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【悲報】お金が貯まらないと思ったら、「お得」の罠にハマっていた!

「節約もしているのに、なぜかお金がちっとも貯まらない……」そうなげくあなたは、無意識のうちに使っているお金に気づいていない=お金の漏れる穴があるのかもしれません。世の中の「無意識にお金を使わせる仕掛け」を、消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんに聞きました。

2016.11.09
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松崎のり子(まつざき・のりこ)

消費経済ジャーナリスト。20年以上にわたり、『マネープラス』『レタスクラブお金の本』『レタスクラブ』『ESSE』『Caz』などのマネー記事を取材・編集し、お金にまつわる多くの知識を得る。自分自身も、家電は買ったことがない(すべて誕生日にプレゼントしてもらう!)、食卓には常に白いものメイン(もやし、ちくわ、えのき、豆腐)などと徹底したこだわりを持ち、割り勘の支払い時は、友人の間で「おサイフを開くスピードが遅い人」として有名。「貯めるのが好きな訳ではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成した。また、「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアを研究・紹介している。著書に『貯まる技術』(総合法令出版)。

節約好きこそ、ムダ遣いをしている!

私は長年、主婦誌やマネー誌の編集者として、お金を貯める達人や、逆に赤字家計に悩む読者の取材をしてきました。中でも、節約テクの記事は何度も担当し、自分自身でも実践してみたものです。

しかし、ある時から、「これって本当に節約になっている?」と思うようになってきたことがあります。例えば、食費節約の定番であるまとめ買い、ポイントアップデーや5%オフデーでの集中買い、なんでもクレジットカード払いにしてポイントを貯める、ネットショッピングでのストック買い、などなど。

多分、これらを「おトクな買い方」と思っている人も多いのではないでしょうか? しかし、それ「ムダ遣い」と紙一重のです。

「行動経済学」という経済理論があるのですが、その中の1つ、カーネマンのプロスペクト理論では、「私たちが1万円トクした嬉しさよりも、1万円損した痛みのほうをより強く感じる」ということを分析しています。

この、「とにかく損をしたくない」という心理・感情が、逆にトクではない行動をさせてしまう──と言われると、ドキッとしませんか? そのほうがトクだと思い込んでしていた買い物や選択が、果たして正しかったのか。そういう目で見ると、一円でもトクしたい、安く買いたい、どんどんポイントを貯めたい──そんな節約好きの人こそ、知らないうちに手元のお金がダラダラ漏れているのかもしれません。

節約好きこそ、見せかけのトクにつられて、本当に必要ではないものまで買ってしまう。私はこれを「おトクのワナ」と呼んでいます。このワナにはまると、お金の漏れはどんどん拡大していきます。

世の中の「お金を使わせる仕掛け」を知れば、お金の漏れが3割減る

ある生活情報誌の編集部にいた頃、取材先に行くとこんな説明をよくしたものです。

その雑誌の発売日が、10日と25日の月2回だったので、「25日発売の号は、給料日なのでちょっとぜいたくな肉料理やおもてなしレシピを、10日は給料日から日数も経っている月中になるので、節約を意識したレシピややりくりの記事などを掲載するんですよ」と。

実際にはそこまで厳密だったわけではないのですが、人間の消費マインドを読みとって、それにアピールするのが販売ビジネスの基本であることは間違いありません。

そういう目を持ってスーパーへ買い物に行くと、給料日前の20日ころに5%オフのセールをする店が多いことに気づくでしょう。しかも、クレジットカードの提示、またはクレジット払いの時に割引が適用になるというケースをよく見かけます。

もうわかりましたよね。サイフのひもが固くなる給料日前に、消費モチベーションが上がる5%オフデーを持ってくる。さらにクレジット払いのメリットをうたうことで、手元に現金がなくても買えるようにハードルを下げる──そんな店側の思惑がうかがえます。

ネット通販サイトの期間限定ポイント、さまざまな値引きクーポン、開店記念の一品サービスなどなど、売り手側が作った「お金を使わせるための仕掛け」に、私たちは囲まれています

その仕掛けを上手に利用すれば、もちろんメリットはあります。でも仕掛けに気づかず、「おトクそう!」と飛びついてしまうと、お金の漏れが止まらなくなるのです。

私たち自身が持つ「なるべくトクしたい、損はイヤ」という心理を上手についた手法も使われています。注意深く見てみると、この世界は巧妙なワナだらけなのです。

これから、それらの具体例をいくつか挙げながら、どうやって自分の消費マインドをコントロールして、ムダな出費を抑えるかをご紹介しましょう。何気なくやってきたお金の使い方、それもトクしていると思ってしてきた使い方が本当に正しかったのか、ぜひ振り返ってみてください。

【ワナ1】「お買い得! よりどり3足セット1000円」

私たちは「おトク」が大好き。定価より安くなる、たくさんのポイントがつく、送料がタダになる……そんなキャッチコピーについ目を引かれてしまいます。どうせ買うなら、おトクなほうがいい。誰しもそう考えます。でも、おサイフを開く前に、こんなことを考えてみましょう。

「これって、誰のためのトクなの?」

靴下を買いに行くと、つい「お買い得! よりどり3足セット1000円」を選んでしまう人も多いでしょう。1足あれば十分なのに、割安でおトクそうという理由だけで、1足の3倍近い金額を抵抗なく、ポンと払ってしまいます。

自分で好きなものを選べるんだからいいじゃない、というのは、お客に気持ちよくお金を払わせるための仕掛けでしかありません。

本来払わなくてもいいお金を出してしまっているとすれば、これは本当にトクな行動と言えるでしょうか? 一見、「おトクに買い物や食事ができる」という大義に隠された、お金を使わせる仕掛けです。

「お金が貯まらない」と言っている人ほど、おトクだと信じて、ちょこちょこお金を使ってしまうもの。それこそ、お金が漏れていく穴なのです

【ワナ2】「あと○○円買えば送料が無料」

女性がよく使うネット通販にも、お金がどんどん漏れていく「おトクのワナ」が潜んでいます。

もっとも簡単にはまりがちなのが、「あと〇〇円買えば送料が無料になります」というフレーズ。多くの人は、よほど送料を払うのが苦痛と見えて、そう言われると素直に買い物を続けてしまいます。送料を払う=損すると感じるために余計な買い物をしてしまうのです。

でも、よほどの大型家具やクール便でもない限り、また住んでいるところが配達の手間のかかる地域でない限り、数千円もの送料がかかることはまずありません。

私がよくする買い物では、大体600円から800円程度です。買う必要がなかったものを買う「あと○○円」と比べても、「あれ? そんなにかからないんだ」とわかるはず。潔く送料を払ったほうが、手元から出ていくお金は減らせます。

「送料無料」で思考停止しないこと。そこに落とし穴があるということを、覚えておきましょう。

【ワナ3】「現金よりカードで買えばポイントがつくからおトク」

「同じ金額を払うなら、現金よりクレジットカード払いのほうが、ポイントがつくぶん、おトク」という“常識”のもと、家計費の支払いをことごとくカードで決済している人がいます。特に、旅行好きでマイルを貯めたい人に多いよう。

けれど、いつの間にか買い物の目的が、カードのポイントを貯めることにすり替わってしまう。それは、おトク好きな人が陥りがちな落とし穴のひとつです。

怖い話をすると、たまたま給料日前に現金がたりなくなってカードで払う、という行為をきっかけにカード破綻するケースが多いそうです。

一度現金がたりなくなると、次の月もまたたりず、さらに次の月も……というように、現金収入だけではやりくりができなくなってしまう。こうしたリスクを減らすためにも、カードはあくまでサブの支払い手段と位置づけておきましょう。

カード払いをむやみに増やさないコツは、食費などの変動費ではなく、なるべく保険料や公共料金、携帯料金や通信費などの固定費に限定すること、また入会特典に惑わされず、保有カードの枚数を絞ること。「あの店ではこのカードなら割引がある」「ここではこのカードでポイントがアップ」などと浮気をしていては、メリットも分散してしまいます。本命は1~2枚にしておきましょう。

また、こうしたポイントで一番トクするには、次の買い物で使ってしまうことです。

使うために手続きが必要なものはひとまず置いておくことにして、「ポイントはお貯めしますか?」と聞かれたら、即座に「使ってください」と答えましょう。

なぜなら、貯めれば貯めるほど、人はポイントを手放せなくなるもの。しかも、せっかくなら普段は買えないような高価でぜいたくなものに使いたいと考えます。そのため、ますます使わずに貯め続ける。せっかく、次の買い物の値引きに使えるのに、ずっと寝かしてしまうことになるのです。

『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』書影
著:松崎 のり子

同じ収入でも、貯まる人と貯まらない人の違いは何でしょうか? 貯まらないと嘆く多くの人の使い方には、お金が「漏れていく穴」があるのです。お金に困らない人生を手に入れるには、まずは「漏れ」を招く穴をふさいで、「貯まる」人になることからスタートを。そのコツを存分に伝授します。

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