今日のおすすめ

「なろう」じゃないラノベがよみたい! そんなあなたにオススメ新刊をご紹介!

講談社ラノベ文庫10月刊のラインナップを一挙ご紹介! 校了を担当のここだけ秘密コメント付き!

イノヤス

講談社ラノベ文庫編集長(であるらしい)。月刊少年マガジンに約20年在籍後ラノベ文庫へ異動し現在に到る。頭の中身は自称永遠の17歳だが頭の外側は……!?という、ドラえもんのいないのび太、みたいな感じのおっさん。編集者としてのモットーは「相手の技は必ず受けろ!」、身につけたい能力は「速読」、異世界に行ったら「蕎麦屋」をやりたい。一度言ってみたい台詞は「どうしたんだ、顔が赤いぞ。熱でもあるのか!?」

大ちゃん

講談社ラノベ文庫編集部校了担当者。またの名を金剛寺大三郎。軍手とガムテと段ボールが似合うナイス・ガイ。講談社ラノベ文庫の新刊を責任持って校了してますが、やたらフセンをいっぱい貼って返してくるのでうっとおしいみたい。「笑ったとこにいちいち『(笑)』っていうフセン貼ってくんの、どうなんすか」(編集部員・談)

2018.10.18
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超越しているのだ!

『終末のアダム』書影
著:榊 一郎 イラスト:藤城 陽
イノヤスコメント

ラノベ業界は、一般的なテキストエンタメ業界に比べると「流行に敏感」でなければならず、また実際に流行の移り変わりが激しい世界なんだなと、こちらの世界に来てまだ10年にも満たない自分ですらも思います。思えばラノベというものが仕事になる前、個人的に楽しく読んでいたころは「ラブコメ」全盛期でした。そしてこの世界で仕事をするために流れてきてからはいつの間にか「異世界ファンタジー」や「なろう」の時代に、どこが分水嶺なのか確定できないのですが、いつの間にか変わってきていたなあといった印象があります(新参者ゆえ分析が甘いのかもしれませんが)。

ただ、流行というものは次の流行にいつの間にかとって変わられるという原理原則だけは不変なのではとも思います。今日の時代遅れは明日の最先端かもしれない、大きならせん階段のようにあるいは進歩してあるいは気づかず後退する時がありつつも進んでいっている、体感できない流れ、この矮小な身では如何ともしがたい潮流を無視してのエンタメというものは存在しえないのでしょう。

さて、当作品はそんな「時代の潮流」をある意味超越した作品なのだということを、校了しながら強く思った次第であります。どこかで過去に読んだことがあるような感覚……それはかつて「ライトノベル」というカテゴライズがなかった時代の経験だったのでは、と思いつつ読み進めていくことができました。「普遍」もしくは「不変」というものは存在するのだ――たとえそれが流行に寄り沿う宿命を義務づけられた「ライトノベル」というジャンルであっても!!

主人公は異能を所持し、その力を巡っての争いが起きていく、物語を入れる大きな枠組みが世の中の進み具合によって変わっていくことはあるかもしれませんが、大きな構造自体はこれからもきっと変わらないんだなあ、変わるところと変わらないところを、きちんと見極めていきたい、この作品のように……ということを再認識しました!

考えてみれば、弊社の漫画誌「イブニング」では『クラッシャージョウ』をやってたり『魚紳さん』のお話をやってたりするわけです。ああ、昔の自分に教えてあげたらきっとぶったまげるだろうなあ……。面白いこと、わくわくすること、強さにあこがれること、こういったところは今後も不変であるのだと思います。その変わらないことを信じて物語を世に問うていきたいと、そんなことを思わせられた偉大な作品でありました!!

老女も幼女もみんな女子なんだよ!

『じゅっさいのおよめさん』書影
著:三門 鉄狼 イラスト:ふーみ
イノヤスコメント

ずっと以前のお正月のことです……帰省したとき、とある親戚の女の子がなぜか自分のクルマに乗りたがっていたので、せっかくだからとちょっとしたドライブがてらに助手席に乗せて出かけてみました。

彼女としては特にどうということもなく、ただクルマに乗ってみたかったのかなーなんて思っていたら、ふとしたタイミングで急に……、「ねえ、聞いてよ~実は……」。いきなり「恋バナ」を始めたのです。まさか10歳の女子に突然自身の恋バナを聞かされるとは思ってもいなかったのでびっくり。まあともあれ聞いてみると、その内容は──「自分のことを好きな男子がいる」とか「好きな男子が他の女子とかぶって大変だった」とか……。うーん妙齢の女子に相談されそうな内容と全く変わらなかったのでほぇーっと思い、道すがら話を聞き続けることになったのです。

そう、女子には年なんか関係ない、男と違って、すぐ精神的におとなになっちゃって、永遠にそのままなんだろなー、と関心した記憶がありました。結局そのコは恋バナを聞かせるためにクルマに乗りたいといったんだろうか……。そこは今もって不明なのですが。──そんな彼女も、今では立派な◯◯なのです、時の流れは速いもんです。親戚の子供はすぐ大きくなってしまうっていうのはホントなんですねえ……ハァ。

話は例のごとく飛びまして、当作『じゅっさいのおよめさん』につきましてです。タイトル通り10歳の見知らぬ美少女が、ひと夏の押しかけ女房になって主人公・誠二のところにやってくるお話であります。なぜ誠二のもとにやってきたのか、そして忘れられないひと夏の行方は……甘く苦くそれでもこれは運命なのだ! と強く感じられる素敵な物語をぜひ体感していただければと思います。それにしても著者の三門鉄狼先生の多芸多才っぷりがすごいなと改めて思いました。全方位の語り部として、ますますご活躍いただきたいです!!

押しかけヒロインだけど、ただの押しかけじゃない!

『めんたるあぷりけ~しょん』書影
著:ひなた 華月 イラスト:花ヶ田
イノヤスコメント

押しかけヒロイン、というのは永遠の定番なのでしょうか? 主人公を好きになってしまい好きすぎてそのままいっしょに暮らそうとしてしまうという……端から見たらホントにうらやましい環境だと思うのですが、そこはもう、オッサンたる自分としましてはですねえ……「どんなにかわいくても毎日一緒に他人と生活するのは、大変なんだよなーフゥ」とついつい思ってしまうわけなのです。現実の世知辛さを思い起こすに、それ故「押しかけ女房」は永遠のファンタジーなんだろなあ。──と至極当たり前の感想を抱きつつ、当作を読んでみますと、起動させると主人公である景吾くんを好きになってしまうアプリがありまして、そのアプリのせいで、景吾くんは奏ちゃんというヒロインに好かれて、結局一緒に暮らすことになってしまうんですね(高校生のくせに、ってそういうこといったら世の多くのラノベを憎まなくてはならなくなっちゃうなあ、それはだめだな)。

でもって、あれやこれが起こってこのヤロー憎いねえってイベントがおこるのかなーと思うと……ところが、想像以上の事件が起きていって、当初の予定からは思いもしなかった出来事と展開ではらはらびっくりの連続……いやあ校了しつつ驚きの連続でありました。でもって最後にはみんな……!? いい意味での驚きの展開、あのキャラが実は、といったエピソード満載の当作品。ああ、詳しく書いてはいけないのがとてももどかしいのであります! 著者のひなた華月先生のこころに存在しているところの、デビュー作以来の「志」は当作でも健在です。以前の作品を読まれた方にもクスッとくるような部分も出てきたりして。お初の方にもおひさの方にもおすすめの、ただの押しかけじゃない当作ぜひお手にとってご堪能ください!

水と星空の果てから何かが道をやってくる

『白翼のポラリス2』書影
著:阿部 藍樹 イラスト:やすも
大ちゃんコメント

第6回講談社ラノベ文庫新人賞佳作受賞作のシリーズ第2巻、お待たせしましたの登場です。ほんとに待ってた人、けっこういたでしょ。大ちゃんもです。

すべての国家は海に浮かんで海流に流されている“船国”の世界。骨太の物語です。浮わついた話ではありません。船は浮いてますが。重厚な世界観と言いますか、水も漏らさぬ世界設計です。まわりは水だらけですが。これさあ、面白いに決まってんじゃん。すべてが船単位の世界で、その間を飛び交う飛行機が主役で、実は北の果てに浮いていない陸地ってのがあるらしいぞ。ウソだあっ。飛行機を飛ばす謎のエネルギー機関を持ち込んだのが伝説の“○の○”。なんですと?? えっ、自走する船があるだと? そこへ『遺跡』と呼ばれる地下構造物。北の果てに飛んでって行方不明になった父親から極秘ミッションが!? この設定でどうやったらつまんなくなるのっていうくらい。そしてですよ、登場人物のそれぞれが、よくもまあいろいろありそう。全員に外伝ができそうな感じ。

〈「ほんとどうなってんだろうね……この永久機関ってやつは。一体誰が、こんなの作ったんだろ……〉

もうですね、SFマインドが刺激されることおびただしい。「なんか、ややこしい話はやだなあ」とか思ってる生徒諸君。悪いことはいわんのバカ。ぜんぜんややこしくないから。本作カバーやカラー口絵の素晴らしい星空をご覧くださいよ。ちょっとでもこれに吸い込まれそうになったナイス・ガイは必読です。1~2巻一気読みも可。そもそもさあ、この世界って誰が作ったんだ? そういうこと言っていいかどうかアレだけど、アンチ・ライトなライトノベルってことで超おすすめ。なんならハリウッドからのオファー待ったなし。 

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