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なぜ『三つの石で地球がわかる』のか? 栃木まで石を割りに行ってみた。

2017.10.15
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ガツーン! とハンマーで石を割るのが好きだ。石を割った断面は、だいたいが表面と同じ模様をしている。しかしながら、ときおり水晶やキラキラと輝く宝石のような断面が姿を現すことがある。割るまでわからないその中身。開けるまで何が入っているかわからない、プレゼントボックスのようなものである。


石の中に広がる世界

小学生のころからハンマーを持って森に行ったり川に行ったり、裏山に行ったりした。とりあえず見つけた石をかたっぱしから割って「キラキラと輝く宝石」を見つけることにハマっていたのである。今となっては宝石なのか金属なのか、それともただの模様なのかわからないが、当時は石の中からキラキラするモノが見つかると心を躍らせてコレクションしていた。

人類の歴史より古い地球創世の時代、加熱やら圧縮やら化学反応やらで密封された世界が、石のなかにある。そう考えるだけで想像力は無限に広がった。ああ、どんどん石を割って、封じ込められた世界を覗いてみたい。

そんな「石を割りたい欲」が数十年の時を経て湧いてきた。その理由は、書籍として販売されている『三つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち』(著: 藤岡換太郎)にある。



石とは何なのか!?

この本には、石の概念から石の種類や歴史まで、あらゆる石の情報が「読み物」として詰まっている。特に興味深かったのは、石と岩の違い。皆さんは明確にわかるだろうか? 明確に言えといわれても「えーっと、大きさ……かな?」と答えることしかできない人もいるはず。石や岩は通俗的な名称であり、科学的な名称ではないそうだ。

また、本書には結晶の概念についても書かれており、「結晶とは、ある物資を構成している原子や分子が、規則的につながった状態になっているもの」(本書より引用)なのだとか。結晶というとキラキラとしたクリスタルや宝石のようなものを思い浮かべるが、もっと広い概念を持っていることが分かった。

石、岩、結晶……。ふつふつと「石を割りたい欲」がわいてきた。数十年ぶりに感じた石を割りたい欲。ハンマーで砕き、中から現れた美しい断面を見てみたい。オトナになってから割れば、少年時代とは違った感動が訪れるのではないだろうか。

水はないけど石だらけな川が存在する

気がつけば、すでに新品のハンマーを用意し、新幹線に乗って栃木県へと向かっていた。那須塩原市には、蛇尾川と言われる水が流れていない川がある。

明確には、あまりにも微量の水のため、川底が石ばかりのため、水が川底のさらに下を流れている。見ためは枯れた川だが、見えないところを水が流れているのだ。



この蛇尾川にはゴロゴロと石が転がっており、好きなだけ石を割り続けることができる。どんな石があるのか、検証するにはバッチリな場所といえよう。余談だが、蛇尾川には伝説があり、弘法大師が「住民が水をくれなかったので川を枯らした」ともいわれている。歴史としても非常に興味深い伝説の場所である。

生憎の雨だったが、蛇尾川はほぼ増水することなく枯れていた。ほんの1センチほど、水が川底に現れて流れていたが、それも一部分のみ。


良い感じの石は発見できるのか?

ハンマーを片手に持ち、川底を歩いて石を探す。蛇尾川に石を割りにきたのは初めてだが、いやはやビックリ、こんなにも良質で魅力的な模様の石がゴロゴロしているとは!

木星のようなマーブル模様の石から、真っ赤な火星のような石まで、さまざまな「割りたい欲」を増幅させる石ばかり。ちなみに、いちばん嬉しいタイプの石は、表面とはまったく違う模様の石。経験上、そういう石にかぎって、キラキラと輝く美しい中身をしているものなのだ。





さっそくハンマーで叩き割る。カコーン! ガツーン! カコーン! ガツーン! 無尽蔵に石があるので、目に入った石をかたっぱしから割っていく。キレイな断面のものはあるものの、子どもの頃にときめいたクリスタルのようなキラキラした石に出会えない。なかなかの苦戦。

石は硬いものばかりではない。柔らかいものは、1回叩いただけで割れ、ボロボロと崩れる。柔らかい石は亀裂から雨水らや汚れが浸透して、あまりキレイじゃないのでハズレ。

本書によると、石は熱だけで作られるわけではないらしい。水が作る石、生物が作る石もある。つまり火に由来しない石があるとのこと。異様にもろい石は、いったい何が由来なのか、非常に興味がわいた。


東京と京都では地面の色が違う

石を割りはじめて1時間が経過したころ、おおっ! ようやく純白の結晶のような石が出現。赤茶が混ざっているが、なかなか味のある白。クリスタルのように透明ではないが、美しい色合いをしている。手で触るとざらざらとしており、硬いのに、感触がジェラートのよう。

もっと宝石のような輝く石を見つけたかったが、この日はまったく見つけられなかった。日を改めて3回ほど石を割りに行ったものの、見つけられなかった。もしかすると、キラキラ系の石は川には少ないのかも!? いや、本書によると東京と京都では地面の色が違うらしいので、地域によって石の質が大きく異なるのだろう。



石の魅力を改めて教えてくれる

石を割る行為。オトナになっても、その楽しさは変わらずだった。数人の知人に何しに栃木まで言ってたの? と言われ「いやー、石を割りにちょっと」と返答をしたところ、痛い人を見る視線を向けられたのは言うまでもない。

でも、何も恥ずかしがることはない。石を割る行為は、地球を知る行為に他ならないからだ(ということにしておいてほしい)!  石に対する興味を改めて教えてくれた『三つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち』に感謝したい。最後のシメにモノリスを出してくる「良い意味でのブッ飛びっぷり」も最高だ。

  • 電子あり
『三つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち』書影
著:藤岡 換太郎

岩石や鉱物には興味があるけれど、石の名前がどうもややこしくて覚える気になれない……という人は多いようです。
たしかに一般向けの石の図鑑や入門書も、美しい石の紹介にとどまったものや、歴史的・文化的な側面から石を語るものが多く、正面から「石」を論じるものはあまりありません。
それも、石の名前があまりにも複雑で、一般の人にはハードルが高くなるからでしょう。
しかし、地球は「水の惑星」であると同時に、太陽系で最も多い数千種類もの石が存在する「石の惑星」でもあります。それだけに石の世界は科学的好奇心を刺激される深さ、面白さに満ちています。
せっかく地球に住んでいながら、その恩恵を享受しないのは、もったいないことです。
そこで、まったくの石の素人の読者でも、たった三つの石の名前を覚えるだけで石の世界が楽しめるように企画したのが本書です。
「しんかい6500」に51回乗船という記録をもつ、地球を知り尽くした著者が、石の世界のしくみやなりたち、地球の進化と石の濃密なかかわりなどを、3つの石の物語にのせてみごとに描ききりました。
読めば必ず、複雑そうな石の世界が驚くほどすっきりと頭に入り、地球が太陽系で特別な惑星に進化するまでの道筋がわかり、そして石がいとおしくなるはずです。

レビュアー

トップ・アンダーソン

とりあえずその場に行って確かめないと我慢できないフリージャーナリスト。南アフリカから北朝鮮まで、幅広く活動中。行った先に何もなくても、そこに思いを馳せらせる。

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