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異世界転生しない! 俺TUEEEでもない!! 『ゼロから始める魔法の書』新シリーズ

魔法使い黎明期(1)
(原作:虎走 かける 漫画:タツヲ キャラクター原案:いわさき たかし)
2020.02.01
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何の予備知識もなく読み始めたら、あまりの面白さに思わず「お見事!!」と喝采を送っていました。まだ、第1話を読んだだけだというのに。
異世界を扱う話は、状況設定やキャラクターの把握に頭を使うものですが、『魔法使い黎明期』は色々なキャラクターが出て来るにもかかわらずテンポが良く、すんなりと異世界に入り込むことができました。
改めて見ると、原作は『ゼロから始める魔法の書』の著者でもある虎走(こばしり)かける氏のファンタジー小説。これにタツヲ氏のハイレベルな作画が、見事にマッチしています。

主人公は、「ウェニアス王国王立魔法学校」始まって以来の成績不良による退学者となりそうなセブ君ことセービル。
退学者は追放されるだけでなく、魔法学校に居たことすら忘れさせられるのがルール。だから入学前の記憶がほぼないセービルは、魔法使いになるしか生きる術がありません。
        
そんな成績不良者の救済措置として設けられたのが、魔女の村での特別実習でした。
セービルに同行するのは、笑顔を武器に生きて来たという学校一の秀才ホルト。あと1年で卒業できるほど優秀なのに、なぜか数年かかる特別実習に立候補したのです。

そしてこの2人を引率するのが、ロス先生こと黎明の魔女ロー・クリスタス。魔法学校学長の友人で、教師でもないのにセービルたちの引率を引き受けました。


見た目はロリータなのに、年寄じみた言葉で毒舌を吐くロス先生。中身は絶対におっさんだろ!とツッコミを入れたくなります。
しかし彼女は、契約者以外が触ると魔力を全部吸われてしまうため“魔女喰い”と恐れられている「ルーデンスの魔杖(まじょう)」を唯一操れる魔女でもあるのです。

3人は旅の途中、別行動で魔女の村を目指していた半人半獣の“獣堕ち(けものおち)”クドーが襲われたことを知ります。
“獣堕ち”は、戦闘能力や再生能力が高い反面、人々からは凶暴で危険と思われ、凋落の象徴と忌み嫌われている存在でもあります。



500年に及ぶ魔女と教会の対立が収まり、数年前から平和な世の中になったはずなのに、教会の原理主義者たちによる“魔女狩り”が活発になりつつありました。

クドーを襲ったのも、魔女と戦うために集められた戦闘集団〈女神の浄化(デア・イグニス)〉の裁定官でした。
足手まといになるからとセービルとホルトを置いて1人、「ルーデンスの魔杖」で裁定官と闘うロス先生。



ロス先生の圧勝かと思われたそのとき、後を追って来たセービルとホルトが現れ、怒涛の展開となります。ここで早々と最初の山場がやって来るのですが、その見せ方がまた素晴らしい!!

今まで伏せられていた様々なことが、明らかになって行くからです。

『魔法使い黎明期』は、登場人物が皆、何かしらの辛い過去を背負っているところが魅力だと思います。
セービルは魔法学校に入る前の記憶がほとんどなく、獣墜ちのクドーも昔は見世物小屋の檻の中で拘束されていました。
優等生のホルトには、誰にも言えない複雑な事情があり、成績が優秀なのに特別実習に参加した理由が暴かれて行きます。
そして、彼らの引率を引き受けたロス先生にも、どうやら深いわけがありそうなのです。

こうした様々な要素が絡み合うので中身が濃く、一気に読んでしまうのが勿体なくなった私は、毎日1話ずつ読んだほどです。
また最後まで異世界特有の世界観、魔法に関する複雑な設定がすんなりと頭に入ってくるあたりは、構成の凄さと言いましょうか、ただただ脱帽するばかりでした。

君にふさわしい世界に連れて行こう

これは、魔法学校に入る前のセービルが、おぼろげな記憶の中で覚えていた言葉です。
私はこれを「人にはそれぞれ相応しい場所があるんだよ、たとえ今は上手く行ってなくてもね」と言われた気がしました。
そんなことを思わせてくれる『魔法使い黎明期』。この作品に出会えて、本当に良かったと思いました。

  • 電子あり
『魔法使い黎明期(1)』書影
原作:虎走 かける 漫画:タツヲ キャラクター原案:いわさき たかし

魔法学校に通う落ちこぼれの生徒・セービルは学校入学以前の記憶を失っていた。そんな彼に学長は反魔女派の勢力が強い王国南部に特別実習として向かうことを命じた。同行するのは、黎明の魔女ロー・クリスタス、秀才少女のホルト、獣堕ちクドーといった、いずれも個性の強い面々。彼らが実習先で知る真実とは――!? 虎走かけるがおくる本格ファンタジー『ゼロから始める魔法の書』待望の新シリーズを鮮烈にコミカライズ!!

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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