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【ズボラ冷凍の衝撃】ラップせず凍らせるトマト、なぜ美味しくなるの?

冷凍保存した食材で作る料理はおいしくなかったり、冷凍や解凍に手間がかかったりした経験のある人も多いはず。そこで、自らを「ズボラ」という大場英子さんが自身も実際にしている、ラクな方法で食材がおいしく食べれる冷凍保存の秘訣をご紹介します。暑さで食材が傷みやすい季節。「かんばらない冷凍」を始めましょう!

2016.08.20
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大庭英子(おおば・えいこ)

料理研究家 。和、洋、中、エスニックのジャンルを問わず、おいしいものならなんでも得意。ふだんの食事(まかない)も、みんなで集まるときの料理も、基本「大盛り」で、品数もたくさん並べないと気がすまないのは、福岡の大家族で育ったせい。食べさせ好きで、料理をすること&料理を深く広く研究することが芯から好き。『5つの味から決める! ラクラク献立』(講談社)、『野菜たっぷりおかずの本』(朝日新聞出版)、『取り分け&持ち寄り大皿レシピ』(東京書籍)など著書多数。

簡単で食材がおいしくなる冷凍のコツって?

どんなものを冷凍するかというと……

肉や魚に下味をつけて冷凍しておくとか、野菜をわざわざ刻んで冷凍しておくとか、わざわざ冷凍はしないんです。でも、たとえばトマトの完熟がすすんでダメにするぐらいなら、そのまま(ラップもせずに)冷凍庫へ入れちゃう。食べ残した漬物は、冷蔵庫に入れておくとおいしくなくなるから、ラップに包んで冷凍する。肉や魚のよいものがスーパーにあると、使う予定がなくてもつい買ってしまうから、生のまま冷凍しておく……。

ズボラ、なんですよね。冷凍するものにラベルを貼ったりもしません。そういう意味では、私のやっているのは「がんばらなくていい冷凍」。生活の中で自然に生まれた、リアルな冷凍と言えるかもしれません(よく言えばですね)。


冷凍するとおいしくなくなる……?

料理研究家を30年間やっていますから、どんな素材が冷凍に向くか・向かないか、体験的にわかっています。冷凍したものを、どんなふうに食べたらおいしいかも知っています。

大勢で食卓を囲むのが好きで、次から次へと料理を作って出すのが好きで、「おいしい!」「これ、どうやって作るの!?」と、みんなが喜んで食べてくれる風景が好きです。そんなときも、人知れず冷凍庫の中から出した素材を使っているのだけれど……誰もそのことに気づかなくて、「すごくおいしい!」って。冷凍の食品を使うときは、しっかりめの味つけにしたりとか、要は料理の仕方、食べ方だと思います。


解凍もすごく大事です

解凍は自然解凍がおいしいです。冷凍庫→冷蔵庫に移すか、季節や状況によっては冷凍庫→いきなり室温でもいい。便利なので、急ぐときは電子レンジ解凍もします。

冷凍した食品は解凍すると繊維がくずれて、煮えた(火が入った)ような状態になります。それで、完全に解凍すると食感の悪くなるものもあります(野菜は特にそうです。ベチョッとしちゃう)。なので、あえて凍ったままや、半解凍の状態で調理したほうがいいものも多いです。どんな冷凍庫を使っているかにもよりますが、冷凍した食品は1年ぐらい平気でもちます(冷凍機能専門のものなどの場合)。でも風味はやっぱり、月日とともに落ちてしまう。1ヵ月を目安に食べきったほうがいいようです。冷凍素材を楽しんで使いましょう!

生のままだったり、サッとゆでるだけ! かえっておいしいまんま冷凍

買ったものの、すぐに使わない食材ってありますよね。使ったものの、ハンパに残ってしまうことも多いです。冷蔵庫の中でどんどん劣化させるよりも、新鮮なうち(おいしいうち)に冷凍したほうがだんぜんいい。生のまま(買ってきたパックのまま)、あるいはサッと湯通しする程度の“ズボラ冷凍”でいいんです。そうして冷凍したほうが、調理したときに「かえっておいしい」ことがある。ほんとです。

例えば、トマト。放っておくと、どんどん熟れて、しまいには腐らせてしまったりします。ダメにするぐらいなら冷凍しよう、と私は思うんです。丸ごと、むきだしのまま(ラップもしません)冷凍庫へ。たくさん買ったときなどは、袋に入ったまま冷凍庫へ入れることもあります。

水分を多く含むトマトは、冷凍すると中の水分が膨張して繊維がくずれやすくなります。これがむしろ煮込み料理に好都合。カレーやシチューに放り込んで隠し味にすれば、トマトのうまみで、いつもよりコクが出てリッチな味わいに。牛肉と冷凍トマトをサッと煮込んで、ご飯のおかずもすぐできる。実は“使える”冷凍丸ごとトマトなんです。

冷凍丸ごとトマトを使った絶品!「トマトとチキンのカレー」

<トマトの冷凍>

[材料]
トマト(完熟のものが冷凍に向く)

[作り方]
完熟のトマトをそのまま、あるいは買ってきた袋のまま冷凍庫に入れて凍らせる。

[使い方]
室温において少し解凍して使う。包丁で切れる程度になればOK。冷凍のトマトは室温に15分ほどおくと、まわりが白くなってくる。こうなると中が柔らかくなってきていて、包丁でさっくり切れる。


<トマトとチキンのカレー>


[材料](4~6人分)

・冷凍トマト…3個→室温において少し解凍する
・鶏もも骨つきぶつ切り肉…800g
・クミンシード…小さじ1
・玉ねぎのみじん切り…大2個分
・にんにくのみじん切り…1かけ分
・しょうがのみじん切り…小さじ1
・カレー粉…大さじ5〜6
・赤唐がらし…2本
・ローリエ…1枚
・シナモンスティック…1本
・プレーンヨーグルト…250g
・塩…適量
・サラダ油…適量
・温かいご飯…適量

[作り方]

1 ボウルに鶏肉を入れて塩小さじ1をまぶし、20分ほどおいて下味をつける。
2 煮込み鍋にサラダ油大さじ4、クミンシードを入れて、香りが出るまで弱火で炒める。Aを加えて、中火でしんなりするまで炒める。水けがなくなったら、ふたをして弱火にし、途中で混ぜながら30分ほどかけて、玉ねぎが茶色になるまで炒める。
3 フライパンにサラダ油小さじ1を熱して鶏肉を入れ、中火で両面を焼きつけて、2の鍋に移す。
4 冷凍トマトは少し解凍させてから縦2等分に切り、へたを取る。
5 煮込み鍋にカレー粉をふり入れて炒め、赤唐がらし、ローリエ、シナモンスティックを加える。4のトマト、プレーンヨーグルトを加えて混ぜる。
6 煮立ってきたら塩をふって混ぜ、ふたをする。途中、焦げないように底から混ぜ、弱火で40分ほど煮込む。器にご飯を盛り、カレーをかける。

  • 電子あり
『ラクラク冷凍レシピ 使えるものだけ! おいしいものだけ!』書影
著:大庭英子

自らを「ズボラ」という著者ならではの、ラクする冷凍のみ提案します。まるごとそのまま冷凍するなど「冷凍方法がラク」なものと、めんどうなものはまとめて作って冷凍しておく「調理がラク」になる、冷凍保存ワザです。まとめ買いしてしたものや、使い切れない乾物類などは、まとめて冷凍保存しておけば、無駄なくおいしく使い切ることができます。便利なだけでなく、料理をおいしく、生活をちょっと豊かにする冷凍保存の提案です。

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