを仲間にしていくのか!! と思ったら、さすが究極の野球バカです。
野球部の部室を不良たちの溜まり場にされ、ボコボコにされたのに、
「日々野くんって、けっこう頭のネジ飛んでるよね」と仲間に言われてしまうほど、塁斗は相手の良さを見つける天才なのです。
そして、なぜ塁斗がここまでできるのかというと、甲子園に出るという夢を捨てきれず「諦めが悪いから」。
このセリフは変に気負ってなくて、なんかいいなぁと思ってしまいました。
とんでもなくポジティブな塁斗は翌日、ボコられた相手である地与塚(ちよづか)を打席に立たせます。
本人は、イキってオラオラ状態なのですが、ほんの少しずつ野球の楽しさに気づいていきます。この地与塚の単純バカなところ、すごく可愛いです。
ところが!! そんな地与塚に腹を立てたのが、海原。
意外にも海原は、野球経験者であることが発覚!! 野球嫌いになった深いわけがありそうですが……。
そんなとき突然、凰林(おうりん)学園高校から練習試合の話が舞い込みます。
火狩と中学時代にバッテリーを組んでいた鷹宮蒼輔(たかみやそうすけ)が裏で動いているのですが、彼が加わったことでさらに話が面白くなりそうな予感がします。
この練習試合の話を聞いた塁斗は“チームメイト”に知らせるため、盟俠高校へ。
しかし、そこで目にしたのは「盟俠の看板を汚した」という理由で制裁を受ける地与塚の姿でした。それを見た塁斗は……。
『イレギュラーズ』の面白さは、単なる野球漫画ではなく、ヤンキー漫画もミックスされているところ。
いずれ、盟俠トップの海原と火狩の対決も出てくるでしょう。
野球シーンに限らず、不良たちの迫力あるシーンに思わず、いいぞ、いいぞ! そう来なくちゃ!! と熱くなってしまいました。
この先1人、また1人と、不良たちをどうやって“チームメイト”にしていくのか、また彼らが加わった「連合チーム」はどんな戦いをするのか、これからがますます楽しみです。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp