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2020.01.03

インタビュー

『東京卍リベンジャーズ』『新宿スワン』の和久井健が語る漫画作りの極意!!

八戒のデザインは、世の中のおしゃれ坊主と、和久井先生のアイデアが融合して生まれた。

──キャラクターを作る時は、まず外見のデザインから考え始めますか? それともキャラクター設定から考えていますか?

和久井先生: キャラ作りでまずやることですか……。あ、でも僕は、そのどちらでもないですね。そもそも、キャラクターだけを独立して考えることはしていません。

──ええっ!? それでは、和久井先生は一体何から考え始めるのでしょうか?

和久井先生: それは、ずばり“役割”です。まず、そのキャラクターが作品の中で、どんな役割を持つのかを考えます。話の展開を先に決め、例えばその中で、「物語の鍵を握る、不良グループのトップでめちゃくちゃ強い奴を登場させよう。じゃあ、そいつはどんなキャラにすればいいだろう?」という感じです。
ネームにおいて、こういう役割のキャラが欲しいというのが先にあって、それに合わせてキャラクターを作っていますね。そうすることで、今この漫画に足りない要素を持ったキャラを生み出すことができ、漫画全体のバランスも良くなります。

──なるほど! 役割を先に決めて、そこから設定やデザインを考えるんですね。では、役割が決まった後のキャラ作りの進め方についても教えてください。まず、キャラ設定についてですが、和久井先生は最初にネームを作る際、どれくらい細かく決めていますか?

和久井先生: ネームの段階だと、キャラクターの設定は、ほとんど決めていません。後々変えたい方なので。僕も新人の頃には、先に設定を決めて、キャラクター像を固めていました。
でも、そうすると、担当編集のアドバイスがすべて文句に聞こえてしまうんですよ。だから、設定はあまり初めから考え過ぎず、他人の意見を取り入れながら作っていった方がいいと思います。

──それでは次に、キャラクターのデザインを考える際に、何か参考にしているものがあれば教えてください!

和久井先生: 外見のデザインであれば、ネット上で画像を探したりして情報収集するのも一つの手ですよ。

──ネットで画像検索をするんですか?

和久井先生: もちろん、そのまま真似することはありません。例えば、「イケメン」と調べて出てきた画像一覧をぱーっと見て、それを自分の頭の中で混ぜ合わせてデザインを考えたりしています。
八戒というキャラクターのデザインは、実際に坊主頭に模様を入れている人を参考にして、そこにオリジナリティとして渦巻き模様を当てはめて作りました。自分の頭の中だけで考えるのではなく、現実にいる人やものを参考にすることも大切ですよ。

『東京卍リベンジャーズ』

不良たちが一斉に挨拶することで、この2人が只者ではないことが分かる。

──キャラクターの初登場シーンは重要です! 何かコツはありますか?

和久井先生: モブキャラをうまく使ってあげることが、とても重要ですね。

──モブキャラ……ですか? 具体的には、どう使えばいいんでしょうか?

和久井先生: 例えば、ドラケンとマイキーの初登場シーンでいうと、彼らが強くてすごそうなキャラだと感じるのは、周りのモブキャラのリアクションのおかげなんですよ。

──確かに、強面の不良たちが一斉に頭を下げたシーンは、とても印象的でした!

和久井先生: だから引き立て役は、漫画においてとても重要な役割を持っています。どんな話を作るにしても、“キャラクターはスタジアムの中にいる”と意識するくらいに周りの反応を描いてあげると、メインキャラクターの登場が、より引き立つと思います。

『東京卍リベンジャーズ』

「キャラを捨てられない」人が多くて逆にもったいないですね。

──引き立て役を上手く使うという話でしたが、読み切りを作るうえでは、どんな意識を持って描くべきでしょうか?

和久井先生: 極端な話をすると、特に読み切りは主人公以外、全員引き立て役でいいと思っています。主人公を魅力的に見せるためだけに動いているようなサブキャラが、物語には必要なんです。新人さんの漫画を見てると、「キャラを捨てられない」人がけっこう多くて逆にもったいないですね。

──「キャラを捨てる」!? 一体どういう意味ですか?

和久井先生: 物語の中で引き立て役に徹してもらうということです。新人さんの漫画でありがちなのが、主人公以外のキャラにも見せ場を作ろうとして、必要以上にページを割いてしまうことです。そうすると、結果的に主人公の印象が薄くなったり、物語のメインテーマがわかりにくくなってしまうので、気をつけてください。

「表情」を描くのが上手いかどうかが大切

──魅力的なキャラクターを描くには、画力の向上も欠かせないと思います。新人漫画家さんが画力を上達させるために、いい練習方法はありますか?

和久井先生: それはすごく難しいですね。どうすれば上手くなるかは、その人によって違いますし。そもそも、絵が上手いってそんなに重要なんですか?

──といいますと!?

和久井先生: いわゆる美術的な絵の上手さ下手さというよりも、「表情」を描くのが上手いかどうかが大切な気がします。読者は、まずキャラクターの顔に注目しますから。
もちろん、表情一つとっても、すごくバランスが大事で、1ミリでも線がずれると、違う顔になります。こればかりは、どれだけ描くか、練習量がものを言うんじゃないでしょうか。

──では、和久井先生が決めゴマ(物語の山場など、読者の注目を集めるため通常よりも大きいコマ)で読者を惹きつける表情を描くため、やっていることは何ですか?

和久井先生: キャラクターの感情になりきることです。だから僕、キャラクターが泣くシーンは自分も泣きながら描いてますよ。それに、キャラが怒るシーンは僕も怒りながら描いてます(笑)。
ネームで何度も同じ表情を描いてると、マンネリ化するじゃないですか。だから、読者の感情を揺さぶる表情を再び原稿上に描くためには、そのマンネリを越えるくらい、こっちが思いっきり感情を乗せて描かないとダメなんです。

──とても興味深いお話でした! 他に、表情を描く際に工夫していることはありますか?

和久井先生: 目線の向きは工夫しています。見得を切るシーンの目線は、真正面を向かせていますが、感動するシーンや泣きたいシーンなんかは、目線を斜めに逸らすようにしています。

──なぜ、そうしているんですか?

和久井先生: 泣かせたいシーンでカメラ目線だと、ドキッとしちゃって読者は泣けなくなるんですよ。それとは逆に、見得を切るシーンでは、読者をドキッとさせて欲しいから、正面を向かせています。目線一つで演出が変わるように、表情だけでも数多くの表現ができるので、1話ごとに工夫を続けています。

『東京卍リベンジャーズ』

タケミチが未来を変えるため、強敵に立ち向かうシーン。真っ直ぐにこちらを見つめる表情に、思わず心を揺さぶられる!

『東京卍リベンジャーズ』

タケミチがタイムスリップした先で、ヒナタと再会するシーンでは、目線を逸らして感動をさそっている。

新人時代は週に1本30ページ程度の原稿を描いていた。

──では最後に、漫画家を目指す皆さんに一言お願いします。

和久井先生: 将来的に、プロの漫画家として週刊連載を目指すのであれば、毎週1本ずつネームを作る努力をしましょう。例えば、僕は新人時代、週に1本30ページ程度の原稿を描いていました。

──それは、とても大変そうですね……。

和久井先生: もちろん、すごく大変です。しかし、そうしたノルマを自分に課し、多くの作品を描き上げることが、後々自分の力になると思います。
そして、頑張って完成させた作品は、とにかく他人に意見をもらってください。1人で悩むよりも、他者から見た自分の武器や弱点を自覚し、次の作品に臨むことで、大きな成長に繫がるはずです。頑張ってください!

※この記事は「週刊少年マガジン」に掲載されたものを改変して掲載しています。

『東京卍リベンジャーズ』

花垣タケミチは、中学時代に付き合っていた人生唯一の彼女・橘ヒナタが、悪党連合“東京卍會”に殺されたことをニュースで知る。 壁の薄いボロアパートに住み、バイト先では6歳年下の店長からバカ扱い。極めつけはドーテー……。そんなどん底人生まっただ中のある日、12年前の中学時代にタイムリープする! ヒナタを救うため、逃げ続けた人生を変えるため、ダメフリーター・タケミチが、関東最凶不良軍団の頂点を目指す!!

和久井健

2004年『新宿ホスト』で第293回ヤングマガジン新人漫画賞佳作を受賞。その後、2005年から「週刊ヤングマガジン」にて『新宿スワン』を連載。2015年には「週刊少年マガジン」で『デザートイーグル』を連載。2017年から『東京卍リベンジャーズ』を連載中!

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