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双子の「美人じゃないほう」の私が恋をした──双子が織りなすコンプレックスラブ

くらげと珊瑚(1)
(著:仲藤 ぬい)
2022.11.05
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美人な妹と、そうじゃない私

胸がざわつく。でも読んじゃうし、誰のこともきらいになれない少女マンガです。たぶん私は誰にも見られたくないようなものすごい顔をしながら読んでたと思う。

『くらげと珊瑚』の主人公・“海月(みつき)”は、好きな人が「一緒に帰ろう」と言ってくれたのに、素直に喜べません。



だって「妹さんと3人で」だから。海月の妹・“珊瑚(さんご)”は、海月と同い年。2人は双子です。



2人は双子だけど、制服の着こなし、歩き方、髪型、言動、ぜんぶちがいます。そして珊瑚のほうが勉強もできるし、華やかで美人。対する海月は内気で真面目。海月にとって珊瑚は、かわいい妹であり、胸をざわつかせる悩みの種でもあります。



同級生の“朝凪くん”に恋をしている海月の視界には、いつも朝凪くんと珊瑚がいて、朝凪くんとなかなか2人きりになれないし、なんなら珊瑚のほうが朝凪くんと仲がいいような……? いつも絶妙なタイミングで珊瑚ちゃんが場をかっさらうんです。海月はこうやって自己嫌悪でしょんぼりしていますが、「ごめん珊瑚ちゃん、ほんと邪魔だよ」って私は何度言ったことか。で、言っちゃったあとで「でもなあ……」って悩んじゃう。




いやでもやっぱり、そこでナゼ珊瑚ちゃんが返事をするの? ナゼ?

べつに嫌いなわけじゃない

心の底でくすぶる劣等感や嫉妬心なんて、できれば見たくないし、気がつきたくない。でも珊瑚ちゃんと一緒にいると海月はどうしてもうつむいてしまいます。『くらげと珊瑚』の1巻では海月の葛藤をうまーく描きます。ここまでコンプレックスをかき立てる少女マンガってそうそうない。



自分の名前が超気に入ってるって堂々と言える女の子っていいな。珊瑚は海月を「みつき」じゃなくて「くらげちゃん」とオリジナルのあだ名で呼んでいて、そのあだ名もお気に入りで、学校でも「くらげちゃん、くらげちゃん」と連呼してます。ぽよんとかわいい名前だけど海月はちょっと複雑。

海月のコンプレックスを刺激することはまだまだあります。海月は、中学の頃から好きだった朝凪くんと同じ高校に入りたくて、一生懸命勉強して合格しました。そんな高校で、中間テストの上位成績者になったのは……?



珊瑚ちゃん。海月は自分に双子の妹がいることをあまり知られたくありません。なぜなら珊瑚ちゃんは超問題児だから。



成績優秀で美人だけど先生から怒られまくるし、そんな調子だからクラスでも浮きまくってて友達がいない。で、ことあるごとに海月の教室に遊びに来ては海月にくっついてます。



うれしそう。海月に双子の妹がいると知った朝凪くんも「妹さんもどう?」ってすぐ誘ってくれて、3人で行動することがとっても多いんです。

ちなみに珊瑚は海月の朝凪くんへの気持ちを知っています。入学初日に即気がつきました。さすが双子。



協力してくれているようだけど、ことごとく裏目に出てしまって、海月はうんざり。



何にうんざりって、自分に一番うんざりするんですよね。嫉妬は、される側よりもする側の問題であって、だからこれは空気が読めなくて場をかっさらう珊瑚ちゃんの問題ではなく、まずは海月の問題なんです。

それに、海月の恋心だって海月のもの。朝凪くんは海月のことを見ていない? いいえ。



朝凪くん、ちゃんと海月のこと見てる!



朝凪くんは、珊瑚が海月の妹だから、珊瑚のことを海月と同じように大切にしたいようです。ね、朝凪くんの言葉を聞くと「なーんだ」ってなるでしょ?



とはいえ、2人がいい感じになったときに必ず現れる珊瑚。ナゼ!? 天才的に間が悪いのか、それとも何か事情がある……? 私は珊瑚の気持ちを聞いてみたいよ。珊瑚には、海月にも言ってないこと、いろいろあるんじゃないかな。2巻待ってます。

  • 電子あり
『くらげと珊瑚(1)』書影
著:仲藤 ぬい

白波瀬海月、高1。どこにでもいる16歳。
でも双子の妹、珊瑚は美人で頭もいいのに、なぜか問題児。
嫌いじゃないけど破天荒な珊瑚に振り回されてばかりでちょっと複雑。

珊瑚に対して悩みながら生きてきたけどこの度、恋をしました―――。

双子が織りなすコンプレックスラブ第1巻。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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