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見た目も味も、料理のできばえの9割を決めてしまうものとは?

2019.11.12
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「二つのこと」を覚えれば、料理はおいしく楽しくなる

深センや香港に行くとカジュアルなレストランでも野菜の切り方が独特かつ美しいことに感動する。お粥に添えられた生姜はいつだって針のように綺麗に並び、ニラの串焼きは長さがピシッと揃っている。見慣れた食材なのに印象が全然違うのは、味付けよりも切り方の影響が大きいと思う。

『世界一おいしいせん切りキャベツの作り方 料理は切り方が9割』は、まさに「食材の切り方」の教科書だ。著者は、プロの料理人育成に長年携わり、料理教室の主宰であり、料理研究家として料理に関する本をたくさん書かれている川上文代先生。だからとても丁寧かつわかりやすく楽しい。先生が幼いころに試行錯誤されたエピソードもふんだんに入っていてジーンとする。一生手元に置いて読みたい。冒頭の言葉で胸を掴まれてしまった。

料理の味を決めるのは、切り方、火の入れ方、味付けの仕方、この三つです。
中でも大事なのは、「切り方」だと私は思っています。
なぜなら、料理の一番始めの段階であり、その後の、火の入れ方や味付けの仕方は、どちらも、切り方が適切でなければうまくいかないからです。

やっぱり……! なのに巷のレシピでは「知ってますよね?」という感じで、切り方の説明は簡潔だ。すみませんが知らんのですよこちらは……と申し訳ない気持ちになる。

『世界一おいしいせん切りキャベツの作り方 料理は切り方が9割』という題名のとおり、本書は「せん切りキャベツ」の作り方と「せん切りキャベツで目指すべき高み」を示してくれる。しかもキャベツだけにあらず。あらゆる食材と調理法について「切り方」をロジカルかつ楽しく教えてくれるのだ。

(略)調理法がたくさんある野菜の場合、ひとつひとつレシピを覚えようとすると大変な苦労がいります。でも、切り方のコツと素材の原理を覚えてしまえば、あとは応用できるのです。

「切り方のコツ」と「素材の原理」、知りたい……! まずは、個人的に苦手だった「キャベツのせん切り」を克服すべく、普段は半玉で買っているキャベツを一玉買い、包丁を研いだ。

8ページにわたる「キャベツのせん切り」大全

本書は「キャベツのせん切り」だけで8ページも解説がある。このうちごく一部を紹介したい。解説は、「キャベツの全体像」からアプローチが始まる。

(略)もしキャベツをまるごと一個買ったなら、どう食べるか計画を立てることが大事です。

計画性! キャベツのせん切りに適した部位、適していない部位の料理のお話から、「青みが少なくて寂しい場合」に彩りを良くするコツなども教えてもらえる。

次に、「正しい切り方」。やってはいけないこととして「二つに割ったキャベツをそのまません切りにすること」が挙げられる。スライサーでガリガリ削ってました……。ダメな理由は以下の通り。

硬い芯もやわらかい葉も一緒に切ることになるので、おすすめできません。(中略)キャベツは成長過程で、さまざまなものを中に包んで結球しますので、家庭ではぜひ一枚一枚はがして、水洗いしていただきたいです。

納得。これからは1枚ずつはがします。こんなふうに工程に理由があることがわかると、身につきやすい。だから理由って大切だ。

そして、切る「向き」。

繊維に対して直角に切れば、ふわっとやわらかな食感に、繊維に対して平行に切れば、しゃきっとした食感になります。

こちらも納得。覚えました。本書はせん切りキャベツ以外も「どの向きで切ると、この料理はおいしいか、なぜおいしいのか」がロジカルに書かれている。だからとても参考になる。

さらに「切るときの動作」と「切ったあとの処理」。こちらも大切だ。包丁を押し込むように切るクセがあったのでそれをコツコツ矯正しながら切った。そして切ったあとは冷たい水を張ったボウルにキャベツ放つ。

さて。あらゆる「おいしいせん切りキャベツ」のレクチャーを授かった私が挑戦したキャベツのせん切りはというと。

初回は、ちょっとお見せできない規模で太かった。本書では「ボールペンで書いた線」の細さが理想であると記されているが、私のは極太マジックペンだった。それでも「あ、おいしい」と少し思っちゃったのは、本書で挙げられていた「おいしく仕上げるコツ」をすべて守っていたからだと思う。だから、もしキャベツのせん切りが苦手な方がいるならば、本書のコツを守って実践してほしい。あなたのキャベツは理想じゃないかもしれない、でも結構おいしくできて、かつ未来への希望が感じられる。

2度目のチャレンジ。



極太マジックもいれば、ちょっと細いのもいる。この時点でも口に運ぶと「おいしい」と思ってしまった。そして3度目。



内側の柔らかい部分だけでなのもあり、さらにふわふわ。進化の余地ありだが、頑張り方がわかった。次もキャベツは丸ごと買います。

3食自宅で料理する人、週末だけ料理する人、おつまみだけちょっと作る人、みんな「食材を切る」ことには関わる。その「食材を切る」秘訣がこの本にはつまっている。だから、いろんなことに応用が効くはずだ。最初はうまくいかなくても大丈夫。ロジックさえわかっていれば、それを実現すべく頑張ることができるし、やがてゴールが見える。「切り方」をとおして食材との付き合い方がわかれば、料理はうんと楽しくなるはずだ。

  • 電子あり
『世界一おいしいせん切りキャベツの作り方 料理は切り方が9割』書影
著:川上 文代

料理のおいしさを決めるのは何でしょう。
味付け? 火の入れ方? それとも、素材?
ほとんどの人がこの3つをあげることと思います。ところが、とても大切なのが実は「切り方」なのです。

家庭料理にはそれぞれ定番の作り方や切り方があります。肉じゃがを作るとき、じゃが芋はごろんと大きく切りますが、フライドポテトにするとき、たいていの人は細長く切るでしょう。
どう切ればその料理ができるか、作り方を解説した本はたくさんあります。しかし、作り方を覚えただけでは、覚えた料理は上手にできても、そのテクニックを使いこなすことはできません。
テクニックを使いこなすためには、「理由」を知ることが大事です。同じじゃが芋でも、肉じゃがはごろんと切ると味がしみてほっくり煮え、フライドポテトは細長く切るとかりっと揚がってつまみやすくなるなど、そこにはちゃんと「理由」があるのです。

川上文代先生は、“世界三大料理学校”と言われる辻調理師専門学校で和、洋、中、製菓の技術を学び、卒業後同校で教鞭をとり、料理研究家として徹底的に料理に向き合い、全国で活躍する有名シェフを何人も育てています。
本書では、その確かな技術と経験に裏打ちされた「切り方」のコツを、わかりやすくロジックに解説します。

レビュアー

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花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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