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核を廃絶しようという意志は過去の歴史を伝えようという意思があってからなのです
(編:「No Nukes ヒロシマ ナガサキ フクシマ」編集部)
この本では、長崎大学と広島大学、福島大学の7人の学生たちが企画から参加し作られたものです。
「紙とインクの平和ミュージアム」へようこそ
という言葉から始まるこの本は美しい写真と27名の執筆者、17名の写真家、2名の画家の作品が掲載されています。さらにはアメリカ、ロシア、中国、日本で「ヒロシマ、ナガサキ」がどのように記述されているかを紹介し、「核兵器と原子力発電の歴史を知る」と題された詳細な年表が乗っています。「ミュージアム」という名にふさわしいものだと思います。
この本に一貫して流れているのは「人間が作ったもので人間が存在しなくなる、それが「核」の恐ろしさの本質」であり、「その力がむきだしになるととてつもない惨事が起こること」を、世界のどこの国の人よりも知っている私たちが「兵器と電力から核を排除するための役に立ちたいと願い編集された」ものです。
本文は広島の原爆で解けた象牙の印鑑から始まりますが、このミュージアムの館は表紙から始まります。福島県飯館村で採取された軍手、そこには放射性物質が付着していることが見てとれます。放射性物質は付着しているだけではありません。その印鑑の次のページには幹などから吸収された放射性物質があることを証しているカエデの葉が写っています。
どのメッセージにもどの写真・絵にも非核へ向けての熱い思いが込められています、悲痛な思いとともに……。
「広島を「ヒロシマ」にしてしまったのは誰だ。長崎はなぜ「ナガサキ」になってしまったのか。(略)二〇一一年福島は「フクシマ」になってしまい、住むことすらできない土地をつくりだしてしまった」「幸せを意味する「福」を消してカタカナで綴らざるをえない悲しみと、しかし安易にカタカナをつかって福島県をひとくくりにしてはならない、という戒めとともに」(「カタカナの街」重松清さん)
爆発の衝撃で全壊に近い被害を受けた長崎浦上天主堂から見つかった聖像の右手首。柔らかく握られた手の中にはなにがあったのでしょうか……。愛、希望、平和そして未来、それらをそっとのせていたのでしょうか……。
その手からはまず“平和”がもぎ取られました、戦争によって。戦争は多くの人びとから“未来”を奪いました。
開け放たれたパンドラの箱には“希望”が残されましたが、人類が開けた“核の箱”にはなにが残っているのでしょうか。
このミュージアムに出品された人々は誰もが“希望”と“愛”を持って箱を閉じようとしています、なによりも“未来”のために。
箱を閉じるために必要なものがもうひとつあると思います。
それは“意思と意志”です。
核を廃絶しようという意志は過去の歴史を伝えようという意思があってからなのだと思います。
「地球上に存在する1万6400発の核弾頭」「地球上に存在する435基の原子炉」、それらがどのような脅威であるのかを忘れてはならないと思います。「「足るを知る」ということ」(渡辺謙さん)と「「核なき世界」の先を描く」(堤未果さん)ことがなによりも今必要なことではないでしょうか。
写真の美しさがそのような“希望”の道筋を描いているように思える1冊でした。
今年も『NO NUKES 2015』が、2015年11月28日に開催されます。
レビュアー
編集者とデザイナーによる覆面書籍レビュー・ユニット。日々喫茶店で珈琲啜りながら、読んだ本の話をしています。
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