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なんの教訓もない「ほしじいたけ ほしばあたけ」超人気“微笑絵本”最新作

きのこファン続出!? 大人も楽しめる、かわいくておもしろい絵本

干しシイタケの“おじいさん”と“おばあさん”が主役のシリーズ絵本「ほしじいたけ ほしばあたけ」。2015年の第1巻刊行から、何ともいえないクセになるかわいさが特徴のキャラクターたちが評判を呼んで、遂に第3巻を刊行致しました。老きのこの素敵な知恵や愛がいっぱい詰まった、ほっこり笑えるストーリーは、子どもだけではなく大人の心も掴(つか)んでいます。また、干しシイタケならではのあっと驚くシーンも盛り込まれているので、是非絵本でチェックしてみてくださいね。

2017.08.25
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ほしじいたけ ほしばあたけ カエンタケにごようじん

<ストーリー>

ほしばあたけと胞子を撒(ま)きに出かけた、ほしじいたけ。いつの間にか森ではぐれてしまったほしじいたけは、ぶきみな歌声を耳にします。そこでは見たことのない真っ赤なきのこたちが宴会をしていました。とらわれの身となったほしじいたけは、一緒につかまった光るきのこたちとともに、脱出をくわだてるのですが......。

きのこ村のゆかいな仲間たちをご紹介♪

シリーズに登場する個性豊かなキャラクターたちを動画にしました。是非ご覧下さい!

著者・石川基子さんにインタビュー

ほしじいたけ誕生の由来や、絵本にまつわる質問にお答えいただきました。

Q.絵本作家になったきっかけは?

A.自分でお話を作れるとは思っていなかったので、絵本の挿絵を描く仕事がしたいと、ずっとオファーを待ち続けていました。が、どこからも声がかからず、しかたなくストーリーも自分で考えるようになりました。各種絵本コンテストに応募し、あわよくば「受賞をきっかけに作家デビュー!」を狙いましたが、現実は厳しく……。そんなとき、四日市の「子どもの本専門店 メリーゴーランド」の絵本塾が、多くの絵本作家を輩出しているという話を友人から聞き、自分も通うことにしました。そこで作ったダミー(絵本のラフ)を元に制作した、『なんと!ようひんてん』が講談社絵本新人賞佳作に、『ほしじいたけ ほしばあたけ』が翌年、新人賞受賞となり、出版に繋がりました。

Q.石川さんにとって絵本とは?

A.息子たちが幼かった頃、毎晩絵本の読み聞かせをしていました。日中怒り過ぎて、喧嘩したかのように親子間がぎくしゃくしてしまったときでも、子どもを膝に乗せ絵本を読むと、自然に仲直りできるような感じがしていました。

講師をしている造形教室で、導入として絵本を読むことがあります。教室を駆け回って元気がよすぎる子どもたちも、何度か絵本を読むことを続けていると、落ち着きが出てくるように感じました。

他の絵本作家(やその卵)、読み聞かせをしている人など、絵本に関わる人との絵本談義は楽しくて、時間が経つのも忘れてしまいます。受け手側としても作り手側としても、私にとって、絵本=コミュニケーションのツールです。

Q.この作品をつくるきっかけは?

A.10年ほど前、「干しじいたけ 干しばあたけ」というタイトルの1枚絵が、イラストのコンテストで入賞しました。その絵を観た知人友人がおもしろがってくれて、何年経っても(何枚他の絵を描いても)、「あれはよかった」と言うので、いつか絵本の題材にしようと思っていました。

自分の描いた1枚の絵から話が生まれるということ、結構多いです。

Q.なぜ干しシイタケを主人公に?

A.先の絵を描いた10年ほど前のさらに少し前、ラクガキ帳にラクガキをしていたら、彼らの方からやってきてくれました。「干し椎茸」のことを「ほしじいたけ」って濁点つけて言う人、いるよなあ(干し柿みたいに)……と思いながら、その傍らに「ほしじいたけ」と書きました。「じいたけ」がいるなら、「ばあたけ」もいるよなあ……とタラチネのほしばあたけにしてやりました。という次第で、ビジュアルとネーミングが同時にやってきました。

Q.創作の際、どのようにアイディアを考えますか?

A.ラクガキ帳を広げ、机に向かって、うんうん考えます。大抵なんにも思いつきませんが、こうやって考えておくと、別のことをしているときにふっと浮かんだりすることもあります。

Q.絵本作りで一番楽しいことは?

A.「これは受けるぞー」とか「みんなびっくりするぞー」とか、読む人の反応を想像しながら絵本のラフをつくっているときが楽しいです。(受けているのは自分だけ、の場合が大半です)。出版物ということで、見知らぬ読者の方からメッセージをいただくことがあります。「いやなことがあったが、書店でこの絵本を見つけて、それが吹き飛んでしまった」などの感想が何より嬉しく、励みになります。

Q.また、一番たいへんなことは?

A.締め切りを「もうこれ以上延ばせません」と言われ、睡眠時間3~4時間の毎日が続き、筆を持ったまま朦朧(もうろう)としてしまって、気がつくと、描きかけの絵に無数のにょろにょろの筆跡が……! という悲惨な日々がつらかったです。こう描きたいというイメージと自分のキャパがかけ離れ過ぎていることが一番たいへんなことです。

Q.読者のみなさんに伝えたいこと

A.「ほしじいたけ ほしばあたけ」のことを「なんの教訓もない」と一刀両断していたレビューをどこかで読んで、その通りだなあと思いました。「おもしろくて、ためにならないえほん」を目指したいと思っています。

欲を言うと、受け取り手がそれぞれ、自分なりのメッセージを見つけることができる、そんな懐(ふところ)の深い絵本をつくることができたら……というのが夢です。

Q.いちばん好きな「きのこ」はなんですか? またそのきのこ料理は?

A.自分で採ってきたタマゴタケでつくったオムレツ……と言いたいところですが、きのこたちに出会えるようなすてきな場所も近辺になく。実際食すのは、干し椎茸と切干大根の煮物とかひじきと干し椎茸の煮物などの乾物料理でしょうか。

きのこは奥が深く、まだまだ知らないことだらけですので、「いちばん」は決められません。(「カエンタケ」も「ヤコウタケ」も好きなきのこです。食べられませんが)。

Q.次作のご予定、また次作への意気込みを教えてください

A.干し椎茸自体を知らない幼児に「ほしじいたけ ほしばあたけ」を読んでもキョトンとしているという声も聞くので、小さい人にも受ける絵本を描きたいという野望があります。次作の予定はまだ決まっていませんが、シリーズ以外の絵本にも取り組みたいと思っています。

石川基子

愛知県生まれ。京都教育大学教育学部特修美術科卒業。
「子どもの本専門店 メリーゴーランド」の絵本塾で絵本作りを学ぶ。第12回ピンポイント絵本コンペ最優秀賞、第35回講談社絵本新人賞佳作受賞。第36回講談社絵本新人賞受賞作『ほしじいたけ ほしばあたけ』でデビュー。シリーズに『ほしじいたけ ほしばあたけ じめじめ谷にききいっぱつ』がある。造形教室講師として、子どもたちに一緒に遊んでもらっている。

  • 電子あり
『ほしじいたけ ほしばあたけ カエンタケにごようじん』書影
著:石川 基子

ほしばあたけと森ではぐれた、ほしいじたけは、あやしげな真っ赤なきのこにとらわれます。ピンチをきりぬけ、きのこたちが大活躍する、ゆかいなお話。