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『SHAMAN KING』待望の新章! 武井宏之×担当編集「いまこそマンキン時代」

2018.05.07
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『SHAMAN KING』の主人公は、先祖代々続くシャーマン(霊能力者)である麻倉葉(よう)。その能力が忌み嫌われ、人間の友達がいなかった中学生の葉だが、仲間を得て全知全能の力をもつシャーマンキングを目指すことに。「なんとかなる」が口癖で、「楽に生きたい」と願う少年漫画のセオリーを覆すユルい主人公と、個性豊かなキャラクター陣、社会のマイノリティや善悪の在り方に目を向けたこれまでにない物語が多くのファンを魅了してきた。今回、「少年マガジンエッジ」で始まる待望の新章について、著者の武井宏之さんと担当編集・吉田が語り合った。

マイノリティに光が当たり始めた時代に

吉田 4月に発売した「少年マガジンエッジ」ではプロローグを掲載しましたが、5月17日発売号からいよいよSHAMAN KINGの新章『SHAMAN KING THE SUPER STAR』の連載がスタートしますね。毎号2話ペースでの掲載ですが、1話目と2話目には前作の主人公や主要キャラクターも登場して、「シャーマン」とはなんぞやもわかる。いい意味で気負いがなくて、スローなスタート。初めて読む人にもわかりやすいし、ファンもすごく喜ぶだろうなぁと思いました。

武井 キャラクターも多いし、前作ではだいぶ大きなお話になりましたからね。今回、特に気を遣ったのは「初めて読む人にもやさしく」ということ。とはいえ、前作を読んでいた人も楽しめるように、両方にとても気を遣いましたよ。だから吉田さんにネームを見せるのも久々に緊張しました。新人みたいに(笑)。

吉田 武井さんはいずれもう一度『マンキン(シャーマンキングの略称)』には帰らなきゃいけない作家さんだったので、私はたまたまそのタイミングに横にいたという感じですが、一読者としてもとても楽しみです。

武井 時代もそういうムードになってきたと思います。マイノリティに光が当たるようになってきたというか。僕自身もこの作品も、ちょっとマイノリティな認識でいるんです。『マンキン』は“弱いものの味方”でしたから。

吉田 逆に言えば、20年前の連載開始時はそういう雰囲気の時代ではなかったわけですよね。

武井 当時は、「周りにないものを描く」というのが主体だったのかな。みんなと同じことをしてもしょうがないと考え、誰も使っていない題材を扱ったり、バトルマンガに背くやり方をしたり、数字を否定してみたりして。物質的な興味が薄くなっている今の時代には、共感する読者が当時よりも多い気がしています。

吉田 「がむしゃらに頑張らなくてもいい」というのも、今の時代はありますよね。

武井 うん、一番を獲らなくてよくなった。あと、前ほど流行(はや)りを追わなくてよくなった。流行りが一瞬で過ぎ去っていくから、その流れに乗らなくていいというか、流行りに関係なく寄り添える。その意味では初の試みです。生まれ変わった気持ちで描いていますよ。

気になる新章の内容とは?

吉田 たぶん読者は、葉の息子である麻倉花が主人公となった『シャーマンキングFLOWERS』の続きを想像していると思うのですが、ちょっと違いますよね。ある種の集大成的なものになりそうです。武井さんがつくられてきたすべてのタイトルが、もうひとつの地続きの世界観で展開されるというか。「もう一度この世界を楽しんでください」というような。

武井 なんて言ったらいいのかな。しばらくは読み切りをシリーズでやっていくんです。それでも、お話はつながっている。過去のこともやりながら、すべてが1本につながっていくんです。第1弾のキャラクターとその次のキャラクターが交わった部分で、ちゃんとしたエンディングがさらにあるんですよ。2つの話を経てからでないと、1話目のエンディングも来ないわけです。

吉田 おお!? なるほど。時間軸上は『FLOWERS』の時代ですよね。今までのキャラクターが「スター」として続々登場するという。

武井 “シャーマンキング ザ スーパースター”としてね。オムニバス的に登場しつつ、まとまっていくというスタイルです。今回はそれぞれのキャラクターの活躍がしっかり見られるシリーズにしたいので、それぞれにスポットを当てて掘り下げていきます。いくつものお話があって、最後に合流してまとまるという。映画の『パルプ・フィクション』に近い感じ、と言えばイメージしやすいかもしれない。

吉田 新章だけ読んでももちろん面白いし、既存のファンの方も「ああ、このキャラクターがこういうふうに出てくるんだ!」と楽しんでもらえる構成ですね。

みんながクリエイターになった20周年

吉田 今年は『マンキン』20周年ということで、連載に先がけて全登場キャラクター376体の人気投票を行いましたが、大きな反響がありました。SNSを使って組織票でたくさんの愛を送ってくれたファンの方々がいたり。

武井 ありましたね、組織票が(笑)。そうやって結託して動いてくれるというのもひとつのムーブメントですから、大事な動きです。いい企画でした。

吉田 上位のキャラクターはこれから外伝やラノベ企画にもつながるので、そこへの期待感からもいっぱい投票していただいて、ありがたかったですね。本当に『マンキン』はすごいなと思うのは、こちらが仕掛けようとする前から「マンキンは20周年ですよね。ぜひ記念グッズをつくらせてください」と、いろいろなメーカーさんから続々と商品企画が来ていることです。しかも、「実は当時大ファンだったんです」という『マンキン』を読んで育ったクリエイターさんたちばかりです。

武井 そういうクリエイターの方々に響く作品だったというのは、誇りですね。作品を愛してくれた人たちが大人になった今、力になってくれています。

吉田 武井さんの、圧倒的なまでのキャラクターのデザインセンスが大きいと思います。「あんなデザインをしたい」という人たちが、ものづくりのお仕事に就いていて。

武井 ちゃんと好きでつくってくれる人たちだとわかるし、安心して任せられます。商売ありきの場合だと「あなた全然好きじゃないでしょ」という人が来て、もう絶対これ失敗するなとわかっちゃう。いいものをつくればちゃんと必要とする人がいるし、ずっと残るものにもなる。

吉田 今回ラノベ化も展開していくんですが、その作家さんも『マンキン』がもともと大好きな方で、「喜んで!」という感じでしたしね。20周年って、実はこちらサイドが意識して何か企画を動かしたというのがないんです。つくり手主導じゃない20周年という気がします。

武井 みんながクリエイターになった20周年、ですね。僕自身も刺激を受けるし勉強にもなる。何をすべきか、何を学ぶべきか、今の自分の在り方についていろいろ考えるんです。昔はパフォーマンスをすることに全力でしたが、今は作品にやさしく寄り添うようになりました。この新章も、いろんな人に親しんでほしいですね。

武井宏之・吉田守芳

『猫ヶ原』を経たからこそ、また人が描けた

吉田 武井さんには、「マガジンエッジ」で『マンキン』を始める前に『猫ヶ原』の連載をしていただいたのも良かった気がしています。主人公は猫。飼い猫の証である鈴を太刀・虎燵にぶら下げて、野良としての旅を続けるノラ千代です。登場するキャラクターたちも、ほぼ猫という物語ですね。

武井 あの頃は、人が描きたくなかったというか……。ちょっと疲れていました(笑)。疲れていると、人を描くのが嫌になっちゃうんだよね。

吉田 でもだんだん描かれるうちに、人に近づいてきて。

武井 そうそう。やっとリハビリが終わった気がします(笑)。『猫ヶ原』を経たことは大きいですね。一度人と離れると、かえって人が見えるようになる。人そのものを直接描くっていうのはやっぱり、描きにくい部分もあるんです。いろいろ気遣うところが多すぎて。でも、動物だったらまあいいかというのがあって、ちょっと離れたところから見られるから、こっちもおぼれないですむというか。

吉田 きっと『猫ヶ原』もあって、いい意味で気負わない新章になったんだと思います。いきなりガツンと「マンキン!」と投げるのではなく、「さあ、これから会話をしようか」みたいな。なんでしょう、将棋の第一手を動かしたような感じがありました。時代がマイノリティに目を向けて、『マンキン』に近づいたというお話もありましたけれど。

武井 風潮が変わりましたよね。前作も今改めて読んでくれたら、すごく共感されるんじゃないかなと思います。

吉田 なんでなんでしょうね。葉の「なんとかなる」というゆるい姿勢も、今の時代に非常にマッチしているんでしょうね。

武井 読んでくれていた世代が大人になったというのもあると思います。「今になって深く理解したところがある」という声も、読者からいっぱいあるんですよ。

吉田 新章の連載が始まったら好きな人が自然と集まってくれるだろうなという、ファンの方々への信頼感みたいなものが『マンキン』にはあります。「マガジンエッジ」で前作の1話目を再掲載した号は、アニメイトさんでは通常の10倍も本誌が売れました。20周年は、そんなファンの人たちの“居場所”をつくる感じに近い気がしています。こちらから働きかけるより前に、大人になったファンの方からのコラボ商品オファーも多いわけですしね。

武井 繰り返しになるけど、クリエイターが数多く育ってくれたというのがこの作品にとって一番大きいと思っているんですよ。

吉田 武井先生に届くファンレターも、絵が描いてあったり、写真が同封されていたりして、手紙だけじゃないケースがすごく多いんですよね。本格的なフィギュアをつくってくれるファンの方もいて、「私も何か表現しよう、何かつくろう」という人がすごく多いなぁと実感しています。

武井 僕自身も、若い頃はものがつくれたら何でもよかった。マンガでなくてもよかったのかもしれない。今の時代だったらゲーム会社に就職していたと思いますよ。

吉田 ゲーム業界からも続々とコラボの申し込みが来てます(笑)。どんなゲームが生まれるかも楽しみです!

たけい・ひろゆき イメージ
武井宏之(たけい・ひろゆき)

1972年青森県生まれ。1996年、「週刊少年ジャンプ」にて『デスゼロ』でデビュー。1997年には『仏ゾーン』で初連載。1998年に『SHAMAN KING』の連載をスタートし、TVアニメ化、ゲーム化もされる大ヒット作となる。その後、『シャーマンキング0-ZERO-』、『シャーマンキングFLOWERS』も発表。その他の作品に、『ユンボル-JUMBOR-』『機巧童子ULTIMO』( 原作スタン・リー) など多数。2015年、「少年マガジンエッジ」にて『猫ヶ原』の連載を開始。2018年6月号(5月17日発売)での『SHAMAN KING』新章連載スタートを前に、5月号にてプロローグが掲載された。

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