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生理、デートDV、セックス……はたらく細胞が10代女性の悩みにお答えします!
(著:及川 夕子 医療監修:高橋 幸子 監修:原田 重光/乙川 灯/清水 茜(はたらく細胞LADY))
思春期を安心して生きるには「知る」が大切
2015年に「月刊シリウス」で連載が始まった「はたらく細胞」シリーズが、どうして今も愛されているのかを考えると、「そうかそうか、お前そうだったのか」と自分の体のあちこちをじっと見つめたくなるようなタイムレスな面白さがあると思います。
シリーズを通していろんな人間の体の細胞が擬人化されて描かれます。とても働き者で、それぞれ事情があって。とにかく健気(けなげ)なんですよ、みんな。で、その“みんな”は私の全身にも大勢いるので、つまり自分を知るマンガでもあったわけです。
そして「はたらく細胞」シリーズのスピンオフ作品『はたらく細胞LADY』の舞台は、女性の体でした。月経、ダイエット、ニキビ、貧血、妊娠、出産、子宮筋腫……女性の体と細胞たちはこんなにも忙しいのか!と、女の姿形で生きている私でもびっくりする。
本稿で紹介する『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』は、この『はたらく細胞LADY』に登場した細胞たちと一緒に、10代の女性に「性」や「幸せに生きる」ための知識と大切なことを語りかけ、自分を知ってもらう1冊。
私が10代だった頃よりも、うんとアップデートされた世界でした。そして「あー、あの頃に知っておけばよかった!」がたくさんある。
実は、あなたが学校で受けている性教育だって、重要な性の知識が欠けていたりします。これって、「あとは各自で自習!」って状況ですね。
この本は、そんな自習対策本です。ユネスコが提唱する「幸せに生きる」ための世界基準の知識も、たくさん紹介しています。
そうそうこれ! 心も体も激変する思春期は「なんじゃこりゃ!」の連続で、しかも待ったなしで、そのわりには踏み込んだ情報は限定的で、しかし都市伝説はまことしやかにささやかれ……自分の体にまつわる大切な自習を、テキトーな都市伝説に頼ってたまるかい、と思う。そんな自分の10代を思い出しつつ読みました。
PMSもナプキン以外の生理用品も早く知りたかったよ
まずは思春期の女性がビックリする変化であろう「生理」が「第一章 生理と付き合う」で語られます。生理のメカニズムだけじゃなく「経血の量」や「これ、いつまで続くわけ?」といったところも踏み込んで教えてくれる。
経血の量の把握は、月経過多にいち早く気づくためにも大切。本書は何度も「こういうことがあったら、婦人科を受診しよう」と呼びかけます。私は、大人になった今では何かあったらとっとと婦人科に行きますが、当時だったら「こういうものなのかな……」って家族にも相談できず、何年も我慢していたかもしれない。
そしてPMS(月経前症候群)や生理周期の調整についても丁寧な解説が読める。「生理痛、なんとかして!」という項では、細胞たちが「我慢しないでください。薬や婦人科に頼っていいんです」と言ってくれますし、本文でも次のように語りかけます。
生理痛ぐらい我慢すべき? いいえ。ほんの少しでも生理痛で困っているのなら「月経困難症」というれっきとした疾患です。痛みに耐えられないのはあなたが弱いからではないし、愚痴をこぼしたり相談したりしていいことです。
こういうことをきちんと書いてくれると、ほっとするんだよなあ……。
本書のあちこちで展開されるBT細胞の「そのウワサ、ウソ? ホント?」コーナーも楽しい。
「お腹を冷やすと子宮が冷えるってホント?」→「冷えません」。ですよね。私は暑がりなので「冷えるよ~」って言われると後ろめたかったけれど、BT細胞さんの「あなたが快適だと思う過ごし方でいいと思うわ」との言葉に勇気づけられる。
さらに私が大人になってからその存在を知って「もう、もっと早くに教えてよっ!」と思ったナプキン以外の生理用品たちについても、使い方や「こんな人におすすめ」といったメリットとデメリットが紹介されています。必見。
頼れるアイテムがいっぱい。
私の体は私だけが自由にできる
思春期の頃に盛大に悩んでいたけれど「病気でもないだろうし、こんなこと誰にも言えない」と思っていた悩みも本書は明快に答えてくれます。たとえば「わき毛」。生えたままでも死にはしないが、半袖やノースリーブになると気になる。いったいどうすれば……?
そして私はこのページがとても好き。
まずは「あなたの自由」と言ってくれるんです。剃っても剃らなくても自由。大人になってからは当然のように自分の自由や自分の領域を築けているけれど、当時は難しかったです。もう丸裸。だから、まずは「あなたの自由」を丁寧にインストールするところから始まります。そして「もし処理をするならば、清潔かつ安全にね」といって、方法を教えてくれる。頼れるお姉さんみたい。
実はこの「あなたの自由」は、本書がとても大切にしているテーマです。どこを読んでも伝わってくる。私にとって「あなたの自由」とは、自意識がとぐろを巻いて自家中毒を起こしそうだった思春期の頃に知りたかった言葉でした。生理がつらけりゃ病院に行けばいいし、変化していく体を別に好きにならなくてもいいし、私のわき毛だって私がどうするか決めていい。
「ボディ・ニュートラル」という考え方に救われる人は、大勢いると思います。「やせているのが美しい」というのは社会が言っていること。私じゃない」は、女性が命と心身の健康を守る上でとても重要なキーワードです。それに、理不尽なことを「それは私の問題じゃなくて、そっちの問題だから」って突っぱねられるようになると、自分が頑丈になったなあって思えます。はやく身につけた方がいいです。
誰かに「裸の写真がほしい」と言われたら……
「私の自由」は、ジェンダーギャップを考えたり性被害を防ぐ上でも重要な鍵になります。なぜなら「ダメだからダメ」ではなく、「なぜダメなのか? 何が大切なのか?」を理解する必要があるからです。「ダメだからダメ」なんて、思春期の頃は一番きらいな言葉でした。
とくに「第三章 自分を守るスキル」は少女だけじゃなくすべての人に読んでもらいたい。自分が「イヤだ」と言えば被害が確定することや、暴力を振るわれることだけがDVじゃないことが明記されています。
たとえば「裸の写真がほしい」と誰かに言われた場合の対応策はとてもわかりやすい。具体的に「なぜそれがいけないのか」「どうすればいいのか」「どんなふうに危険が迫るのか」を教えてくれます。私はこのコラムにショックを受けました。
こんな巧妙な手口だったなんて。初めて知ったよ……。スマホで個人と個人がつながりやすい環境にあるので昔と比べてリスクも増大しているはず。
怖いことだけじゃなく、生きていく上での喜びも本書は説明してくれます。「好きになったらセックスしてもいい? いつになったらしていい?」なんて学校じゃ教えてくれないことを、性の正しい知識と、本書が大切にしている「幸せに生きる」ことを組み合わせて真正面から答えます。セックスにまつわる妊娠の可能性や性病についてもわかりやすいし、フラットでいい情報です。早く知っておいたほうがいいことばかり。
ここでいう「いい情報」とは、医療監修を受けた正確な「性」の情報と「幸せに生きる」という考え方に根ざした情報の組み合わせを意味しています。そしてそれこそが、本書が題名に掲げる「新知識」だと思います。「幸せに生きる」ための知識は、とてもシンプルだけど腹の底から考えないと出てきません。だから大人になった私にもとても役に立つ新知識でした。一生モノですよ!
- 電子あり
「娘と性について話したいけど……」と悩むお母さん、お父さんへ。
10代女性の「心」と「体」を守る最新情報を1冊にまとめたこの本を、そっとお渡しください!
生理、第二次性徴にともなう体の変化、不安定な心理状態、恋愛にネット、そしてセックス。
10代女性が抱えるさまざまなモヤモヤに対して、しっかり答えます。
学校ではしっかり教えてもらえない、心と体がラクになる「性」の知識を得て、幸福に生きる(Well Being)ためのスキルを手に入れましょう。
この本は、これから体の変調を迎え、さまざまな悩みを抱えることになるティーンの女性に向けて、ユネスコの提唱する世界基準の「包括的性教育」に沿って、正しい性の知識を紹介する本です。
生理前に起こるさまざまな身体の変調「PMS」、避妊以外の効用が高い「低用量ピル」のほか、SOGI、境界線(バウンダリー)、体の自己決定権(ボディリー・オートノミー)や性的同意など、これからの時代を生きていく女性にとって大切な知識をわかりやすく紹介します。
ナビゲートするのは、体の持ち主である「お嬢さま」のために日夜活躍するマクロファージら免疫細胞や、子宮内膜細胞たち。
彼ら人体を構成する37兆もの細胞の総意として、10代女性が抱える悩みに応えていきます。
既刊・関連作品
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。
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