まじめで誠実。そしてむっつりスケベ
『まじめに不純異性交遊(まじめにおつきあい、と読みます)』の面白さと可愛らしさをどこから紹介しようかすごく迷う。
まじめで誠実な大学生と「清らかに」お付き合いをしている17歳の“美波”はキスすらまだ知らず、これからいかにして彼との仲を深めてゆくか……読んでるこっちもフルフルと緊張してくる物語だ。
フルフルしながら、やがて「“不純”ってなんなんだろうね!?」と言う気持ちになってくる。どこを探しても不純が見つからなかった。
「私がもってる漫画ではこの手のお誘いは十中八九枕を交わす」と1人正座してつぶやくスケベな女の子のどこに不純があるんだろうか。「枕を交わす」って綺麗な言葉……。
ということで「私がもってる漫画」の話から始めます。
そうゆうことしたいなんて、言える訳ない
厳格な家庭(父親が鬼厳しい)で育った美波は、バイト先の大学生“藤堂さん”とお付き合いを始めて3ヵ月。藤堂さんは優しい彼氏で、美波にガバッと覆いかぶさることもなく、いたって紳士。
そんな藤堂さんに言えない秘密が美波にはあって、それは「小6の頃からHな漫画が大好物で、むっつりスケベ」だということ。
このページが好きすぎる。グッと親近感を呼ぶ主人公。しかしめっちゃ漫画積んでるね!?
そう、美波は、藤堂さんとのお付き合いにおいて、漫画で培った性愛の知識が破裂寸前なんです。日夜エロ漫画を読み返し、登場人物と自分を重ね合わせ……そんなこと藤堂さんに言える? 言えない。言える訳ない。
だって藤堂さんは美波を「純粋な子」と呼んでいるから。バイト先で広げられたエロ本(といっても着衣のおっぱいグラビア)すら美波の視界からブロックする始末。
いろんなことがしたい。でも言えない。思春期真っ只中で揺れまくる美波の心と表情が優しくコミカルな視点で描かれています。そして美波はものすごいことを願うんです。
このページがすごくショックというか、次のページになかなか進めず「降参です」と思った。「むっつりスケベな私」は、好きな相手の前で裸になるよりも先に伝えたいこと。ほんと降参。読んでよかった。
私はこの漫画を紙で読んでいますが、電子版で次のページをフリップして「心ん中 全部」のコマを読んだら心底ビクッとしたと思いますし、いま紙で読み返してもここの大切さや美波の真摯さにノックアウトされます。しかもこれまだ第1話。こんな純度の高い答えが出ちゃってるのに、この先どうなっちゃうんだよ。
恋愛の経験値
美波がむっつりスケベであることは、とある大変な事件により藤堂さんの知るところとなります。そしたらなんと藤堂さんも美波に負けず劣らずのむっつりスケベ(且つ童貞)であることが判明!
藤堂さんが思い切って打ち明けると……!?
美波も即答。よかったね! あとは楽勝か!?
いや、大変なのはここから。「それ」をどう実行していけばさっぱりわからないんです。そもそもお互い「実はエロいこといっぱい考えてましたーっ!」が3ヵ月も明らかにならないレベルなわけで。
ということで、まじめな不純異性交遊のステップアップ作戦が始まります。2人はそろりそろりと階段を登り、ちょいちょい転げ落ち、悩み、ほんと大変。でもうらやましい。
「いけ! そこだ!」と応援したり、一緒に赤面したり、胸が熱くなったり……ああ、息つく暇なし。不純異性交遊っていいところがいっぱいだなと思う作品です。いつか2人が「そうゆうことをする関係」になるのが楽しみ。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。