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卒業論文、新・大学入試対策にも最適! 必要なのは自分の考えを組み立てる力

中高生からの論文入門
(著:小笠原 喜康/片岡 則夫)
2019.02.10
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この本の共著者・小笠原喜康さんの前著『最新版 大学生のためのレポート・論文術』はネット時代に論文(文章)はどのように書けばいいかを極めて実践的に解き明かしたものでした。「レポート」「論文」にとりくまなければならない大学生を中心に、社会人までを含めて、「探究力、構想力、論理力、表現力を総合的に身につける」ための指南書です。

ではこの『中高生からの論文入門』はというと……。

「論文」というものに親しんではいない中高生に向けた入門書と題されていますが、単なる入門書ではありません。「論文という世界」を分かりやすく、丁寧に解き明かした「論文原論」「論文基礎論」とも呼べる力作です。中高生どころか大学生、社会人とあらゆる人に読んで欲しい1冊です。


「自分のコトバ」と「他者のコトバ」

「論文」とはどのようなものでしょうか。「論文」に取り組むということは、自分の考え(思考)を作り上げ、鍛え上げることです。もちろんそこには「他者の考え」というものも存在します。ですから「論文」を書くということは自分を知ることであり、主体性を築くことにもなるのです。

論文作成は答えのない、あるいは幾通りもの答え方のあるテーマ(問い)探しからはじまります。そのうえで、証拠をそろえ、答えに近づこうという道のりです。(略)
論文作成は「自分のコトバ」でテーマ設定をして、「他者のコトバ」を引用や要約しながら、「自分のコトバ」で解答や主張をする作業なのです。それだけに論文では、「自分のコトバ(主張・見解・コメント・意見)」と、「他者のコトバ(引用・要約・事実)」とを、はっきり区別しておかなければなりません。これが論文の大原則です。

自分と他者のコトバをきちんと区別することの重要性は、この本で幾度も繰り返し語られています。それは(たとえ自分の主張と異なっていたとしても)先人へ敬意を払うということに通じます。ですから「他者のコトバ」を「あたかも自分が書いたようにつくろってしまうのは絶対にダメ」です。この姿勢を忘れてはなりません。ここには論文の正直さが問われているのです。


「興味」から「意義」へ

論文を書こうとしたとき、まずテーマを決めなければなりません。テーマというと難しく考えて構えてしまいますが、その心配は無用です。3つのことを心がければいいのです。
1.興味を持ち、人に伝える価値のあるテーマを探します。
2.資料があり、自分の力で扱えるテーマを探します。
3.人とは異なるテーマを探します。

この3つの条件をあげた後で、本書は「テーマ設定のための演習」「どうしたらテーマを設定できるか」という章で具体例をもとに実践法が説かれています。さらに「先輩が撤退していった分野」の例まであります。テーマはなにがいいか、と頭をかかえる前にこれらの章をじっくり読んでください。テーマそのものの立て方、見つけ方がわかると思います。

・クラシック専用ホールはなぜ『専用』なのか。
・ロックは我々の何を映し訴え続けてきたのか。
・動物実験はなぜ目に見えないのか。

著者が実際に出会った中高生たちが論文に書いたテーマだそうです。疑問文になっていることが重要ですが、学生たちがどのような対象(世界・出来事)に興味を持ったのかがわかります。いうまでもなく、疑問こそが「自分のコトバ」の第1歩です。

「興味を持つ」テーマとはとりもなおさずその対象が「好き」ということです。そして「人に伝える価値」とは「意義」にほかなりません。「論文」とは「好き」から「意義がある」へと歩みを進めるものです。さらにいえば「意義」を持つということは「社会性」を持つということであり、それが「主体性」を持つということにつながるのです。


はじめに感動あり

テーマが決まったら論文を書くにあたって必要な資料・材料を集めなければなりません。この本では、「『論文」という建物を組み上げるための材料」、「ピース」とよんでいます。「ピース」は読書、ネット情報、さらに調査や実験や観察結果などをもとにした論文の「基礎単位」なのです。

ではこれらの「ピース」を繋げているものはなんでしょうか。それは頭の中に生まれた「感動詞」です。

上図は頭の中に生まれた「感動詞」が「感想」になり、さらに「意見(コメント)」にまで変化する過程を表したものです。「論文の卵」の誕生です。

「はじめに光りあり」は聖書の一節ですが、論文では「はじめに感動あり」ということなのです。確かに感動する力は個人のものであり、その感動には「個性」が出てきます。感動があったからこそ「探究力、構想力、論理力、表現力」というものへの意欲が生まれるのです。


即戦力となる実践書

「論文原論」という点だけでなく、この本の魅力のもうひとつは適格にまとめられた「論文作成術」です。書き方の基本的な決まり、文書のレイアウト、調査依頼書の書き方例、論文の発表の仕方(パワーポイントの使い方)など、実に微に入り細をうがつ実践法が述べられています。

さらに「論文執筆上の不正」をも取り上げた「論文作成のルール」は論文を書く上で必読の章です。これほどの「入門」書はありません。付録の「論文チェックシート」は総点検として利用できます。

「論文」はひとりよがりになってはいけません。常に他者に開かれている必要があります。ここでは「わかりやすさ」ということが肝心になります。わかりやすい論文の構造が記されています。

表題⇒主張と展開⇒現状分析⇒先行研究分析⇒中心論点整理⇒まとめ⇒注釈⇒引用・参考文献一覧
(具体例ものっています)


この本が生まれたわけ

まえがきで小笠原さんの滞米中のエピソードが語られています。それは小笠原さんの長男(中3)が話したことでした。

「お父さん、こっちの子はみんな、なんか違うんだよね」(略)
「一人ひとりみんな違うんだ。日本の友だちもみんな違うと思ってたけど、こっちに来てみると、日本の子はみんな同じなんだよねぇ!」

「個性重視とか主体性を大切に」と幾度も主張されてきた日本の教育は掛け声倒れだったのです。痛感した小笠原さんはどうすれば学生たちの「主体性をはぐくむむ」ことができるかと考え続けました。そしてそのために最適な方法が「論文を書いてみる」ということでした。「自我が伸びてくる中高生にこそ、論文は必要」なのだと。そして片岡則夫さんとともに著したのがこの本です。ですが、この本は「論文初心者」だけのものではありません。「探究力、構想力、論理力、表現力」を求める人すべて、必読書だと思います。こんな1節があります。

自分の考え・意見と活力を持って、よりよく生きようとする人間に育つこと、それが教育の究極の目標です。学校教育の本来の仕事は、自律した人格をはぐくもうとする、一人ひとりをサポートすることです。

これは万人へのメッセージだと思います。著者たちの熱い想い・願いが込められた1冊です。「探究力、構想力、論理力、表現力」を求める人すべての必読書です。

  • 電子あり
『中高生からの論文入門』書影
著:小笠原 喜康/片岡 則夫

この1冊さえあれば、だれでも論文が書ける!
学校の探究学習、卒業論文、新・大学入試対策にも最適!

テーマ選び、図書館の使い方、文章の書き方、プレゼン――いまこそ必要なのは、自分の考えを組み立てる力だ。
●これだけはおさえておきたい論文の基本の基本
●タブレットではなくPCが必要な理由
●論文は書くから書けるようになる
●「1時間語れること」を探してテーマを考えよう
●論文にならないテーマとは?
●「テーマを変えたい」はよい知らせ
●本はどうやって読むか
●「感動詞」を「意見」に変える
●図書館の賢い使い方
●ネット検索のベーシック
●フィールドワークの進め方
●調査依頼の手紙の書き方
●実験・観察ってなに?
●書き方のきまり
●引用・参考・注釈のルール
●ホップ・ステップ・ジャンプの文章術
●パワポの基本の基本
【付録】論文チェックシート/論文相談室

探究力、構築力、表現力を磨くには? 論文論・図書館学習の第一人者がわかりやすく解説する。
論文術の決定版。これさえあれば、大学入試改革もこわくない!

レビュアー

野中幸宏

編集者とデザイナーによる書籍レビュー・ユニット。日々喫茶店で珈琲啜りながら、読んだ本の話をしています。政治経済・社会科学から芸能・サブカルチャー、そして勿論小説・マンガまで『何でも見てやろう』(小田実)ならぬ「何でも読んでやろう」の2人です。

note⇒https://note.mu/nonakayukihiro

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