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第59回群像新人文学賞受賞作『ジニのパズル』の著者・崔実さんから特別エッセイが届きました!
生まれて初めて「著者」として全国の書店さんを訪れた崔実さんが感じたことは──?
特別エッセイ 「書店訪問ゾンビ」
真っ青な顔をしたゾンビが血を垂らして、「うーうー」と唸りながら近寄って来るのと、初対面の人間が「はじめまして~」と歯をむき出しにして近寄って来る時に味わう不気味な威圧感に大した差はないような気がする。だから、私は各書店を訪れる度に緊張していた。感想を寄せて頂いたことが本当に嬉しかったんだ、という思いがどうしたら書店員さんに伝わるのだろうかと。出来るなら信憑性に欠ける笑顔は封印したかった。けれど、店頭に積まれている自分の本や、店内に飾られたポスター、手作りのPOPを見る度に、それを書いてくださった書店員さんの顔を見る度に、嬉しさのあまり言葉が出てこず、にかっと歯を出して笑う気持ちの悪い自分がいた。
『ジニのパズル』が掲載された「群像」の発売日であった5月7日は、「群像」を手に取ってくれた人、全員に嫌われることを覚悟した日だった。タイトルが表紙に載っている嬉しさと、孤独な日々に逆戻りするかもしれない憂鬱さが混じり、なんとも言えない気持ちだった。その数週間後、担当の方が「書店員さんから届いた感想です」とファイルいっぱいの紙の束を渡してくれた。想像もしていなかった言葉で溢れていた。その晩から毎日、何度も何度も繰り返し読み続けた。新しい感想が届く度に担当の方は知らせてくれた。決して大袈裟な言い方ではなく、「生きていて、書いていて良かった」と1つ1つの言葉に涙し、どれほど救われたか。作品を読んでくださったお礼を言いたいと願いながらも、言葉にしようとすると、どうも嘘くさく、かといって上手にゾンビになることも出来ず、結局は何も伝えることが出来なかったのではないかと一日の終わりにいつも悔やんでいた。
人生初の書店訪問では、いつの間にか沢山の写真を撮ることとなり、家のパソコンに作った「書店員さん」というアルバムを開く度に、心がじわじわと温かくなり、最終的に、にかっと笑ってしまう。自分にとってこれほど大きな励みになるとは思っていなかった。きっと多くの作家が書店員さんに勇気付けられてきたのだろう。小説を書くという作業は、少しずつ己の魂を削っていくことであり、私にとって作品は自分の分身であり、子でもある。しかし、私は親であってもジニにしてやれることは何もない。ジニは新たな友人によってでしか報われない。書店員の方々は、ジニに大きな橋を造ってくれた。応援してもらえてこそ渡れる橋だった。ジニが橋を渡っていく姿を見る度に言葉を失う。ジニが素敵な友人に恵まれ、大冒険に出発できたこと――私は一生忘れない。
お忙しいなか温かく迎え入れてくださった皆様、そしてまだお会いしていない方々にも心から感謝しています。本当にありがとうございます。 ──愛をこめて、崔実より
全国の書店店頭が熱い!
崔実さんと一緒に訪問したお店をはじめ、全国の書店さんが『ジニのパズル』を熱く展開してくださっています! その店頭の写真をご紹介いたしますので、ぜひご覧ください。
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【教文館】
インタビュー記事と手書きPOPを一緒に飾ってくださっています。
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【紀伊國屋書店新宿本店】
素晴らしい手作りPOPを飾ってくださいました。
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【青山ブックセンター六本木店】
手書きPOPでプッシュしていただきました。
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【丸善ラゾーナ川崎店】
力強いパネルを作成してくださいました。
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【紀伊國屋書店横浜みなとみらい店】
担当の安田さんとパシャリ。
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【紀伊國屋書店横浜店】
担当の川俣さん渾身の『ジニのパズル』フェアコーナーです!
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【有隣堂ルミネ横浜店】
お店の一等地に置いてくださっていました。
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【ジュンク堂書店大阪本店】
担当の持田さんとツーショットです。
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【ブックファースト梅田2階店】
手書き版と写真版の2種類のPOPで店頭を飾ってくださいました。
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【紀伊國屋書店梅田本店】
たくさん作らせていただいたサイン本の前で、担当の小泉さんと記念撮影。
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【ジュンク堂書店ロフト名古屋店】
お店の前で店長の石本さんとポスターを持ってパチリ。
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【精文館書店中島新町店】
パズルのようなカラフルなPOPが目を引きます。
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【明正堂アトレ上野店】
店長の櫻井さん・担当の増山さんと一緒にパチリ。
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【文教堂書店赤坂店】
可愛いイラスト付きPOPで紹介してくださっています。
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【紀伊國屋書店西武渋谷店】
繊細なイラストと文章が心を掴みます。
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【くまざわ書店南千住店】
宣伝物をたっぷり使って店頭の最前列でアピールしてくださっています。
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【東京旭屋書店新越谷店】
手作りPOPから想いが伝わってきます。
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【八重洲ブックセンター本店】
発売直後に崔実さんが書いた色紙を飾り続けてくださっています。
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【三省堂書店神保町本店】
7月にはビッグタイトルと並んでランクイン!
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【紀伊國屋書店新宿南店】
先日惜しまれつつ閉店したお店ですが、インパクト大のPOPを作ってくださいました。
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【SHIBUYA TSUTAYA】
担当の内山さんと一緒に、記念撮影です。
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【大盛堂書店駅前店】
天井からポスターがドーン! 担当の山本さんありがとうございます。
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【MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店】
お店のバックヤードでも記念撮影しちゃいました。
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【大垣書店イオンモールKYOTO店】
素敵な手書きPOPが迎えてくれました。
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【大垣書店高槻店】
宣伝物をたくさん使って熱い応援をしてくださった井上さんとツーショットです。
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【MARUZEN名古屋本店】
目立つ場所で宣伝物をいろいろ使ってご展開くださいました。
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【紀伊國屋書店そごう川口店】
候補作も揃えた芥川賞・直木賞コーナーが充実!
- 電子あり
二つの言語の間で必死に生き抜いた少女の革命
オレゴン州の高校を退学になりかけている女の子・ジニ。ホームステイ先でステファニーと出会ったことで、ジニは5年前の東京での出来事を告白し始める。
ジニは日本の小学校に通った後、中学から朝鮮学校に通うことになった。学校で一人だけ朝鮮語ができず、なかなか居場所が見つけられない。特に納得がいかないのは、教室で自分たちを見下ろす金親子の肖像画だ。
1998年の夏休み最後の日、テポドンが発射された。翌日、チマ・チョゴリ姿で町を歩いていたジニは、警察を名乗る男たちに取り囲まれ……。
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