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「パンツほしい」「死ね!」 中学時代の書き込みが現実に?『殺人予告はあの頃』

殺人予告はあの頃(1)
(著:伊藤 イット)
2018.04.24
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好きなミステリー系漫画の連載がいくつか終わってしまい、新しい謎解き系が読みたいなぁと選んだ漫画です。表紙のデザインがクールで、思わず手が伸びました。黒と黄色のバランスや斜めに伸びる紐の構図など、良いデザインだなぁと思います。

物語の始まりは、主人公・遥丘彼方と旧友たちが中学時代、ネット掲示板「虚構人間」を作ったこと。“書き込まれた願いを何でも叶える”。そういう「設定」で作られた掲示板に、彼らはふざけて書き込みをしていました。

時は流れ、大人になっても仲の良い4人。御住司は大手企業の会社員に、居揃木景はモデルに、石蕗大和は実家を継いで漁師に。主人公の遙丘彼方はフリーターをしながら夢である小説家を目指しています。

名前の漢字表記と読み方が少し難しいので、こちらの画像を作りました。この4人が今作のキーキャラクターです。


ある日、彼方宛に突然届いた鹿目真名子のパンツが届いたことから事件が始まります。


真名子は4人と同じ中学に通っていた同級生。黒髪のロングヘアーが印象的な女の子で、主人公・彼方の彼女です。魚屋の娘なので、漁師の石蕗大和とは現在も仕事でつながっています。


■投稿の内容が現実のものになる怖さ

パンツが届いたり、レアカードが届いたりと、中学時代に「虚構人間BBS」に書き込まれた投稿の内容が、なぜか現実のものとなっていることに彼方たちは気がつきます。イタズラかと笑い話にしようとしても、腹の底から笑える気がしない。「虚構人間」という中学時代の自分たちが生み出した架空の生き物が、まるですぐ近くにいるような不気味さ。

数年ぶりにBBSを確認すると、3番目の投稿は大和の死を願うものだった。

気になって大和を追いかけた彼方。書き込みの通り、大和に乗用車がぶつかりかける現場に遭遇。駆け付けた彼方のおかげでなんとかかわすことができましたが、安堵した次の瞬間、後続で突っ込んできたトラックに轢かれて、大和は亡くなってしまう。

3つの投稿が本当に現実になってしまった。しかもそれは自分の投稿が原因の仲間の死。ここから主人公・彼方の、虚構人間の謎に挑む、犯人捜しが本格的に始まります。

中学生の頃に生まれたBBS、虚構人間という架空の生き物、仲間の死。事件の点が、世界に一斉に散らばっていきます。この点をどうやって線で結んでいくか。謎解きの中に隠れる人間関係の見えない闇や、本音が、少しずつ暴かれていく匂いがします。


■犯人は仲間の中にいるのか、外にいるのか

彼方たちは、現実になった4つの投稿から見えてきたルール=「投稿は順番に現実に起きる」に気づきます。過去の投稿をひとつずつ手繰り、犯人の糸口と、現実での被害を小さくしようとする彼方たち。しかし、なかなか上手くいかずもどかしさを覚えます。

彼方が必死になる理由。それは、この掲示板の8個目の投稿が、大切な人である真名子の死を告げているから。

「真名子を死なせたくない」

その強い気持ちが前へ前へ彼方を走らせます。



どうすれば、投稿の内容をかわすことができるのか。彼方・司・景・真名子、4人で協力してできることをひたすら試していきます。


見えない「虚構人間」と戦うチーム戦のミステリー&謎解き系漫画です。中学から20代前半までの間に、まだ描かれていない秘密が隠されているように感じます。

犯人は外にいるのか、それとも、すべてを知っている内側にいるのか。1巻を読む限りでは、どちらに犯人がいてもおかしくない展開です。



■ネット掲示板の特徴が謎解きのヒントになる?


BBSというインターネット上の掲示板をミステリーの真ん中に持ってきた本作。出てくる投稿に「日付」が出てこないことから、実際に何年の何月何日に書かれたのかがわからない仕様です。今後そこに面白い伏線が絡んでくるのではと期待しています。

すべての投稿についているIDもやや気になっていて、インターネット回線のIPアドレスか携帯電話の端末情報を拾って暗号化しているのか、ランダムに自動割り当てをしているのか……。ここが気になっています。


(※イエローのマーカーは見やすくするために筆者が入れています)


【☆K☆】と【†ハルカ カナタ†】の同一人物が、別日に投稿しても同じIDが割り当てられるということは、回線か端末で決まっているのかなぁという感じでしょうか。名前を同一にするとIDが自動で同じになる仕組みなのかもしれません。

投稿画面にID入力欄がないので、投稿者が指定できないようです。ということは、投稿時に何かの情報を自動で拾っているのかなと思います。


URLが載っていたのですが、【虚構人間-BBS-】というサイト自体はサブドメインを割り当てられているので、掲示板作成サービスを利用して作られたのかなと思いました。


(※イエローのマーカーは見やすくするために筆者が入れています)

サーバーの用意やプログラム制作が彼方の自作ではない可能性が高いなと思いました。もし自作であれば、事件を早く解決するために真名子の死を予言した「????」というアカウントを、サーバーに入ってログを確認するという方が自然かなぁと。「俺が作ったサイト」というのは、「BBS作成サービスを使って作った掲示板」というコトなのかもと感じます。

よく見ると「http」なので、最近ベーシックになってきた「https」に仕様変更していないところを見ると、そこそこ放置されてるか、ゆるい運営のサービスで、仕様変更があまりなさそうだなぁと思いました(この辺は一概には言えませんが)。


BBSを軸にしているので、このあたりのインターネットのちょっとした細かい設定も謎解きの材料になったら嬉しいなぁと今後の展開に期待です。

  • 電子あり
『殺人予告はあの頃(1)』書影
著:伊藤 イット

時を越え、呪いの予言は成就する。中学時代、WEB掲示板を作った──“虚構人間”。書きこまれた内容を何でも叶える。そういう“設定”だった。数年後、虚構が現実を侵しはじめる。1日に1つずつ、確実に実現される過去の書きこみ。7日後に待つのは、恋人の死。大切な人を守るため、遥丘彼方の運命との戦いがはじまる。

レビュアー

兎村彩野 イメージ
兎村彩野

AYANO USAMURA Illustrator / Art Director 1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始、17歳でフリーランスになる。万年筆で絵を描くのが得意。本が好き。

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