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衰退産業だなんて言わせない、床屋さん業界に理容女子が革命を起こす!

この本を読んだ後、勇気を出して理容室に行き、初めて顔剃りをしてもらった。それまでの床屋さんのイメージが変わりました。
──荻上直子さん(映画監督)

こんな理容師さんに、髪を切ってほしい。自分の仕事に強いこだわりをもつ、ハサミのプロ。若くても、うまくいかなくても、空振りしても、かっこいい。
──華恵さん(モデル、エッセイスト)

2018.05.22
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■衰退産業だなんて言わせない、床屋さん業界に理容女子が革命を起こします!

自分と父親を捨てて男と出ていった理容師の母親を見返すため、お金を稼げて、女性も通える理容店を開く! 子供の頃からの野望を叶えるべく、理容専門学校を卒業したキリ。

カットが下手なキリは、ベテラン理容師の千恵子が一人で切り盛りするバーバーチーで修業することになるが、雑用ばかりの毎日。

幼なじみの淳平は毎日のように実家に来るし、理容学校の同級生のアタルの存在も気になり始めて――。

■刊行記念 上野歩さん特別エッセイ

理容室は、あまり女性は足を踏み入れることがない場所にもかかわらず、コンビニよりも数が多いってご存じでしたか? 20歳の女性が既成概念にとらわれないアイディアで、男性中心の理容業界で奮闘する小説『キリの理容室』は、どうして生まれたのか? 著者の上野さんに誕生秘話をお書きいただきました。

女性スタイリスト(写真提供:池田弘城さん)

変革を目指して闘う、新しい理容師の姿

文/上野歩

毎年夏に、取材原稿を書く仕事を集中的に行っています。ある一般財団法人が主催する中小企業が開発、考案した商品やビジネスモデルの表彰事業があって、その受賞企業を取材し、パンフレットに掲載する紹介文を書く仕事です。プレスリリースではなく、読み物風に書いてほしいとのことで、僕はノンフィクションのつもりで自由なスタイルで書かせてもらっています。

受賞企業は毎回15社前後で、2週間ほどかけて取材します。午前に1社、午後に1社といった具合。受賞企業の業種は多岐にわたっており、扱う製品や商品、技術やサービスもさまざまです。

もう長いことこの仕事をさせていただいているのは、お仕事小説を書いている僕にとって題材探しの貴重な鉱脈だからです。そうでなくとも、実際に売上を向上させたり、販路の拡大に成功したビジネスについて経営者本人から具体的な逸話を伺えるのは、興味深く楽しいものです。まあ、取材のあとには、かなりタイトなスケジュールでそれを次々に原稿にまとめなくてはならないのですが。

ある年、取材先のひとつに理容店をグループ展開する会社がありました。受賞事業となったのは、女性スタッフによる女性のための顔剃り専門店の運営です。顔のうぶ毛や古い角質を適切に除去することで、美白や肌の新陳代謝の活性化、化粧乗りのよさを実感できるレディースシェービング。顔剃りは法令上、理容店でしか提供できないサービスです。理容店とは男たちが足を運ぶ場所であり、そこで施術されていたひげ剃りの技を、女性向けビューティーサロンに転じたところが評価されたわけです。

僕は、自分がなにげなく通っている床屋さんを違う角度から眺める思いでした。また、取材した理容店グループの社長自身がベテランの理容師であり、修業時代の経験談や技術論を伺いました。その際に口にされた、「美容師はアイドル、理容師は演歌歌手」という言葉が耳に残りました。理容師は、齢を経てもお客と長く付き合える仕事であることを、社長はそう表したのです。

理容師さんの手元(写真提供:池田弘城さん)

数年後、受賞企業にまた別の理容店がありました。昔ながらの床屋さんではない、メンズトータルサロンをコンセプトとした次世代の理容店という事業内容が評価されたのでした。若い年齢層を中心に理容店離れが進んでいる現状をくいとめるだけでなく、さらに流れを引き寄せ集客をアップさせるにはどうしたらよいか? 前回の取材が理容の技術面にアプローチしたものだとしたら、今回は経営戦略でした。

技術と経営――ふたつの側面からヒントを得て、お仕事小説として理容の世界が描けないかと思ったのはこの時です。技術と経営に限りません。ふたつの要素を内包しているのが理容なのです。ハサミとレザー(西洋カミソリ)というふたつの武器。理容師側だけでなく、もう一方の客の立場で語ることもできます。客たちは、髪を切り、ひげを剃るためだけでなく、なにかほかにも目的があって理容店を訪ねているのかもしれません。僕自身そうで、待合所に全巻揃っていたコミックが読みたくて通ったことがあります。客が毎回同じ理容店に通うというのは、なんらかの理由(付加価値)があるはずです。そこには、よりよい店づくりのヒントが隠されているかもしれません。

そして、男性と女性ふたつの視点から見た理容店。男性にとって一度は足を運んだことのある理容店は、実は知らないことだらけです。女性にとってほとんど未知の存在である理容店は、もしかしたらこれから利用してみたくなる場所かもしれない。理容の世界を取り巻くそれらの要素は、僕にとって非常に魅力的に映りました。

先の2店に再取材することから始めて、次に理容専門学校に伺いました。見学させていただいた理容師国家試験対策の実技模擬試験は、本番そのものの熱気と緊張にあふれ、物語を国家試験の場面から始めることを示唆してくれました。

取材先の理容店で従来のシェービングを進化させたメンズエステを受け、顔で皮膚呼吸していることを実感したり、メニューにリフレクソロジーのあるお店では、わきの下のリンパのツボを責められてもだえ苦しんだり……。

そうやって取材を続ける中で見えてきたのは、どこの町にでもある赤白青のサインポールが回転する、職人のオヤジさんと愛想のいいおカミさんが迎えてくれる床屋さんとはまた違う姿でした。衰退産業といわれる理容業界を変革しようと、ハサミとレザーを手に闘うスタイリストと新しいサロンを『キリの理容室』で僕なりに描いてみました。

右からSKY PIECEの髙橋佳孝オーナー、Hair Salon SKY・SKY AZULの池田弘城オーナー、著者

■新しい理容師の物語に、全国の書店員さんからエール!

目標に向かって、悩みながらもぶれることなく突き進んでいく主人公キリにただただ圧倒されました。──吉田奈津子さん(紀伊國屋書店加古川店)

読んでいる私も、キリと一緒に泣いて、笑って、心に虹がかかる一冊です!──山田恵理子さん(うさぎやTSUTAYA矢板店)

こんな理髪店が地元にあったら幸せだ。──井上哲也さん(大垣書店高槻店)

理容室の待合所に女性がいる光景があたりまえになる日もそう遠くないのかもしれない。──金澤恵さん(ヤマト屋書店東仙台店)

忙しく過ぎていく毎日を少し立ち止まり心をやわらかくしてくれる物語でした。──多田由美子さん(明林堂書店大分本店)

小さい頃から父と共に理容店に行っていたので、とても共感できました。理容店の顔剃り。本当に女性にオススメしたいです。──福原夏菜美さん(未来屋ヒロロ店)

理容業界ならずとも、接客に携わる職種なら心に刺さる一文があると思います。──本間悠さん(明林堂書店南佐賀店)

お客様に喜んでもらえるサロンを目指すキリを全力で応援したくなりました。──山本智子さん(未来屋書店高崎オーパ店)

こういう身だしなみを整える仕事にこそ、「真心」というものが宿っていて、その職人一人一人の言葉や所作に強く心を揺さぶられる。──青柳将人さん(文教堂青戸店)

真のお仕事小説に出会えました。──和田章子さん(水嶋書房くずはモール店)

自らの手で未来への道を切りひらくその姿はまさに“髪”対応!この物語は知られざる“床屋”の世界を見事に洗い出し、これ以上カットすることのできない熱き志みなぎる冒険の書だ!──内田剛さん(三省堂書店営業企画室)

接客業とは何たるかを教えてくれる心に響く一冊!──鶴田真さん(正文館書店)

理容師という職人としっかり向き合った骨太の物語。主人公にもお客さまにもドラマがある。──市岡陽子さん(喜久屋書店阿倍野店)

キリちゃんの小顔シェービングしてもらいたい!──山本机久美さん(柳正堂書店甲府昭和イトーヨーカドー店)

若き乙女の奮闘記、最高です。──冨田昭三さん(明林堂書店日出店)

「理容の仕事をここまできちんと書いてくれた本ははじめて。ありがとう、とお礼を言いたい」現役理容師の夫が言った言葉です。しっかりとした取材力と理容業への愛を感じます。──清水末子さん(平安堂長野店)

上野歩(うえの・あゆむ)

1962年、東京都生まれ。専修大学文学部国文学科卒業。1994年に『恋人といっしょになるでしょう』で第7回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。著書に『削り屋』『わたし、型屋の社長になります』『墨田区吾嬬町発ブラックホール行き』『鳴物師 音無ゆかり 依頼人の言霊』『探偵太宰治』などがある。

  • 電子あり
『キリの理容室』書影
著:上野 歩

神野キリ、20歳。夢は理容師になって人気店を開くこと。

お金を稼げて、女性も通える理容店を開いて、自分と父親を捨てて男と出ていった理 容師の母親を見返すため、理容専門学校を卒業したキリ。カットが下手なキリは、千 恵子が一人で切り盛りするバーバーチーで修業することになるが、雑用ばかりの毎 日。幼なじみの淳平は毎日のように実家に来るし、理容学校の同級生のアタルの存在 も気になり始めて――。

衰退産業だなんて言わせない、床屋さん業界に理容女子が革命を起こします!

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