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講談社社員 人生の1冊【59】ぼろぼろになっても家族で読み返した『花田少年史』
(著:一色 まこと)
土屋萌 週刊少年マガジン編集部 20代 男
今でもオバケが大好きです。
父親が読書家で、よく漫画も読む人でしたから、物心つく前から漫画に親しんできました。
父が読む漫画は、怖いお兄さんが怖いお兄さんの眉間を鉄砲で撃ち抜いたり、怖いお兄さんが怖いおじさんに料亭で札束や不思議な粉末を譲渡していたり、怖いお兄さんが怖いお姉さんとベッドの中でなぜか裸でプロレスごっこをしていたりと、物心がつく前には決して読むべきでないような作品であふれ、私も素直に影響を受け、目つき鋭くポケットに手を突っ込んで通園路を歩いたり、ジャングルジムから意味もなくツバを吐いてみたりと、スクスクと健康に育った記憶があります(25歳になったいまだに、私の記憶の中にお姉さんは登場しませんが)。
そんな漫画たちに紛れた、暖かく、可愛らしい絵が表紙の本。幼い私が父の本棚から見つけ出したのは、『花田少年史』という作品でした。
舞台は、'70年代の日本の、どこか田舎のまち。とある出来事をきっかけに、この世に未練を残した幽霊(オバケ)たちと会話ができるようになってしまった花田一路少年が、彼らを成仏させるために奮闘する物語です。個性的なオバケたちと、願い事に渋々付き合わされる腕白な一路少年の掛け合いは、ヒューマン・ドラマのお手本を見るよう。脇役たちも、みな人間味と精彩に富んでおり、私は、「笑えて泣ける」という言葉は、この作品のために発明されたのだと思っているくらいです。父と私のみならず、この作品には母も夢中になり、家族で、ぼろぼろになっても読み返しました。
『花田少年史』は1993〜95年にかけて連載され、私が出会ったときには、全4巻のコミックスで既に完結していた作品です。その『花田少年史』の第5巻が新たに発売されると聞き、書店へ走ったのは2003年。私が16歳の時でした。それまでは、父母から漫画や本を買ってもらうばかりだった私が、初めて両親のために購入し、贈ったのがこの本です。
「自分がいいと思う本を相手に贈る」「相手が求めている本をその元へ届ける」まだ入社して間もなく(注:2012年入社当時)、業界や仕事のことはおろか、エクセルの打ち込み方もわからない私ですが、この2点は、出版社という会社に勤める者として、もっとも根源的な喜びなのではないでしょうか。この喜びを初めて与え、腑に落としてくれたのが、『花田少年史(5)番外編』であるというふうに記憶しています。
とにかく面白いので、ぜひ読んでみてください。
作者の一色まこと先生は、現在『モーニング』にて、『ピアノの森』を連載されています。こちらも、ぜひ!!
- 電子あり
「男の約束は絶対だろ!!!」野球の助っ人の約束をすっかり忘れてしまった花田一路はクラスの洋平と大ゲンカ……そんな時あるオバケのおねえちゃんから「洋平くんに私との約束を思い出して欲しい」とのお願い事を頼まれる──。笑いと感動をお届けする花田少年史番外編!!
既刊・関連作品
執筆した社員
土屋萌【週刊少年マガジン編集部 20代 男】
※所属部署・年代は執筆当時のものです
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