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【サッカー男子必読】本気のサッカーがしたい夫と、別の男に走る妻

30歳、結婚3年め、共働き。
夫は本気で夢を追い始め、妻は違う男に惹かれ始めた。初めて訪れた危機を二人は乗り越えられるのか!?

報酬ゼロでも「本気のサッカー」に打ち込み、チームのJリーグ入りを目指す……そんなサッカー選手への取材を通して完成した小野寺史宜さんの小説『それ自体が奇跡』。

刊行を記念して、著者・小野寺史宜さんの特別エッセイや、元サッカー日本代表の岩政大樹氏、東京国際大学駅伝部所属の渡邊和也氏からのメッセージ、そして全国の書店員さんからの応援の声をお届けします。

2017.12.22
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岩政大樹

そうでした。好きなことを思い切りやるって、近くの人を想うこととセット。今この本に出会えて良かった。

岩政大樹氏(元サッカー日本代表・東京ユナイテッドFC所属)

渡邊和也

奇跡を引き寄せるのは、全て挑戦からなんだ! この本を読んですごく共感できました。

渡邊和也氏(東京国際大学駅伝部所属)

刊行記念! 著者・小野寺史宜さん特別エッセイ

『それ自体が奇跡』は30代の田口夫妻が主人公。会社員の夫の貢が「本気のサッカーがしたい」と妻に宣言するところから、物語が始まります。貢が所属するサッカーチーム「カピターレ東京」のモデルになったのが、東京23区に初のホームスタジアムを構えJリーグ入りを目指す「東京ユナイテッドFC」です。実際に選手に取材をしたり、試合を観戦した著者の小野寺史宜さんにエッセイを寄稿していただきました。

東京ユナイテッドFCというサッカーチームから授かった小説

(文/小野寺史宜 写真/東京ユナイテッドFC提供)

サッカーに関する小説をこれまでいくつか書いてきました。プロも書きましたし、アマも書きました。今回は、プロを目指すアマ。とても興味深い題材です。編集部のかたが東京ユナイテッドFCのかたと旧知の間柄であったため、2016年の夏に取材をさせていただくことができました。

東京ユナイテッドFCは、東京23区をホームタウンにJリーグ加盟を目指すクラブです。当時の名は、LB-BRB TOKYO。

僕は小説の主人公であるカピターレ東京の田口貢をディフェンダーにするつもりでいました。そしてクラブの共同代表の人見秀司さんが紹介してくださったのがまさにそのディフェンダー、現在も主力として活躍されている三上佳貴さんと2017年1月に退団なさった大山元輝さんでした。

左側がDFの三上佳貴選手

お二人は現役選手。僕よりもずっと歳下です。カッコいいなぁ、と思いました。高いレベルで競える運動能力を有したかたがたを自分がほぼ自動的に尊敬してしまうことを、あらためて実感した次第です。

有意義なお話をあれこれ聞かせていただきました。報酬はゼロ、なのに本気のサッカー。楽ではありません。お二人は社会人、フルに仕事をされています。会社の人事異動で遠方に転勤→退団。そうなることもあり得るわけです(実際に大山さんはそれで退団されました)。クラブが念願のプロ化を果たしたとしても、そのときご自身は現役を退いているかもしれません。それでもお二人は、日々の仕事をこなしたうえで真剣にサッカーと向き合っていました。

何故そんなことができるのか。答は簡単。サッカーが好きだから、だと思います。

これはあくまでも僕の勝手な推測です。まちがえていたらすみません。

2017年シーズン、東京ユナイテッドFCに元日本代表の岩政大樹さんが加入されました。岩政さんもまたディフェンダーです。田口貢とプレースタイルが少し似ているかもしれません。

取材後、試合は三度観ています。2017年は、9月3日(日)でした。10チームからなる関東サッカーリーグ1部後期6節。場所はフクダ電子アリーナ。プロの試合も行われる立派なスタジアムです。観客は決して多くありません。その代わり、集中して観られます。選手一人一人の声が聞こえます。ベンチからの指示の声さえ聞こえます。贅沢です。

岩政さんも三上さんもスタメンフル出場。ともに経験を感じさせる「決めさせない」粘り強い守備で、2対0の完封勝利を見せてくれました。

後列左から3番目が岩政大樹選手

上を目指す。言うのは簡単ですが、実行するのは大変です。上のリーグに進むためには、そのときいるリーグで優勝するなり上位に入るなりしなければなりません。それを何度もやらなければなりません。チームとしての強さのほかにクラブとしての強さも求められます。例えば、18歳以下の育成組織を保有したり、ホームスタジアムを用意したり。Jリーグの壁は高いのです。

とはいえ、選手の皆さんがピッチでできるのは、いつもどおりにボールを追い、ゴールを狙うことだけ。皆さん、実際にそうします。骨折でもしたら明日の仕事に響くからヘディングで競り合うのはやめとこう。そんな選手はおそらく一人もいません。ケガをしたらそのときはそのとき。そう思える人でないと、初めからプレーはしないでしょう。

東京23区にプロサッカークラブができることを、僕も楽しみにしています。いつかクラブそのものの話も書きたいです。サッカーが好きだから、書くと思います。 『それ自体が奇跡』は夫婦を描いた小説ですが、サッカーが占めるウェイトも大きいです。東京ユナイテッドFCという実在するチームのおかげで、作品に熱と厚みを持たせることができました。楽しんでいただけたらうれしいです。よろしくお願いします。

田口夫妻の姿に書店員さんから応援の声!

この夫婦、許せない所もあるけれど、なんか憎めなくて、ずっと見ていたくなる位に愛らしいです。──青柳将人さん(文教堂書店青戸店)

ノリツッコミのような軽やかな文章に表れる心の揺れ、それもまた人間の本当の姿で、無理しない感じがとても素敵でした。――市岡陽子さん(喜久屋書店阿倍野店)

三年目の浮気なんて歌があったけど、三年目の本気、しかも相手はサッカーだ! 結構、深刻なテーマだと思うんだけど、小野寺氏のカラッと爽やかな文章で、すらすらグイグイ読ませてくれる。――井上哲也さん(大垣書店高槻店)

赤の他人がいっしょになる。確かに「それ自体が奇跡」だ。ラストのシーンはいいな!――冨田昭三さん(明林堂書店別府本店)

夫婦と一言で言っても、色んな形があって、それでいいじゃないか、と言ってもらった気がしました。肩の力が抜けた気がします。――武方美佐紀さん(SerenDip明屋書店アエル店)

30代の夫婦って、こんなふうなのだろうなぁ。夢を、好きなことを追いかける夫に少しだけ不満や不安を感じたり。出会ったことや、生きていること、一緒にいることだって、本当にそれ自体が奇跡なんだって気づくのですよね。――佐伯敦子さん(有隣堂伊勢佐木町本店)

微妙な二人の距離感が絶妙に面白い。サッカーファンとしては、試合描写がリアルでびっくり。――三瓶ひとみさん(ジュンク堂三宮店)

同じ事柄でも男性、女性から見る目は全然違うのだ! どこまで行っても平行線なのだ! でもその平行線が離れないことが肝心、そんな気持ちにさせてくれる小野寺ワールドここにあり。――吉江美香さん(教文館)

一気読みでした! 綾の気持ちがすごく良くわかる!――山本智子さん(未来屋書店Book&Cafe高崎オーパ店)

小野寺史宜(おのでら・ふみのり)

1968年千葉県生まれ。2006年「裏へ走り蹴り込め」で第86回オール讀物新人賞を受賞してデビュー。2008年『ROCKER』で第3回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『カニザノビー』『牛丼愛 ビーフボウル・ラヴ』『ホケツ!』『ひりつく夜の音』『太郎とさくら』『本日も教官なり』『リカバリー』などがある。本作は『その愛の程度』『近いはずの人』に続く「夫婦三部作」のラストを飾る作品である。

  • 電子あり
『それ自体が奇跡』書影
著:小野寺 史宜

田口夫妻が勤める百貨店で唯一の定休日である元日。夫の貢が「本気のサッカーがしたい」と宣言し、妻の綾が「絶対ダメ」と反対したことから、二人の波乱の一年が幕を開けた。30歳、結婚3年め、共働き。夫が本気の夢を追い始め、妻は別の男に惹かれ始めた。初めて訪れた危機を、田口夫妻は乗り越えられるのか!?

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