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2021.08.31

レビュー

イスさえあればキャンプが始まる! 経験ゼロからのキャンプデビュー!!

ソロキャンプ好きを拗(こじ)らせたおじさん・樹乃倉厳とソロキャンプやってみたい女子・草野雫が2人でソロキャンプをしていくラブコメストーリー『ふたりソロキャンプ』。
イブニングにて連載中の作品ですが、この作品は少し変わっていて、作中でテントの設営方法や焚き火のやり方、マナーなど、アウトドアのノウハウを解説しながらソロキャンプの魅力を訴えつつ、読んでいるうちにキャンプ知識が身に付くためになるお得な作品なのです。キャンプめしのレシピ紹介もあります。
そんなアウトドア入門にぴったりな作品の叡智をギュっと濃縮して、一目でわかりやすい初心者向けにまとめたソロキャンプガイドブックが、本稿で紹介する『ふたりソロキャンプ公式はじめてキャンプ』です。

夏といえばアウトドアアクティビティ!ですが、2021年の夏はステイホームの徹底で旅行にも出かけられず、友人とBBQをしたりキャンプに行ったりすることも憚(はばか)られる風潮でしたね。
昨年から続くこの状況ですが、昨年の段階では「旅行できないならば近場でキャンプだ!」とギアを揃え、アウトドアに目覚めた人も少なくないんじゃないでしょうか。
しかし今年は去年よりも世間の風潮は厳しさを増し、せっかく目覚めたアウトドアの楽しみに友人や仲間を誘って出かけづらくなっていたと思います。
そんなご時世だからこそ、『ふたりソロキャンプ』が作中で教えてくれた、仲間と大勢で楽しむだけがキャンプの楽しさじゃないよ、1人(ソロ)でキャンプをする楽しさも同じくらい素敵だよという提案にのってみる時です。

本書は「3ステップ理論」という方法を提唱しており、いきなりあれもこれもと詰め込まず、少しずつ体験を積み重ねてひとり立ちできるようにガイドしていきます。

 

「まず日帰りでキャンプする」→「とにかく一泊してみる」→「テントで泊まる」
たったこれだけですが、いきなりテントで泊まることを考えがちな初心者が多いなかで、一つ一つ実績を積んでいくこのやり方はシンプルながら試しやすく親切だと感心しました。

私はかつて、自転車にテントとシュラフなどを積んで日本をぐるっと回った経験がある「ソロキャンプ経験者」なんですが、私のような中途半端な経験者にキャンプ入門を聞くと、凝り固まった価値観でこんなシンプルな提案はできないと痛感しましたからね。
だって、個人的にはデイキャンプ場でイスとテーブルでぼんやりするなんてキャンプじゃないでしょ?(笑)っていう先入観がありましたから。

そんな固定観念があったので、「イスさえあればキャンプが始まる」。この見出しに目から鱗が落ちました。

アウトドア用のチェアとテーブルをサクッとザックか手提げ袋に突っ込んで、リラックスできる服装で現地に向かいましょう、ダラダラした贅沢な時間を過ごせばOKだなんて、ここまで割り切って背中を押してくれるアドバイスができる人はなかなかいないんじゃないかと思います。

まずイスとテーブルの最小構成を案内して、タープもあれば嬉しいし、食器や調理器具があるともっと楽しいよ、という気負いがない紹介の仕方なので、あのギアを持っていないとかいった引け目を感じないで挑戦できるのではないでしょうか。
そしてコミック本編に登場した料理の中から、デイキャンプでできるキャンプめしレシピの紹介と続きます。野外料理研究家のベアーズ島田キャンプ氏による再現レシピは普通に使い勝手が良さそうで、キャンプじゃなくても活躍しそうな完成度です。



ピクニック感覚でデイキャンプから始めて、デイキャンプに物足りなくなったらコテージ泊に挑戦して、そしてテント泊へと少しずつ経験と体験を提案していくやり方は読めば読むほど合理的で、そして優しさにあふれています。

そして、近年よくニュースにて取り上げられる、焚き火やキャンプのマナー違反。
アウトドア人口が増えたからか、マナーの悪い人間も相対的に増えてしまうのでしょうが、マナーを守れない人間にキャンプを楽しむ資格はありません。
コミックス2巻で、「自分たちの遊び場を自分たちで荒らして使いづらくするなんて馬鹿みたいじゃないか」と厳さんが雫にマナーについて伝えるシーンがありますが、当たり前のことを当たり前にやれて始めて一人前のキャンパーですから。
もちろん本書はキャンプの後始末のやり方や焚き火のマナーなど、一通りの行程が1冊で確認できるよう解説されているので、実際に1人でテント泊する際に本書を忍ばせておけば困ることはないでしょう。



そして、本書で解説されている内容は本編の作中でより詳しく解説されているので、合わせてコミックスを読むとより理解が深まること間違いありません。
真夏のキャンプはやっぱり暑いから、これから訪れる秋口がキャンプのベストシーズンです。きっとその頃には今よりも少しは遊びに行きやすくなっていることを願って、本書を片手に準備しておきたいものですね。

レビュアー

宮本夏樹 イメージ
宮本夏樹

静岡育ち、東京在住のプランナー1980年生まれ。電子書籍関連サービスのプロデュースや、

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