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ある日、クルマにぶつかって突然“おばけ”になったおっちょこちょいのママと、4歳の息子かんたろう。『ママがおばけになっちゃった!』(2015年7月刊)は、くすりと笑えてホロリと涙する、親と子の想いがつまった絵本として一躍話題になった。そして7月13日には、続編『さよなら ママがおばけになっちゃった!』が発売される。著者・のぶみさんと担当編集者が創作の裏話を明かす。
1978年、東京都生まれ。絵本作家。「ぼく、仮面ライダーになる!」シリーズ(講談社)や、「しんかんくん」シリーズ(あかね書房)、『ダンスアース』(EXILE・USAとの共作/木楽舎)ほか160冊以上の絵本作品を発表。NHK「おかあさんといっしょ」で、「よわむしモンスターズ」を制作。NHK「みいつけた!」では「おててえほん」のアニメーションを担当するなど、幅広く活躍している。
東日本大震災でのボランティア活動をもとに書いたエッセイ・コミック『上を向いて歩こう!』(講談社)は、森川ジョージによるリメイク版が生まれるなど、話題を呼ぶ。福島応援キャラクター「あたまがふくしまちゃん」を制作。Twitter, Facebook, mixiを通じて、ファンとの交流も積極的に行っている。
前作は初版4000部。でも、評判になると確信していた
のぶみ: 編集者さんは絵本とはまったく違う部署から異動してきて、僕の担当になったんですよね。
担当編集者(以下、編): 5年前です。それまでは週刊現代編集部にいました。当時、私は絵本のことがぜんぜん分からなくて……。
のぶみ: でも、とにかく「私は運がいいから大丈夫ですよ!」って僕に言うのが面白くて、印象に残っています。
編: 根拠はないんですけど、これまでもいろんな場面で本当に運がいいなと思うことがあったんです(笑)。
のぶみ: 僕も素直にそれを信じることにしました。前作の『ママがおばけになっちゃった!』は発行部数が40万部(注:インタビュー時。6月24日時点でシリーズ累計53万部)を突破しましたが、これもやっぱり編集者さんの運のお陰かもしれない(笑)。
編: それは作品が良かったからです。のぶみさんは発想がユニークで、次から次に話のアイディアがわいてきますよね。
のぶみ: 前作は、3つあった案の中から、編集者さんが「これをやりたい!」と選んだもので、僕がこれまでで一番良く描けたと思った自信作でした。初版は4000部と少なめでしたが、読んだ人はかならず感情を揺さぶられる、だから評判になる、と確信していました。
編: 私も「行ける!」と思っていました。『ぼく、仮面ライダーになる!』シリーズ(2010年2月刊~)や、『ニンニンジャーかぞく』(2015年5月刊)など、のぶみさんのヒット作はほかにもありますが、『ママがおばけになっちゃった!』は、これまでのぶみさんを知らなかった方にも絶対に届くなと感じたんです。
のぶみ: ママが交通事故で死んでしまったところから始まる異色の物語ですが、ここには多くの人に読まれる絵本に欠かせない「普通」も入っています。誰にでもかならずママがいるし、みんないつかは死ぬ。子育てというテーマも普遍的です。
編: 登場するママも完璧ではないし、生活感があって親しみやすい。それに、大人向けに描かれていたのも初めてですね。
のぶみ: 僕の講演会には、いつもたくさんの大人が来てくれます。大人も絵本を読むと楽しくなるんですよ。
「僕の絵本の中で一番のシーンが描けた!」
編: いよいよ続編が発売されます。
のぶみ: 前作の良さを残しつつ、それを超えるものを目指しました。ひねり出した物語の始まりは、「きょうは ママの おそうしきです」というもの。編集者さんには2度、「これはやめましょう」って言われましたよね(笑)。ページを開いた瞬間に読者をぶんなぐるような強烈な設定ですが、これじゃないと前作には太刀打ちできないと思って。
編: 笑いが求められるシーンなのですが、「お葬式」をいじるっていうのはどうなんだろう、すごく難しいことだぞって思ったんです。
のぶみ: それも分かったうえで、編集者さんにラフを渡しました(笑)。でも、人って、笑いや喜びがあるからこそ、悲しみを感じるものですよね。
編: ママとかんたろうが本当の別れの時を迎えるクライマックスシーンに、そこが活かされているんですね。
のぶみ: 今までママに嫌われないように、「ひとりでやれるよ」ってがんばっていたかんたろうが、ママガいなくて「へいきなわけないじゃん!」って、とうとうブチ切れる。かんたろうは戦うんです。でも、やっぱり最後は……。ラストに至る展開は、すごくこだわったところです。
編: ここは読んでいて辛いんです。でも、同時に親子の愛情がもっとも深く伝わってきます。
のぶみ: このページはぜひ声に出して読んでほしいですね。絵本って、声に出すとものすごい力を発揮するんです。とくに、僕はそういう言葉を選んでいるので。ネーム(絵コンテ)が決まるまでは大変だったけど、僕がこれまでに描いてきた絵本の中でも、一番いいページになったと思っています。
編: 部数も前作を超えて、シリーズ100万部突破を目指したいですね!
のぶみ: 今回も編集者さんの運にあやかって……(笑)。
のぶみさんの動画メッセージや、読者の声が集まった
『ママがおばけになっちゃった!』公式サイトはこちら
『ママがおばけになっちゃった!』、待望の続編です。
きょうは ママの おそうしきです。
おばけになって、かんたろうのもとへ現れていたママですが、ほんとうにお別れの時がやってきました。
目に見えなくても、ママはかんたろうのそばにいる。
「ママが かんたろうの なかに いる こと、おもいだして ほしい。それ なら ママと あえなくても へいきでしょう?」
そう問いかけるママに、かんたろうは思わず叫びます。
「え! なんだよ! なんなんだよ! あえなくて へいきな わけ ないじゃん! ひどいよ、ママ!」
辛すぎる別れと、母子はどのように向き合うのでしょうか。
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