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【ラノベ新刊プッシュ】異世界支配のスキルテイカー、待望のあは〜ん成就キタ?

講談社ラノベ文庫9月刊のラインナップを一挙ご紹介! 校了を担当のここだけ秘密コメント付き!

イノヤス

講談社ラノベ文庫編集長(であるらしい)。月刊少年マガジンに約20年在籍後ラノベ文庫へ異動し現在に到る。頭の中身は自称永遠の17歳だが頭の外側は……!?という、ドラえもんのいないのび太、みたいな感じのおっさん。編集者としてのモットーは「相手の技は必ず受けろ!」、身につけたい能力は「速読」、異世界に行ったら「蕎麦屋」をやりたい。一度言ってみたい台詞は「どうしたんだ、顔が赤いぞ。熱でもあるのか!?」

大ちゃん

講談社ラノベ文庫編集部校了担当者。またの名を金剛寺大三郎。軍手とガムテと段ボールが似合うナイス・ガイ。講談社ラノベ文庫の新刊を責任持って校了してますが、やたらフセンをいっぱい貼って返してくるのでうっとおしいみたい。「笑ったとこにいちいち『(笑)』っていうフセン貼ってくんの、どうなんすか」(編集部員・談)

2018.09.14
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いつもどおり

『異世界支配のスキルテイカー9 ~ゼロから始める奴隷ハーレム~』書影
著:柑橘 ゆすら イラスト:蔓木 鋼音
イノヤスコメント

新しいお店を開拓しようとしてるはずなのに、さんざん迷ったあげく結局いつもの店で食べてしまう人っていませんか? ──実は自分もそうでして、大好きなものだからこそなのか、いつもと同じ店にどうしても足が伸びてしまうのです……。

たとえば準ホームたる池袋はラーメン激戦地らしく、新機軸を打ち出したお店がよく出店しているので、新しい美味しさを探究してみようとはするのですが実際行ってみると「桂花、リンガーハット、一蘭(なんで最近混んでるんだろ?)天下一品、隣駅だけど大勝軒」といったところを永遠にループしている感じなのです──でもって「ああ、今日も新しい味に挑めなかった……新しいものについて行けないのは年寄りの証拠だゾ!」と反省するというところまで含めて完全なルーチンになっていまして……。

とはいっても、馴染みの味って大切なんですよ。絶対外さないし、必ず自分がツボにはまるポイントに、きっちりはまれる味になってるわけだから、そもそも好きで食べてるんだし何が悪いんだYOYO! 今日も天一で身体をこってりさせてやるぞーっ!! と開き直った心情のこの頃であります!

ということで、ラノベ文庫の大定番ともなった「異世界支配のスキルテイカー ~ゼロから始める奴隷ハーレム~」安定の読み応えでいよいよ9巻が発売になりました──でも今回は少しテイストがいつもとかわっていて、人のために積極的に動くことはあまりないはずのユートくんが(巻き込まれて人のために動くことは多々あるけれど)シルフィアの故国を救うために自ら動きます……とはいえそこはユートくんなのでオチそうでオチないあの女子と、少し変わった感じであはーんなイベントが発生してますのでそこはご安心を。個人的に少し悲しいのは、《近衞流體術》があまりフィーチャーされてなかったことかなあ……自分、もっと見たいです、近衞流!!

明日はどっちだ、ジョー! にゃんて言ってる場合ではないんだじょー

『わんでいりぴーと!』書影
著:川田 戯曲 イラスト:切符
大ちゃんコメント

放課後の屋上。告白した。してしまった。返事キタ。

「私……顔面がジャガイモみたいな人とは、付き合えません。」

ゲロが出るかと思った。ガッデム! なんちゅーイヤな女だ、ブル・シット!! そう思われる方も多いでしょう。ちなうんですちなうんです。ほんでね、彼女を振り向かせようと、このジャガ太郎くんがあれこれ奮闘するんですが、じゃあ単なる学園ヒロイン攻略ストーリー? ぜっんぜん違います。こわれた時空を乗り越える話!? あ゛あ゛ー、これ以上はしゃべれません。くっそ面白いぞこの話。シットだぞ、ブル中野。実はねえ、恒川光太郎ミーツR・F・ヤングとか藤子不二雄ミーツ武田鉄矢とかまるでピンボケなこと言ってお茶をにごそうかとも思ったんですが、丸出だめ夫。とにかく校了者目線で読むのが無理くりだった、面白すぎて。この彼女のキャラもどんどん変わっていって、というより暴かれていって、くーっ。しかもサブ・ヒロイン(?)は、やたらゲロ吐く女(笑)。

改めてご紹介。本作は、第4回講談社ラノベ文庫新人賞出身、川田戯曲最新作。前作とはぐっと趣を変えて、ラブラブでコメコメした舞台に怪奇世界観をまぶしてみたりみなかったり。何度も爆笑させていただきつつ、“どこに着地すんのよこれ?”というリーダビリティが強烈でございます。切符さんのイラストもなんてまあ秀逸。女の子ももちろん、巻頭カラー口絵の主人公SDもかーいー。

唐突ではありますが、本作にちなんで大ちゃんの人生相談術というのをお教えします。

人生を好きなところからもう1回やれるとしたら、どこからやりますか? 高校時代が楽しかったから……でももう1回大学受験はいやだなあ。じゃあ大学時代? また就職活動をやるなんて冗談じゃねえな。ほんなら新入社員時代? うげえ、死んでもやだ。いろいろ考えたら、今がいいや、そう思ったあなた。たいへんだったな。頑張ったな。いつか生ビールおごるわ。

夢のあとさき

『銀色の月は夜を歌う』書影
著:望月 唯一 イラスト:うみの みず
イノヤスコメント

「叶った夢もたまにある、叶わなかった夢はざらにある……」。まごう事なきオッサンとして少しだけ過去を振り返って、近頃強く思うことであります。叶わなかった夢が叶っていたら……という心情がとっても理解できる年頃なんですよ。だから転生したり異世界転移したり大規模ゲームに取り残されたりして、別の人生を歩んでいたらどうだったんだろ……とか思ってしまうの、よく分かります。

まあいまさら転生とか出来そうにないので、過去からの「夢の棚卸し」をしてみました。──一番最初のころに抱いていたのに、結局できなかった一番の夢ってなんだろうというと、バンド、なんですよね……。

ギターを弾き始めたのが中2。指を痛めてようやくFが押さえられるようになったんだっけ、エレキギターを買ったのが高1で、大学とか行ったらバンド仲間ができて……妄想はさらにひろがって、美人ボーカル(兼ギター)の女子をとりあって音楽性の違いを言い訳にバンドを解散して……みたいに考えていたら早30年以上経ってしまったのです。

その時に買った、フェルナンデスのストラトコピーモデルもすっかりオールドギターになっちゃったし、そもそも音でるのかなあ、ピックアップとか腐ってそうだし……といいつつも、今でもやっぱり、みんなで音を出して音楽を通じて何かを目指す、っていうのは、いつかかなえたいし、多くの人たちにとっても夢でありつづけるんだろうと思ってます。

さて当作品は、一時の出会いを通じてバンド活動を一緒にすることになった主人公の悠くんと、「かぐや」を名乗る美少女にして才能溢れるヒロインとの、ほんの僅かの期間の物語です──ピュアな心の叫び、諦めきれない希望と夢、そしてすぐそこに迫る避け難い別離の運命……とくれば、ぐっと来ないわけないですよええ、サウンドとともにステージからいろんな願いがこぼれてきて、それをつかめそうな、でももしかしたら触れることもできなそうな、そんなはかなくとてもステキな瞬間が刻まれた、爽やかな読後感あふれる当作品をぜひお手にとっていただければと思います。

ラノベ文庫新人賞出身である望月唯一先生。またまた描ける世界のバリエーションを増したようですが、これからもどんどん、美しくて壊れやすくてはかないけれど誰もが大切にしている瞬間を刻んだ、今作のような話も書き続けてほしいなと思ってます。

青春系の傑作再び! もうすぐ秋の気配。しゃーない切り替えてけ!!

『公園で高校生達が遊ぶだけ』書影
著:園生 凪 イラスト:トコビ
大ちゃんコメント

衝撃的な作品タイトルです。え!? このままタイトル? 誰もが一瞬そう思うはずです。何かのアンチ・テーゼかもしれません。その何かは容易には定義できません。物語ること、物語られるような特色を持つこと。なぜ語る、何を語る。

お待たせいたしました。青春系ライトノベルの大傑作『友達いらない同盟』シリーズの園生凪最新作、待望のリリースです。主人公の高校生男子は、よく近所の公園でぼーっとしています。ベンチに座ってぼんやりしているだけでも、ずいぶん楽しいようです。

以下は、その彼と通りすがりの後輩との会話です。

〈「武藤君、この後、なんか予定あるの?」と俺は訊く。
「いや、ないですね」
「暇?」
「そうですね。暇です」
「じゃあ、座っていくといいよ」
 俺は言って、ベンチの隣をぽんぽんと叩く。
「え、あ、じゃあ、そういうことでしたら」〉

本作の空気感を端的に伝えるシーンです。野球やオカルトや男子同士であれこれやお洒落番長や木に登るお子ちゃまや、たくさんのエピソードが展開していきますが、本当の主役は公園と、そこで醸成されている空気です。読む者の多くが一緒にそこにいたかったと思う、なんなら今から行ってみたい、近所でそんな公園があったかな、こんな高校生たちがベンチに座ってるかな。ベタつかず、サラッとしているのにとってもいとおしい人と場所。こういう作品を送り出せる幸せ。最終章の見開きイラストの2人は、きっとまだそこにいます。

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