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彼氏は奪うもの。たとえ、恋人を殺してでも。驚愕の彼氏乗っ取りサイコホラー

わたし(仮)(1)
(著:奥津 武)
2019.12.29
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「先読み」要注意

「ハイハイそういう話ね」と先読みしながら読もうとして豪快にしっぺ返しをくらった。病んだ女の子が他人になりすまして刃物片手に恋する相手を手に入れようとする……ここは間違いじゃないのだけど、『わたし(仮)』はそう簡単なマンガじゃなかった。



この子は“倉門詩緒”ではない。みんなここで「ははーん」となる。でも作品が仕掛けた罠がたくさん待っている。

彼氏を乗っ取れ!

物語は“ある男”が目覚めるところから始まる。ひどい頭痛にヨロヨロしながら起き上がり、鏡を見て一言。



自分が誰だかわからない。ここから推理ゲームのように見知らぬ部屋を探索しはじめる。これって大抵ロクなものが出てこない展開だと思うが……、


いきなり首を切り落とされた死体と対面する。こっわ! このマンガは「ページをめくったら1ページまるまる(もしくは見開き)使って強烈なシーンが出てくる」ことが多い。私はこのシーンの何倍も怖い思いを何度もした。用心して読んでほしい。

で、「わかんないけど自分がやったの?」と焦りまくるわけです。わかる。そしたら狙ったかのようなタイミングでインターホンが鳴り、居留守も虚しく合鍵でガチャっと入ってくるのは……?



かわいい。どうも男の恋人のようだ。


記憶喪失だけど頭をフル回転させて隠し通したいと考える男。が、死体の存在が彼女に即バレ。震える彼女に事情をすべて話すと、この反応だ。



即「信じる」と言うわけです。女は、男の名前が“庵(いおり)”であること、女は“倉門詩緒(くらかど しお)”で、2人は恋人であることを告げ、淡々と死体を処分します。庵は詩緒だけを頼りに生きていくことに。

……怪しい。トントン拍子すぎる。だから読んでいる人はみんな「この女、ぜんぶ知ってたんじゃないの? 殺したのこの女なんじゃないの?」とかなり早い段階から思うわけです。たしかにそうです。倉門詩緒と名乗る女は「庵を手に入れるために“なんだってする”女」。名前は“平間撫(ひらま なで)”。撫のえげつない謀略と度胸は病的なものだけど、本当に怖いものは他にもたくさんある。

読者がわかるのは、撫の視点だけ

撫の視点から語られる狂気と知略はシームレスだ。



「一緒の布団で寝たい、でも言えない」とラブコメのように悩むのも、「人を殺して乗っ取る」ことも、同じように思考する。狂っているなあと思う。
そんな撫の心の独白を読むに従い、ところどころ「?」が増えてくる。


庵が暮らしていた部屋は「とても物が無い」のだ。疑り深い読者も考えるはずだ。「そもそもここで本当に暮らしていたのか?」と。

そしてついに庵のことを知っている人物も現れる。



どうも庵のバイト仲間のようだ。



当然、そんな女、撫にとっては邪魔な存在だ。表向きはこんな感じだけど、



心の中ではこんな感じ。撫の心の荒れっぷりは手に取るようにわかる。

でも、しつこいが「それだけ」なのだ。女子高生が何を考えているかもまったくわからない。そもそも庵と女子高生の“バイト”が何であるかはわからない。そして最大にわからないのは……?



そう、庵という人物の存在だ。何者? 「謝ることしかできない」ってマジで言ってんの? やがて土下座じゃ済まないようなトラブルがブスブスと撫の周りで起こり始める。

私にわかっているのは「撫の狂気」。そして「多分みんなヤバイ奴」であること。もうどうなるかわからない。疑い始めたらキリがない状態だ。すべては撫の視点で語られるので、もはや狂人だろうがなんだろうが撫を応援したい。想像もしないところから刃物が飛んでくるような気持ちで続きを待っている。こわい!

  • 電子あり
『わたし(仮)(1)』書影
著:奥津 武

彼の恋人はもう死んだ。なら、私が彼女を名乗っても問題ない。わたしは生まれ変わる。彼の恋人として。究極の肉食系ヒロイン、彼氏乗っ取りサイコホラー。

そうだ、彼氏を乗っ取ってしまおう。はじめて好きになった人には、すでに別の恋人がいた。
「あぁ、やっぱりわたしは幸せになれない……」
そんなある日、転機が訪れる。その人が事故で記憶喪失になってしまったのだ。運命の導きだと思った。またとないチャンスだと思った。
「恋人を殺して、わたしが彼女を名乗ればいいじゃん」
わたしは生まれ変わる。彼の恋人として。恋人でいられるなら、なんだってする。だって、彼を愛しているのだから。驚愕の彼氏乗っ取りサイコホラー、開幕。

レビュアー

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花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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