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【講談社地獄篇】締め切りを無視し続ける漫画家と、漫画家に暴言を吐き続ける編集者のリアル

楽屋裏 -講談社地獄篇-
(著:魔神 ぐり子)
2019.08.31
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講談社って地獄だったの……??

読む前から謎の殺気が伝わってくる。『楽屋裏 -講談社地獄篇-』、タイトルが強烈すぎるだろう。講談社はよくこれを出版したなあ、っていうか講談社以外が出版したらもっと強烈か……。きっと、タイトルを提案した人も、タイトルにゴーを出した人も、肝の据わった人たちなのだろう。過程を想像するだけで修羅。というふうに、ひたすら気になる点が尽きないまま読み始めて数秒後。

ふげげっ! みたいな聞き苦しい笑いが出た。



なんだ!?



笑う。そう、本作は『楽屋裏』という作品の新シリーズなんです。漫画家・魔神ぐり子先生が自身の日常をえぐり出して読む者を死ぬほど笑わかすギャグエッセイマンガ。剣道のお面の人は“小柳”さん。昔から魔神先生を担当している編集者です。この2人の手加減なしのやり取りがおもしろいよ。

漫画家のリアルボイス

本作では先生の「普段の生活」と「漫画家としての生活」のあれこれが描かれています。あと「猫」と「ポケモン」とほしいゲーム機の名前も頻発します。どのエピソードもキレキレにおもしろい。「漫画家としての生活」で印象的だったのはこのエピソード。



これ、いつも気になってた。リツイートでまわってくるハイクオリティなマンガを見かける頻度が最近とても上がっていて、楽しいけれど、あれ、目的は「告知」なんですよね。「もっと読みたかったら本誌を読んでね、単行本を買ってね」っていう。

3コマ目の咆哮に笑いつつ、この咆哮も、「すさむ心」というむき出しなタイトルも、そして枠外に添えられた「あんしんしてね!」というひらがなモリモリのコメントも、バランスよくこちらに「マジ」を伝えてくる。

そして、漫画家あるあるの締め切り攻防戦も高頻度で勃発しています。



別のエピソードで「最初に言っておきますけどね 講談社はめちゃくちゃ締め切りが厳しいです」と念押しされていたのに、ゲーム優先かつ言い訳のセンスがすごい猛者と、詰めに詰めまくる猛者。……もしかしなくても、講談社が地獄なんじゃなくて、いろいろ間に合わなくて講談社がちょっと地獄を見ている瞬間もあるのかもしれない。

先生のお顔のスタンプが欲しい

日常生活のあれこれを切り取ったエピソードも大変よいです。



状況説明は控えます。かなしみを察しましょう。本作は「お顔」がとても楽しいんですよね。



LINEスタンプにあったらめっちゃ送る。



クリエイターの高純度な叫び。
お顔でゴリゴリ攻めないエピソードも、まるで短歌のようなリズム感があってとても好きです。「かなしー」って瞬間がたくさん。



私も洗顔では肘が毎回びしょびしょ。肘を濡らさず洗顔できる人、YouTuberでも誰でもいいから動画をアップしてほしい。

ギャグエッセイマンガの描く修羅場

ネタ出し、締め切り、漫画家と編集者のタッグマッチ、制作方針のぶつかり合い……と身構える必要はなくて、むしろ軽快にゲラゲラ笑える「制作の裏側(舞台裏)」ばかりなのですが、それは「ギャグエッセイマンガ」という表現形態だからなんですよね。

つまり、最初から最後まで読んでるこちらを笑わかせる胆力にあふれています。



原稿を落としたあとすらこのお顔。実際には笑ってない人が一定数いたはずですが、読者は笑います。表紙を見て感じた「謎の殺気」って、「お前を、絶対、笑わかすぞ!」という殺気なのかもしれません。

  • 電子あり
『楽屋裏 -講談社地獄篇-』書影
著:魔神 ぐり子

締め切りは破る。担当からのメールは読まない。欲しいものは人気とお金。
そんな底辺漫画家・魔神ぐり子に、罵詈雑言を浴びせ続ける腐れ縁のドS編集者・小柳。
漫画制作のリアルな「裏」を描きコアな人気を得ていた「楽屋裏」が、舞台を講談社に移し新展開!
大手出版社で魔神ぐり子を待ち受けるものとは――!?
漫画家vs.編集者の戦いが再び幕を開ける。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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