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探検部を卒業し、今をときめく人気ノンフィクション作家となった高野秀行と角幡唯介。
未知の世界への憧れを原動力とする点は共通するが、テーマのえらびかたやアプローチの仕方は2人で大きく異なる。
高野は混沌とした人の渦へ頭からダイブし、角幡は人跡未踏の地をストイックに攻める。
探検家前夜から、探検の実際、執筆の方法論、ブックガイドまで、夢追い人二人の仕事の流儀が惜しみなく明かされた1冊。
文庫化を記念して、ここに一部をお届けします!
世界中の超秘境を行く! 高野秀行&角幡唯介の足跡
グリーンランド探検(角幡・2014~15年)
北極圏1600km探検(角幡・2011年)
カナダ・ケント半島天測放浪(角幡・2012~13年)
アマゾン川全流遡行(高野・1990年)
太平洋マグロ船同行取材(角幡・2014年)
ニューギニア・トリコーラ山北壁初登攀(角幡・2001年)
雲南省独龍江旅行(角幡・1999年)
ミャンマー・ケシ栽培(高野・1995~96年)
西南シルクロード探査(高野・2002年)
ヤル・ツアンポー峡谷探検(角幡・2002~03年・2009年)
ブータン雪男調査(高野・2010年)
ヒマラヤ雪男捜索(角幡・2008年)
トルコ・シャナワール調査(高野・2006年)
ソマリランド取材(高野・2009~14年)
コンゴ・モケーレ・ムベンベ探査(高野・1988年)
作家虎の穴
たとえば山だったら、「ヒマラヤの未踏峰を登りにいく」と言ったら、説明する必要はまったくない。でも、未知の動物を探すとか剱岳を3000メートルにするとなると、説明しないと意味がわからないんだよね。
西木さんたちはベーリング海峡を歩いて渡るというプロジェクトをやったんだけど、北極の氷の上を歩いてソ連とアメリカの国境を越えるという発想に単純にしびれただけだと思うんだよ。でも当時、ソ連とアメリカは冷戦まっただ中で、そこが最前線なわけでしょう? それを歩いて渡るなんて普通に考えれば無理に決まってるから、なにか壮大な大義をぶち上げないと計画が成立しない。
で、「人類はアフリカから来てベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸に入ったという学説を自分たちが歩いて証明する」というこじつけを行うんだよ。ベーリング海峡を渡って人類何万年の歴史解明に寄与するとか。計画書にはそういうすごい理念が連ねられていたはずなんだよね。本当はただベーリング海峡を歩きたいだけなのに、言葉をもって自分たちの正当性を認めさせようとした。そうしないと自分たちの存在意義とか活動の意味がわからなくなってしまうので。そういう習慣なんだよね。
*注
高野秀行(たかの・ひでゆき)
1966年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大探検部在籍時
に執筆した『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)でデビュー。著書に『アヘン
王国潜入記』(集英社文庫)、『西南シルクロードは密林に消える』(講談社文庫)
ほか多数。『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で酒飲み書店員大賞受賞、『謎の
独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)で講談社ノンフィクション賞、梅樟忠夫・
山と探検文学賞受賞。
角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)
1976年、北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、朝日新聞社に入社。
同社退社後に執筆した『空白の五マイル』(集英社文庫)で開高健ノンフィクション賞、
大宅壮一ノンフィクション賞、梅樟忠夫・山と探検文学賞受賞。『雪男は向こうから
やってきた』(集英社文庫)で新田次郎文学賞受賞。『アグルーカの行方』(集英社文庫)
で講談社ノンフィクション賞受賞。
探検部を卒業し、今を時めく人気ノンフィクション作家となった高野秀行と角幡唯介。未知の世界への憧れを原動力とする点は共通するが、テーマの選び方やアプローチの仕方は大きく異なる。高野は混沌とした人の渦へ頭からダイブし、角幡は人跡未踏の地をストイックに攻める。夢追い人二人の、仕事の流儀!
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