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糸井重里さん絶賛!元祖「NHK_PR1号」が描く『伴走者』

この本から変わることがいくつもあるだろう。
まずは、読んだあなたが変わる。――糸井重里さん

2018.02.20
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「お前は伴走者だ。俺の目だ」

ばんそうしゃ【伴走者】

視覚障害のある選手が安心して全力を出せるように、選手の目の代わりとなって周囲の状況や方向を伝えたり、ペース配分やタイム管理をしたりする存在。

夏・マラソン編

「速いが勝てない」と言われ続けた淡島は伴走者として、勝利に貪欲で傲慢な視覚障害者ランナーの内田と組むことに――。

冬・スキー編

優秀な営業マンだった涼介は、会社の方針で全盲の天才スキーヤーの女子高生・晴の伴走者をするよう命じられるが……。

刊行記念! 浅生鴨さん特別エッセイ

著者の浅生鴨さんは、NHK職員時代にソチパラリンピックのCM制作のための取材をする中で、選手でもコーチでもない「伴走者」の存在を知ったそうです。小説『伴走者』を書き上げるために、多くの視覚障害のある選手や伴走者に取材をした浅生さんに、エッセイをお書きいただきました。

文/浅生鴨 写真/講談社写真部・杉山和行(2枚目のみ担当編集・須田)

視覚障害者ランナーの和田伸也さんと伴走者の中田崇志さんが練習しているトラック

最初にこれだけは言っておかなきゃならないと思っていることがある。『伴走者』は、僕が頭の中で想像して書いた物語、つまりフィクションだ。

もちろん実際の競技や選手たちから大いにヒントをもらっているし、何人もの競技関係者や視覚障害者をモデルにして登場人物を造ってはいるけれども、あくまでもフィクションであって、いわゆる事実や実際にあった出来事を元にして書いたものじゃない。

だから、どこか現実から離れて、ある種の理想を詰め込んでいるようなところがある。でもたぶん、それはフィクションだからこそ、できることなのだとも思っている。

放送局に勤めていたときに、たまたまパラリンピック放送を宣伝するCMをつくる担当になり、あれこれ企画を考える中で知ったのが伴走者という不思議な人たちの存在だった。そもそもアスリートの多くはエゴの塊だし、特にレジャーではなく競技スポーツをやっているのであれば、何よりも勝ちにこだわっているはずなのに、彼らはまるで他者の勝利のために日々のトレーニングを重ねているように見えた。

ところが、詳しく話を聞かせてもらううちに、彼らは他者のためだけに戦っているのではないことが次第に僕にもわかってきた。彼らが戦うのは、他者のためでもあるが自分自身のためでもある。そこには利己的であることと利他的であることとが共存している。それがおもしろいと思った。僕の理想とする他者との関わり方がそこにあるように感じた。

今からちょうど4年前、ソチパラリンピック放送の宣伝で僕は「伴走者になろう」というコピーを書き、アルペンスキーの伴走者が出演するCMをつくった。ゲレンデを滑降する伴走者の後ろ姿だけを映し続けたそのCMは、それなりに評価されたように思う。

本のカバーの撮影風景。左が和田さん、右が中田さん

それから数ヵ月経って、編集者から小説を書いて欲しいと依頼されたときに「伴走者の物語を」と提案したのは、きっとそのあともずっと僕の心の中に伴走者という存在が残り続けていたからなのだろう。

僕たちは他者とどのように関わればいいのか。人が人に手を差し伸べるとはどういうことなのか。信頼とは何なのか。さまざまな局面で僕の心に浮かぶ疑問に、彼らなら答えてくれるような気がした。

物語の芯はぼんやりと見えていたのだけれども、芯だけでは物語にならない。CMをつくったときに多少の話は聞いてはいたものの、それではとても足りないので、とにかく取材をすることにした。

競技関係者のつてを辿り、ときには海外での試合も観戦した。会うことのできた伴走者たちからは、競技のことだけではなく、幼少時の話からサポートする選手の悪口に至るまで、聞けることはなんでも聞いた。

マラソン編は競技人口も多いので、それなりに多くの人から話を聞くことができたのだけれども、スキー編は選手も伴走者もほとんどいないので取材相手を見つけるのに苦労したし、主人公はあくまでも伴走者だけれども、やっぱり視覚障害者の取材も必要で、そちらでもなかなか苦労した。

けれども、誰の話を聞いてもその度に驚きがあり、僕自身に潜んでいる偏見や勘違いや独断や無知を思い知らされることになった。取材があまりにもおもしろくて、気がつくと2年ほど経っていた。そろそろリオパラリンピックが近づいているぞと脅され、あわててマラソン編を書いた。

その後、また取材ばかりの2年が過ぎ、そろそろピョンチャンパラリンピックだぞと脅され、またまた慌ててスキー編を書いた。どうやら僕はいつも脅されてから慌てて書くらしい。

快晴の青空のもと、何パターンも撮影させていただいた

正直に言うと、自分が何を書いたのかまだはっきりとはわかっていない。それでも書いている途中では気づかないのに、書き終わってみて初めて自分でわかることもある。たぶん僕はこの物語が書きたかったのだ。人が人とともに生きる姿をじっくりと見つめたかったのだ。

芯しかなかった物語を膨らませてくれたのは、取材に応じてくれた多くの人たちだ。彼らが僕の空想に大きな翼を与えてくれた。感謝しかない。

【浅生鴨さん制作の『伴走者』動画!】

全国の書店員さんが本作の“伴走者”になって下さいました!

海の青さが、空の青さが、心のスクリーンに広がった。パラリンピックのマラソンとスキーを心の伴走者になりながら一緒に楽しめる、まさに胸熱な1冊です。――山田恵理子さん(うさぎやTSUTAYA矢板店)

生涯でこんなに人を信頼することってあるだろうか? なんて幸せなことだろう。並々ならぬ信頼関係を築く選手と伴走者にただただ感動した!――内山はるかさん(SHIBUYA TSUTAYA)

「お前が不安ってことは、俺も不安ってことだ」全てを委ね一心同体だからこそのセリフに、鳥肌がたった。――山本智子さん(未来屋書店高崎オーパ店)

見えないからこそ、伴走者を信頼し、ひとつになって戦う彼らの姿は、繊細でいてたくましい!――岸田安見さん(ブックファースト野田アプラ店)

人は弱さを「知る」ことで強くなれる。それは同じ人間なら障害の有無に関係はない。人は常に誰かの「伴走者」なのだと思いました。――西村友紀さん(ブックランドフレンズ)

彼らは本気だ。彼らの本気に、生き様に、障害というフィルターは必要ないのだ。こんなにも無知だった自分が恥ずかしく、そして悔しい!この冬は、パラリンピックから目が離せなくなりそうです。――本間悠さん(明林堂書店南佐賀店)

視覚障害のある人、ない人。立場や状況が違っても、まっすぐ向き合う時、その関係は「人と人」になる……と気づかされた。スピード感あふれる、熱い物語!――辻香月さん(大垣書店イオンモールKYOTO店)

クールな想いと熱い想いがぶつかり合い、胸がたぎるマラソン編と、青春そのものなスキー編、一冊で二度美しい作品です。――竹腰香里さん(丸善名古屋本店)

この物語は僕らの見えない景色を見せてくれる。読み終えた先には見たことのない絶景が待っている。「弱さがない人は、強くなれない」まさに人生の真理。生き抜くことの原点を教えてくれる雄弁な作品だ!――内田剛さん(三省堂書店営業企画室)

本気の心は人の心も動かす。読み終わり、胸が熱くなりました。この本の伴走者になりたい。売りたい。そう思わずにはいられません。――福原夏菜美さん(未来屋ヒロロ店)

浅生鴨(あそう・かも)

1971年、兵庫県生まれ。作家、広告プランナー。NHK職員時代の2009年に開設した広報局ツイッター「@NHK_PR」が、公式アカウントらしからぬ「ユルい」ツイートで人気を呼び、中の人1号として大きな話題になる。2013年に「群像」で発表した初の短編小説「エビくん」は注目を集め、日本文藝家協会編『文学2014』に収録された。2014年にNHKを退職し、現在は執筆活動を中心に広告やテレビ番組の企画・制作・演出などを手がけている。著書に『中の人などいない』『アグニオン』『猫たちの色メガネ』がある。

  • 電子あり
『伴走者』書影
著:浅生 鴨
「泣けた、とは言いたくない。それとはちがうのに、涙がでるのだ。」 ――糸井重里さん
自分ではなく他人のために、勝利を目指す。 熱くてひたむきな戦いを描く、新しいスポーツ小説!
「お前は伴走者だ。俺の目だ」
ばんそうしゃ【伴走者】 視覚障害のある選手が安心して全力を出せるように、選手の目の代わりとなって周囲の状況や方向を伝えたり、ペース配分やタイム管理をしたりする存在。
◆夏・マラソン編 「速いが勝てない」と言われ続けた淡島は伴走者として、勝利に貪欲で傲慢な視覚障害者ランナーの内田と組むことに。パラリンピック出場を賭け、南国のマラソン大会で金メダルを狙う二人のレースに、次々に試練が襲いかかり……!?
◆冬・スキー編 優秀な営業マンだった涼介は、会社の方針で視覚障害者スキーの伴走者をするよう命じられる。1位にこだわり続け、ピーク時に選手を引退していた涼介だったが、全盲の天才スキーヤーの女子高生・晴と出会うことで、少しずつ変わっていく。
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