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シャーマンキングノベライズ!ファウスト8世とエリザの物語

講談社ラノベ文庫11月刊のラインナップを一挙ご紹介! 校了を担当のここだけ秘密コメント付き!

イノヤス

講談社ラノベ文庫編集長(であるらしい)。月刊少年マガジンに約20年在籍後ラノベ文庫へ異動し現在に到る。頭の中身は自称永遠の17歳だが頭の外側は……!?という、ドラえもんのいないのび太、みたいな感じのおっさん。編集者としてのモットーは「相手の技は必ず受けろ!」、身につけたい能力は「速読」、異世界に行ったら「蕎麦屋」をやりたい。一度言ってみたい台詞は「どうしたんだ、顔が赤いぞ。熱でもあるのか!?」

大ちゃん

講談社ラノベ文庫編集部校了担当者。またの名を金剛寺大三郎。軍手とガムテと段ボールが似合うナイス・ガイ。講談社ラノベ文庫の新刊を責任持って校了してますが、やたらフセンをいっぱい貼って返してくるのでうっとおしいみたい。「笑ったとこにいちいち『(笑)』っていうフセン貼ってくんの、どうなんすか」(編集部員・談)

2018.11.22
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スピンオフを超えた執念の書

『SHAMAN KING FAUST8 「永遠のエリザ」』書影
著:虎走 かける 原作・イラスト:武井 宏之
イノヤスコメント

昨今の若い皆さんは、海外旅行ってあまり好まないという説を聞いたことがあります。いわゆる「若者の◯◯離れ」というヤツですが、列挙してみるとほとんどのものから離れているのでは?とすら思うわけでありますが……それはさておき、いまをさかのぼること30年くらい前、実はその頃ようやく「自由旅行」とか「バックパッカー」とかがメジャーな存在になったのです。円高になったり、ヨーロッパにいく飛行機がソ連(って知ってる?)上空を飛べるようになったりしてぐっと海外が近くなったので自分もこの流れに流されてひとっ飛びしていました。

最初に訪れたのは《ソ連》(って知ってる? この前ポールおじさんが東京ドームで『Back in the USSR』って曲を演奏〈や〉ってたんですがそもそもUSSR(ソ連)ってもう無いから帰れないなあ、とか思った)の薄暗ーいモスクワでした。初めての海外旅行で行くとこじゃなかったなあ……そして次に降り立ったのがドイツの「西ベルリン」(東西ドイツって知ってます?)――ここもまた薄暗くて、当時の中央駅の役割をしてた「動物園駅」っていうとこの前のビルでぐるぐるめぐるメルセデスベンツのでっかいマークと、翌日に近くまでいった「ブランデンブルク門」(当時はまだくぐれなかった)そこら中で売ってた「ベルリンの壁の破片」(もうどっかいっちゃったかな、1マルク(ほぼ100円)だった)スパイ小説で捕虜交換をする「検問所跡」とかが思い出に残ってますが、そう、その前年にベルリンの壁というやつがなくなったのでした。汚いけど、澄んでいる……ああ、すっごい久しぶりだけどまた行ってみたいなあ。

すいません、なんか文章の枕を探していたら結局ここに落ち着いちゃいましたm(._.)mということでえー今回とりあげますところの『SHAMANKING FAUSUT8』ですが、タイトルからおわかりの通り、こちらは作品本編に登場する『ファウスト8世』というキャラをあつかったスピンオフになります。怒られちゃいますが、自分『シャマキン』はあまり読んでいなかったのです(というかジャンプ全体が怖くて読めなかった時期があるのですが)……で、ありますが、この『FAUST8』にはとても惹(ひ)かれてしまった、すっかり物語にのめり込んでしまったのであります。主人公のファウストの生い立ちと、ファウストの、ヒロインで結婚相手であるエリザに対する、強い強い思いが文章のいたるところにあふれて敷き詰められていて、その後の展開がわかりつつもつらすぎて、それでも目を離すことができなかった……そんな「スピンオフを超えたスピンオフ」のような強力な思いが伝わってきたのです……その理由、あとがきを読んでなるほど納得なのであります……ということで、本編のファンの方も、そうでない方も関係なくいい意味でシビれる当作品をぜひ手にとっていただければ嬉しいなあと……そういえばファウストさんは自分と同年齢らしいのですが、彼もベルリンの壁の崩壊を目の当たりにしたのかなあ……。

「銃を撃てるって最高だぜ!」と4歳女児、わっははは

『どうしても破滅したくない悪役令嬢が現代兵器を手にした結果がこれです』書影
著:第616特別情報大隊 イラスト:無惑桑
大ちゃんコメント

強烈なシーンからご紹介。
森の中から巨大なニワトリの化け物、その名もコカトリスが飛び出します。

《「さあ、鶏なら大人しく唐揚げにでもなれ!」
私はコカトリスの背中に向けてスラッグ弾を放つ。
「コケッ!」
「さっさとかかってこい、チキン野郎。」》

ダハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。ごめん。大ちゃん、こういうプリミティヴなギャグ、大好きなもんで。

さて、とうとう“悪役令嬢”です。小説投稿サイトを始め、各エリアで一大ムーブメントとなっておりましたが、当レーベルにて真打ち登場。主人公の4歳女児は、階段の5段目から落ちて(笑)前世の記憶を取り戻します。──ここはゲームの世界。前世の自分は砲弾や誘導弾や戦闘機のメカニズムが大好きなミリタリおたく女子大生だった。今のキャラは全ルートをクリアしても破滅しかない悪役。回避ムリムリ。ダメじゃん。ならばゲームの設定なんかブチこわしちゃるけん。剣と魔法のファンタジー世界に兵器おたくの知識と技術を投入。どうよ、面白そうでございましょう? ここで「ガンおたとか、武器マニアって、小難しい理屈こねまわすんだろ!?」などと思ったあなたにひと言、「このチキン野郎」。ぜんぜんこむずかしくないのよ。ミリタリおたくの方々にもそうでない人々にもばっちり楽しんでもらえる二重構造だということで、そうそう、忘れずにアレだ。本作の本文中、章終わりとか段落の区切りに「………………………」ってのが用いられています。これは「3点リーダーK」と呼んだりすることがあります。文字1字分に点が3つ。それが2文字分以上つながって罫線みたく使うのです。「K」は「罫」ね。 大ちゃん、気づいたんだけど、これって弾丸とか弾痕の象徴なんじゃないでしょうか!? 違うかなあ、うーん訊けないや、こわくて。このチキン野郎。

異世界からやってきた? あのシリーズからもやってきた?

『嫁々いみぐれーしょん』書影
著:榊 一郎 イラスト:ゆーげん
イノヤスコメント

どんどこどどんどどんどこどどんどどんどこどどんどどんどこどどんどあああ~~…………という感じで、大ちゃんセンパイの芸風を拝借した感じのオープニングになってしまいましたが、移民とか、イミグレーションとかいう言葉を浮かべると脳裏にこのフレーズ(昔の有名プロレスラーの入場テーマでもあります)が自動的に響いてくるそんな世代(にしては少し若い?)のイノヤスでございます。ことのついでに、先日ポールおじさんのライブの後に東京ドームで高校時代の同級生とばったりあったのですがその時ご一緒させていただいた方がひとめでびっくりあらジミー頁……もとい、ぺいじと入力したら頁と変換されてしまっただけで――ジミー・ペイジとそっくりだったのであれまあびっくりしたわけであります。また、肝心のポールおじさんですが、毎回毎回「もう次のライブはないかもなあ……(´・ω・`)」と思って通うことはや30年近く、今もって全出席なのですが、あれですね、演奏したい曲とかある程度決まってきてるんだなあと感じでいたのです。でもそれはそれ、「変わらない」ということの素晴らしさ、またあれをやってくれるなあ、という安心感って、実はエンタメにはとっても必要な要素なんでは、ということをしみじみと実感したのです。

ようやく本題に入ります。新作連続刊行中の榊一郎先生の新作、今度は異世界からエルフやら吸血鬼やら妖精やらドワーフはじめ亜人のみなさんが、突如東京にやってきて……その後の彼らと人間との関係を描く……といったらなんだか極めてむずかしいっぽい感じになってしまうのですが、そうではなくって、エルフのアイドルグループだのが大人気だったり、そんなアイドルの1人がOBCのミュセルだったり、それでもって必然的ハーレム形態が完成してあたふたする主人公を「キターッ」といういつものフレーズで揶揄(やゆ)するあのオタク・慎一だったり、腐自衛官が腐警察官だったりするというお楽しみはありつつ、亜人種の美少女のなかで種の繁栄のためにもまれてもまれまくる新たな主人公・大輝(国語教師)の苦労と活躍にこれから大注目すべき作品であります。異世界と混じった現代社会が舞台の当作品、こんな東京なら自分もいたら楽しいことにありつけそうな感じがして今後の展開がますます楽しみであります。みなさんもぜひお手にとっておたしかめくださいませ!!

考古学者になれなくて。

『救世主だった僕が三千年後の世界で土を掘る理由』書影
著:有丈 ほえる イラスト:ちょこ庵
イノヤスコメント

また人の話なのかよぉ……と言われましても、これだけ毎月書いておりますと、そろそろネタ切れが懸念される感じになってきているため、相変わらず他人の話を勝手に使うスタイルでいこうと思っております。
「俺、実は高校生のころ、『マスターキートン』(は知ってるよね)読んで、考古学者になろうって思ったんですー」と言い放つ後輩がおりました(というか今もおりますが)。彼の話は続きます──「そんでもって考古学ってあの漫画みたいな結構かっこいいもんなのかなーって思ってたんですけど、これがまた地味なんですよねー」。とても地味な作業がずーっとつづくという、当初の想像と遙かに違ったもの、それが考古学の現場であったそうです。「俺の妹も、『動物のお医者さん』を読んで獣医になろうとしてたんですけどねえ……(似たもん兄妹なんだな)」。結局彼の妹さんも獣医にはならなかったそうですが、いかんいかんこれは本題と全く違った──ええっと、いろいろなものの現場って実際には実に地味なものだったりするんだよなあ、ということの1つの例として、考古学もそうであったということなのですが。

さて、話は戻りまして、当作品はタイトル通り「救世主だった主人公が3千年後に目覚めて遺跡を掘る」わけですが、登場するところの考古学の発掘作業が、ただしく地味に描かれているわけです。それゆえ本物感といったものが醸(かも)し出されてきて極めて話に重みを与えている、というわけです。なぜ救世主が発掘をして、それでいて救世主なのか、という点は読み進めていくうちに「なるほどなー、ふむふむ」といった具合にお話の主軸として登場していきます。そんな3千年ごしの歴史ロマンもすてきですが、登場するヒロインふたり、特にお姉さんキャラの◯◯がと────ってもイイ!!! スタイルも性格も衣装も最高でいて、やるときはやる、そんな正しいヒロイン感にあふれていてこれは是非推したいなあと思ってしまったわけであります。堅いこと言わないから、ぜひ硬軟素晴らしく入り交じった作品世界を堪能していただければと思います!!

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