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沖縄の季節風は超気持ちいい!──旧暦で暮らす素敵なヒント

沖縄にルーツをもつ詩人・白井明大さんと写真家・當麻妙さんが手がけたフォトブック『島の風は、季節の名前。旧暦と暮らす沖縄』より、現在も旧暦とともにある沖縄の暮らしについて紹介します。日々を見直して、ていねいに生きるヒントに。

2016.11.18
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青い空に青い海、沖縄は南国……そんなイメージ。いつも夏のようでいて、実は沖縄には、季節に寄り添う旧暦の暮らしが強く根づいているのをご存じですか?  正月を旧正月で祝う地域も多く、お盆も「シチグヮチ(七月)」といって旧暦の七月十三~十五日に行う旧盆。

ちなみに、旧暦は月の暦なので、一日は新月で、十五日は十五夜。つまり旧正月の元日は新月、そして旧盆の七月十五日は、丸く満ちた月が出る。去年も、今年も、来年も……。

沖縄の暮らしに旧暦が根づいている証拠に、島の風には、いろいろな旧暦の名前が付けられている。いつも夏みたい……と思っていても、吹く風が、季節や自然の移ろいを知らせてくれる。

たとえば、「夏至南風(かーちーべー)」。夏至は新暦の6月下旬(旧暦五月下旬)、沖縄の早い梅雨明けに、真夏を運んでくる南風だ。「新北風(みーにし)」は、長い残暑の終わりに初めて吹く北風。旧暦の九月(新暦の10月ごろ)に吹いて、秋の訪れを告げる。

  • 夏至南風(かーちーべー)は夏を告げる風。

    夏至南風(かーちーべー)は夏を告げる風。

  • 新北風(みーにし)が吹けば秋。

    新北風(みーにし)が吹けば秋。

旧暦の名前は、風だけでなく、雨や暑さ寒さなどにも。梅雨の早い沖縄は、「すーまんぼーすー(小満芒種)」が梅雨の時季。二十四節気の小満(しょうまん/いのちが少しずつ満ちる季節)から芒種(ぼうしゅ/稲の種を蒔く季節)、新暦でいうと5月半ばから6月初めにあたる。なるほど他の地方よりひと月ほど早く、いかにも沖縄!

二十四節気の小満~芒種のころが、沖縄の梅雨。

二十四節気の小満~芒種のころが、沖縄の梅雨。

これからだと、冬至寒さ(とぅんじーびーさ)。文字どおり、冬至のころの寒さのこと。冬至は新暦の12月20日過ぎ、さすがの沖縄にも寒波が訪れる。反対に、「立秋大凪(りっすーうーどぅり)」といって、風がぴたっとやんで暑さきわまりない天候が、立秋(新暦8月)からひと月ほど続いたり。

  • 冬至のころは、さすがの沖縄にも寒波が襲う。

    冬至のころは、さすがの沖縄にも寒波が襲う。

  • 風がなくて暑いときは、口笛を吹くと風が来るという言いつたえが。

    風がなくて暑いときは、口笛を吹くと風が来るという言いつたえが。

旧暦とともに、季節に親しみ、ならわしや祭りを楽しみながら日々を暮らす──。風や雨、月に花、行事のごはん、言いつたえ……島にはいつも、命や祈りが満ちている。ごく自然に。

シチグヮチの初日、ウンケー(お迎え)といって祖先の霊をお迎えする、みるく様という福の神が道々を巡る。みるくの語源は弥勒(みろく)とか。

シチグヮチの初日、ウンケー(お迎え)といって祖先の霊をお迎えする、みるく様という福の神が道々を巡る。みるくの語源は弥勒(みろく)とか。

桃の節句の行事「浜下り(はまうり)」に欠かせない三月菓子(さんぐゎちぐゎーし)。

桃の節句の行事「浜下り(はまうり)」に欠かせない三月菓子(さんぐゎちぐゎーし)。

さ、ヨンナーヨンナー(島言葉で「のんびり、のんびり」)。忙しさについ流されて、気づけば今年も終わりが見えてきた……なんて今日この頃、朝の十時にほっとひと息つく「十時茶」の習慣のように、ちょっと立ち止まって、手を止めてみる。そんな、日々を味わって暮らす知恵やしかけが、沖縄にはたくさん息づいている。

島のお茶サンピンと、黒糖の風味たっぷりのタンナファクルーで十時茶の時間。

島のお茶サンピンと、黒糖の風味たっぷりのタンナファクルーで十時茶の時間。

ガイドブックには載らない普段着の島の風を、著者の白井さんと當麻さんが沖縄から下北沢に運んでくれます! スライドショーを見ながら、1年を通して沖縄のあれこれや、沖縄に住んでみて驚いたこと、楽しいこと、タイヘンなことなどをトーク。質問コーナーもあり。

白井明大(詩人)×當麻妙(写真家)Photo&トークイベント「島のならわし、二十四節気の風が教えてくれたこと」

2016/11/26(土)15:00~17:00 (14:30開場)

本屋B&B にて(下北沢駅南口徒歩30秒。世田谷区北沢2-12-4  第2マツヤビル2F)

1500yen + 1 drink order

http://bookandbeer.com/event/2016112601_bt/

【予約受付中】http://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/0130yhyfshj5.html

猫のひっこし。強烈な島の台風は、猫の母子にも一大事。安全な場所へ。

猫のひっこし。強烈な島の台風は、猫の母子にも一大事。安全な場所へ。

文:白井明大(シライアケヒロ)

詩人。1970年生まれ。母の故郷である沖縄に、2011年より移り住む。琉球国時代には、先祖が首里城で暦に関わる仕事をしていた、と聞く。著書に『生きようと生きるほうへ』(思潮社、第25回丸山豊記念現代詩賞)、『えほん七十二候 はるなつあきふゆ めぐるぐる』(講談社)、 『日本の七十二候を楽しむ ─旧暦のある暮らし─』(東邦出版)、 『暮らしのならわし十二か月』(飛鳥新社)、『旬を楽しむ 日めくり七十二候』(文春文庫)など。自然に寄り添い、日々の移ろいを味わいながら暮らす営みを、ていねいに綴り出している。なかでも『日本の七十二候を楽しむ ─旧暦のある暮らし─』は、旧暦への静かなブームを呼び起こし、30万部を超えるベストセラーに。

http://mumeisyousetu.com/

写真:當麻妙(トウマタエ)

写真家。東京生まれ。初めて訪れた沖縄の風景に感動し、何度も通い撮影。縁あって、2011年より沖縄に住むことに。親戚の行事、子の通う学校や友人を通して島の文化に触れる機会が増え、ますます沖縄に魅了される。2014年には那覇にて写真展「KUDAKA」を開催。 写真集に『Tamagawa』(私家版)、『GR DIGITAL BOX』(共著、東京キララ社)、写真展に「Cornershop」(コニカプラザ 1999年)、「Tamagawa」(新宿ニコンプラザ 2003年)、「KUDAKA」(KIYOKOSAKATA studio 2014年)。書籍、雑誌などで活動中。

http://www.tomatae.com/

『島の風は、季節の名前。 旧暦と暮らす沖縄』書影
文:白井明大 写真:當麻妙

意外にも、旧暦が強く根づく沖縄。在住する著者が、風や海、生き物、祭事など、沖縄の暮らしとならわしを写真とともに綴り出した一冊。

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