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【昭和文学の金字塔】離婚フラグだらけでも、妻と調和する秘訣とは?
風采は上がらないが才覚ある働き者の康吉と、お嬢様育ちがぬぐいきれない美人妻の喜多。妻にあなどられ、ワガママに振りまわされつつも、したたかに世を渡るも、今の感覚なら、離婚フラグ立ちまくりに見えるのですが、そんな2人が自然に調和していく描写がすばらしいです。傑作。現在の南座は昭和4年築なので、この旅行の時はちょうどあったかなかったか、ビミョーな時期と思います。(カラスヤ)
呉服についての便利屋であり、染色の仲介業者でもある「悉皆屋」(しっかいや)の康吉は、職人としての良心に徹することで、自らを芸術家と恃むようになる。大衆の消費生活が拡大する大正モダニズム期には、華美で軽佻な嗜好を嫌い、ニ・ニ六事件の近づく昭和前期には、時代の黒い影を誰よりも逸早く捉える男でもあった。著者が戦時下に書き継ぎ、芸術的良心を守った昭和文学史上の金字塔と評される名作。
レビュアー
1973年生まれ。漫画家。著作に『カラスヤサトシ』『カラスヤサトシのおしゃれ歌留多』『強風記』『喪男の社会学入門』『毎日カラスヤサトシ』『オレは子を見て育とうと思う』『カラスヤサトシの世界スパイス紀行』『おとろし』など多数。『アフタヌーンはカラスヤサトシのもの』を「アフタヌーン」で連載中。近刊に新書館『カラスヤサトシの孫子まるわかり』、講談社『カラスヤサトシ』9巻、リイド社『カラスヤサトシの戦国散歩』があります。
近況:今年あたりから、そろそろ本気で酒を控えようかと思い始めております。
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