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美女4000人「紀州のドン・ファン」と、セクハラオジサンの違いを考えてみた。

2018.05.09
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男が無心になって女の胸をまさぐり吸いつく姿(“マルサの女”の冒頭みたいなの)を想像すると「赤ちゃんの頃からウン十年たっても似たようなことをやっているんだよなあ……」と圧倒される。そのことが心地よいか不快か愛らしいかについては、相手との関係性で無限に変わるし、それ以外の因子がないため深追いはしないが、「仕様が違いすぎる」ことについてはたまに考える。

男は、すぐ隣にいるのに謎の仕組みで動作し、ときおり自分の半径0.03mmの登場人物として現れる異質な存在だ。

そんな異質な男たちの中でも抜群に異質なのが、本作の著者である“野崎幸助”氏、通称“紀州のドン・ファン”だ。「美女にモテたい」……いや、もっと直接的に言うと「美女とエッチがしたい」という信念をガチで貫き、4000人の美女に30億を貢いだ実業家である。性行為のことを“エッチ”と可愛らしげに呼ぶ男の大半は団塊の世代以前……というのが私のクソみたいな偏見なのだが、彼は77歳。バイアグラは今も不要なのだという。(すごい!)

裸一貫で財をなし、2016年に50歳年下の愛人に6000万円相当の金品を盗まれたことが話題となった人物だ。この辺りについては前作で触れられている。本作では、彼がいかに美女を口説いてきたか、どんな美女と付き合ってきたか、そしてバイアグラ不要なのはなぜなのか……などの武勇伝や美女を抱くための独自のノウハウが、オトコ目線の朗らかな下ネタをちりばめつつ、あけすけに綴られている。

ちょうど偉いオジサンたちのセクハラのニュースで騒がしいさなかに本作を読んだわけだが、彼らに抱く不快感やおかしみとドン・ファンの違い(共通点)は何なのかを考えないわけにはいかなかった。

共通点は、冒頭でも書いたとおり「そんなに女の体が好きなのか?」である。年齢や社会的地位をなぎ倒すほどの「女、大好き!」。オジサンが唐突に「俺ってまだ現役なんだぜ」といったカミングアウトを自主的におこなう場面に何度か出くわしたことがあるが、一貫して彼らは本当にキャッキャ嬉しそうだ。乙女か。グッドラック!と思うばかりだ。

どのみち、こちらとしては、大好きなものはしょうがないですね……と、思うしかない。

では、セクハラで公私ともに火刑に処される老人たちとドン・ファンの違いは何だろうか。大好物にありつくまでのステップだと思う。主に下記の5点がチェックポイントだ。

0)健康な体
1)たっぷりのオカネによる投資
2)折れない心
3)リスク管理
4)謙虚な態度

これらを抑えることによりドン・ファンは世間に邪魔されず、長年自分の欲望を満たすことができている。まあ、たまに豪快に騙されてはいるが。

そんなドン・ファンの方針について1つずつ述べていく。

0)健康な体
本項目は端折る。こういう高齢者は大勢いる。ただ、セサミンに関するリアルなユーザーボイスを聞いたのは本作が初だった。セサミン、グッジョブ!

1)たっぷりのオカネによる投資
最初のパンチとしてこれは重要だ。とにもかくにもオカネによる投資。ドン・ファンは自分の資産が女を引きつけることに、終始何のためらいもヒガミもない。その姿勢は美女とのファーストコンタクトからすでに見られる。

この名刺とは「ドン・ファンスペシャル」と自画自賛する代物でありまして、名刺の裏側に切れ込みがあり、そこに1万円札を挟めるようになっているのです。

徹底している。名刺をもらった美女がオカネ大好きな場合、ここでドン・ファンを1次通過させ、興味のない美女は名刺を捨て(1万円はペッと使っちゃうかもだけど)、女友達との笑い話の鉄板ネタとして昇華し、あるいは彼を大嫌いになって終了だ。

彼は、自分の年齢と財力にも、女と同じように値札がついていることを自覚している。例えばこんな風に。

「余命3年とお医者様に言われてしまってね。ガンなんですよ。それでよかったらお世話していただけませんか」
こんなセリフで女性を口説いたこともあります。余命3年のエサに飛びつく女性は少なくないのですからこの世は楽しいものです。

"余命"とは、「ふつうの若い女@シリアスな病と闘う」と「お金持ちのオジサン」とでかくもノリが違うものなのか。

……というふうに、オカネが寄り添う男女関係の場合、オカネを持つ側のパワーと自意識がこじれない限り、関係は焦げ付かないのだろう。

2)折れない心
ドン・ファンは嫌われることを恐れず口説きまくる。もしも「エッチがしたい」と告げた女に蔑まれたとしても、世の中には美女が大勢いる。銀座や新地の高級クラブに行けば美女たちが両手を広げて彼を出迎え、オカネがほしい女子大生も毎年度ごとに量産され続ける。

3)リスク管理
ドン・ファンは違法な買春をしない。彼が美女たちに注ぐお金はあくまで「お礼」だ。少しでもキナ臭いと「それは違法なので結構です」とお断りされている。こういうリスク管理については、なるほど会社経営者だなと思わせる。

4)謙虚な態度
ここは、オカネのない男でも参考になるのではと思うパートだ。

ドン・ファンは相手のプライドを傷つけることはしない。病院で看護師の女性を口説きまくっても、その流れでお尻を撫でたりはしない。出会いカフェで知り合った女の子に対しても身の上話だけを聞き、お札を握らせ帰したりする(好みの容姿ではないのでリリースしたとも言えるが。ちなみに彼女の身の上話、あれはフェイクだと思う)。

オカネを差し出し、することはして、「こんなこと、はやく辞めなよ。」などと遠い目をして語る「説教オジサン」でもないわけだ。……めっちゃ良い人じゃーん。

ということで、どこまでいっても大金持ちで助平な好々爺(こうこうや)だ。世の助平たちに向かって「やれるもんならやってみな」と優しく語りかける余裕を感じた。

ふだん下ネタから2000kmほど離れたところで涼しく暮らす私でもギリ半笑いで読めたのは、ひとえにこのドン・ファンのお人柄による。

77歳でなお現役のため、数十年にわたる夜の業界への造詣も深く、その辺りもとても面白い。あの、なんかもう下ネタとドン・ファンの武勇伝にかき消されそうなんですが、大事なパートだと思います。

叶うなら総額30億円を得た4000人の美女たちの視点からの話も読んでみたい。きっと、おかしみと冷徹さと優しさに満ちているはずだ。

  • 電子あり
『紀州のドン・ファン 野望篇   私が「生涯現役」でいられる理由』書影
著:野崎 幸助

「私はいい女とHするためだけに生きているし、そのためだけに大金持ちになった」と宣言する、紀州のドン・ファンこと野崎幸助氏。その破天荒の自伝はベストセラーとなった。本作はその第2弾。ドン・ファンが実際にどんな女性たちを抱いてきたのか、その詳細を初めて明かすとともに、「死ぬまで現役」でいられる健康法と精力増進法を指南する。

レビュアー

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花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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