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“最底辺”からの脱出。他人を踏みつけてまで生きるという選択
主人公のまだ半分子どもゆえの考えの甘さ、思慮の浅さ、そして他人への冷酷さ。なんて描写が見事なんだと思ったら、作者の実経験に基づくようで。主人公に性的な興味を持ち、助けよう、いいとこ見せようとすればするほど足を引っ張る中老の男「善やん」がまたリアルにホントにうっとうしい。そして悲しい。図書館に入館料があって、3銭だったことをはじめて知りました。(カラスヤ)
家出少年が、無料宿泊所で見た最底辺の庶民の救いの無い生。そこから脱出を企てた時、少年は親切を尽くしてくれた男を冷然と切り捨てる。「ペテロのイエスの否認を思いださせる短編の傑作」と埴谷雄高が評した自伝的小説「神の道化師」等6篇。共産主義からキリスト教へと遍歴を重ねた著者が、実存的リアリズムと突き抜けたユーモアで描く秀作を精選。
レビュアー
1973年生まれ。漫画家。著作に『カラスヤサトシ』『カラスヤサトシのおしゃれ歌留多』『強風記』『喪男の社会学入門』『毎日カラスヤサトシ』『オレは子を見て育とうと思う』『カラスヤサトシの世界スパイス紀行』『おとろし』など多数。『アフタヌーンはカラスヤサトシのもの』を「アフタヌーン」で連載中。近刊に新書館『カラスヤサトシの孫子まるわかり』、講談社『カラスヤサトシ』9巻、リイド社『カラスヤサトシの戦国散歩』があります。
近況:20年ぶりくらいに清水寺に行ってきました。清水の舞台って雨水排出のために景色に向かって斜めになっていたのですね。
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