大人になり、ある程度の年齢になると誰もが恋愛経験があると思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。
恋愛経験ゼロの美男美女が初めてお付き合いをすることになったら、一体どんな恋愛になるのかというと……、限りなく甘くてピュアな恋愛になるのです。
藤崎麗香(32)は、どこから見ても隙がないモデル体型の超絶美女。コンビニスイーツを扱う会社の企画開発部課長で仕事もデキるため、使えない部下に対して厳しい態度を取りがち。
そのため周りから、こんなふうに見られています。
たいして話したこともない赤の他人に、勝手にイメージを作られるのは腹立たしいものです。
でも、わざわざ否定したり反論するのも面倒なので、麗香は敢えて人を寄せ付けず、イメージ通りに振る舞っているようにも見えます。
ところが本当の麗香は、こんな人間なのです。
1人で過ごす充実した時間を持っているから、麗香は美しいのではないでしょうか。
この麗香の趣味である成りすましエッチブログがきっかけで、苦手意識を持っていた「眉目秀麗の敏腕部下」で「完璧王子」と呼ばれている長谷川司(27)と次第にお近付きになっていくことになる麗香。
ところが女性馴れしているように見えた長谷川くんも、実は女性経験なし。
2人とも異性とのお付き合いが初めてなので、やる事なす事ぎこちないったらありゃしない。
例えば、付き合うことが決まってから「ライン教えてください」って、順序が逆でしょ!と言いたくなるし、「じゃあ…これから よろしくお願いします」と長谷川くんが常に丁寧語なのも上司と部下そのもので笑えます。
麗香を呼ぶときも「課長」ですからね。
麗香も麗香で、わざわざ資料室に長谷川くんを呼び出し、「ルールを決めない?」と言い出します。
麗香の頭でっかちな自制心と、初めての恋にトキメキ戸惑っているギャップが凄く可愛い!
ある日長谷川くんと飲みに行った麗華は、飲みすぎて記憶が飛んでしまいます。目覚めたら半裸状態で長谷川くんと寝ていたとなれば、自己嫌悪で落ち込むのも無理はありません。
人には見られたくない部分を見られたことで、麗香は初めて偽りの自分ではなく、本当の自分がどんな人間かを長谷川くんに告白します。
この時の長谷川くん、いい奴なのです!
『スイーツは定時のあとで』は、麗香の視点で描かれているのですが、単行本の描き下ろし「まだあった長谷川くんの話」は長谷川くん視点で描かれていて、これがまた凄くいいのです。
長谷川くんはあの時、こんなことを考えていたのか、とわかるので。
何から何まで初々しい2人も、れっきとした大人。これからどんな大人の恋愛に発展していくのか、楽しみにしたいです。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp