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講談社社員 人生の1冊【64】『デビルマン』懐かしアニメ、じゃなかった!!
(著:永井豪とダイナミックプロ)
関谷将人 映像製作部 40代 男
幸せなトラウマ体験
たぶん小学校6年の時と記憶している。中学受験を控え四谷大塚に通う僕の気晴らしは、毎週日曜日の講習が終わった後、立ち食いソバ屋で一人稲荷ずしを食べ、立ち読みをすることだった。当時は漫画本にシュリンクもかかっておらず、心ゆくまで漫画を味わうことができた。『ドカベン』『キャプテン』『ガキデカ』……みんな、立って読んだ。数ヵ月にわたり、お目当ての作品も何ターンか読んだ後、僕の目に留まったタイトルがあった。『デビルマン』。(懐かしい。これ、子供のころ見たかったんだよなー)と、思わず手に取った。
小6が「子供のころ」というのも変なのだが、小学校低学年の時分に「デビルマン」を東映まんが祭の映画で観たことがあったのだ。確かマジンガーZとデビルマンが協力して戦う、という体のサイズに滅茶苦茶違いがあるのに無理矢理な設定の話だった。しかしTVのアニメは家では見られなかった。これも今思うとすごい話だが、当時のNET(現・テレビ朝日)は土曜日の19時30分から「仮面ライダー」「人造人間キカイダー」「デビルマン」と1時間半に渡り、男児向け3段組みの編成を取っており、ここが親とのせめぎ合いで、いろいろ善行をつめば何とかギリギリ「キカイダー」までは見れたりしたのだが、「デビルマン」まで辿り着くことはできなかった。そういうわけで、僕にとっては「あ、れ、は、だれーだっ」という主題歌と「でびーるっっ!」という掛け声のみ認識していた作品だった。たいそう油断した気持ちで、手に取ったのである。
読み始めて「何か違う……」と思った。「でびーるっっ!」って感じじゃ全然無かった。「だれだ」とかノンキなこと言ってる場合じゃない話が続いた。「!?」「!!?」「…………!!!!」。
いわゆる「怖い話」「きつい描写」に関しては、当時ブームだった『犬神家』『八つ墓村』あたりを読んでいたこともあり、もう耐性はできていた。ただそれは「心の準備」があってのことだった。僕は幼いころ見たかった「懐かしアニメ」を読むつもりで、油断しきってノーガードで読んだのだ。そこに描かれていた世界──は、ここには書きません。何故なら「言葉」では表現できないので。あの絵といっしょにあの作品は読む、見ることでしか感じえない、と思うから。
『デビルマン』との出会いは、最高に幸せな体験だった。あの日から東京のベッドタウンに住む半ズボンの少年だった僕の目に、世界はちょっぴり変わって見えたのだ。
既刊・関連作品
執筆した社員
関谷将人【映像製作部 40代 男】
※所属部署・年代は執筆当時のものです
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